20・あり得ない現象
文字数 1,540文字
それは砂漠地帯に差し掛かった時のことであった。
「嘘だろ……」
砂漠地帯のモンスターは、地属性。
この地帯はサソリや甲羅で覆われたようなモンスターばかりのところである。
地属性は下位属性であり、利久の本体が持つ属性は光。
光属性は上位属性なため、AGでは攻撃力の方が優先されるというシステム。ゲームマスターの称号を持つ利久は、どちらかと言うと”ガチ勢”というものに含まれる。
一人でも十分勝算がある……はずだった。
しかし目の前にいるのは、どう見ても闇属性のモンスター。
「なんで、こんなところに……」
利久がボードを止める。
自分専用のパネルを開こうとすると、
「今日は、イベントなんかやってなかったはずだよな」
と、同じことを考えていたのか海斗から声がかかる。
「たぶん、俺のせい」
と、セト。
見てよ、と前方を指した。
「あれは17地区のモンスターだ」
「そんな……勝てるわけないじゃんッ」
利久はレベルの低い海斗と狙われやすいセトから注意を逸らすため、ボードから降り立った。
「待て! 利久。無茶だ」
制止の声をあげる海斗。
「海斗先輩、来るよ」
セトは海斗の腕を掴み、ボードから降り立つと岩陰へ。
利久は二人が隠れるのを確認すると肩から背中に手をやり、念じるように目を閉じた。
「……(接近戦じゃ、即死だ。どうする? 考えろ)」
利久が武器が決められずに困っていた時だった。
後方から声が聞こえたのは。
「放てーーーー!」
女性の号令と共に無数の矢が放たれる。
しかしそれはモンスターをすり抜けた。
「!」
利久が振り返ると袴姿の女性と大勢の弓師の人々。
「チーム椿!」
チーム椿とは『椿』という袴姿のチームリーダーが二百名のチームメイトを引率し、主に砂漠地帯などで活躍する風属性の集団。
この規模となると申請もなかなか通らないため、数少ない大規模グループの一つ。
リーダーの椿は”風斬りの巫女”などと呼ばれ、崇拝者も多い。
AGのメンテナンス中のイベントでは、TJという三人組の女子高生チームの援護などにも回り、盛り立て役にひと役買っている。
「利久殿」
彼女は利久のネームプレートに視線を走らせると、利久に話しかけてきた。
「許可を」
彼女の言葉に、彼はハッと上を見る。
”チーム椿が戦闘参加許可を求めています。許可しますか?”
という赤い文字がテロップとなって流れていた。
その下にはyesとnoの二つのパネル。
利久は迷わず、yesの文字を掴む。
途端に今まですり抜けていたいた矢が、モンスターに当たるようになる。
AGでは横取りを防止するために、このようなシステムが導入されているのだ。
岩陰でじっと事の成り行きを見守っていたセトと海斗が安堵のため息を漏らす。
しかし戦況は変わったものの、闇属性に下位属性は効き目が悪い。
すなわち時間稼ぎにしかならない。
かといって対抗できる属性を持つのは、海斗の聖属性のみ。
だが頼みの綱である彼のレベルは1。近づく前に即死する。
「くそッ……どうすればいい?」
利久がそう呟いた時だった。
再び頭上にテロップが流れだす。
”Jackが戦闘参加許可を求めています。許可しますか?”
「許可してくれるかな」
少し低い女性の声。
利久が振り返ると全身黒のスーツにコートという恰好をしたスレンダーな中性的な人物が立っている。
しかもその腕には腕章が。
利久は慌ててyesのパネルをタッチする。
「あとは、任せな」
「う、うそ。Conciliator ⁈ しかも、発表ではJackは確かno.2」
彼女は両手を肩から背中に回すと、 二本の片手剣を具現化した。
「二刀流! クソカッコいいっ」
駆け出す彼女。
利久は自分の置かれている状況も忘れ、観戦に夢中になったのだった。
「嘘だろ……」
砂漠地帯のモンスターは、地属性。
この地帯はサソリや甲羅で覆われたようなモンスターばかりのところである。
地属性は下位属性であり、利久の本体が持つ属性は光。
光属性は上位属性なため、AGでは攻撃力の方が優先されるというシステム。ゲームマスターの称号を持つ利久は、どちらかと言うと”ガチ勢”というものに含まれる。
一人でも十分勝算がある……はずだった。
しかし目の前にいるのは、どう見ても闇属性のモンスター。
「なんで、こんなところに……」
利久がボードを止める。
自分専用のパネルを開こうとすると、
「今日は、イベントなんかやってなかったはずだよな」
と、同じことを考えていたのか海斗から声がかかる。
「たぶん、俺のせい」
と、セト。
見てよ、と前方を指した。
「あれは17地区のモンスターだ」
「そんな……勝てるわけないじゃんッ」
利久はレベルの低い海斗と狙われやすいセトから注意を逸らすため、ボードから降り立った。
「待て! 利久。無茶だ」
制止の声をあげる海斗。
「海斗先輩、来るよ」
セトは海斗の腕を掴み、ボードから降り立つと岩陰へ。
利久は二人が隠れるのを確認すると肩から背中に手をやり、念じるように目を閉じた。
「……(接近戦じゃ、即死だ。どうする? 考えろ)」
利久が武器が決められずに困っていた時だった。
後方から声が聞こえたのは。
「放てーーーー!」
女性の号令と共に無数の矢が放たれる。
しかしそれはモンスターをすり抜けた。
「!」
利久が振り返ると袴姿の女性と大勢の弓師の人々。
「チーム椿!」
チーム椿とは『椿』という袴姿のチームリーダーが二百名のチームメイトを引率し、主に砂漠地帯などで活躍する風属性の集団。
この規模となると申請もなかなか通らないため、数少ない大規模グループの一つ。
リーダーの椿は”風斬りの巫女”などと呼ばれ、崇拝者も多い。
AGのメンテナンス中のイベントでは、TJという三人組の女子高生チームの援護などにも回り、盛り立て役にひと役買っている。
「利久殿」
彼女は利久のネームプレートに視線を走らせると、利久に話しかけてきた。
「許可を」
彼女の言葉に、彼はハッと上を見る。
”チーム椿が戦闘参加許可を求めています。許可しますか?”
という赤い文字がテロップとなって流れていた。
その下にはyesとnoの二つのパネル。
利久は迷わず、yesの文字を掴む。
途端に今まですり抜けていたいた矢が、モンスターに当たるようになる。
AGでは横取りを防止するために、このようなシステムが導入されているのだ。
岩陰でじっと事の成り行きを見守っていたセトと海斗が安堵のため息を漏らす。
しかし戦況は変わったものの、闇属性に下位属性は効き目が悪い。
すなわち時間稼ぎにしかならない。
かといって対抗できる属性を持つのは、海斗の聖属性のみ。
だが頼みの綱である彼のレベルは1。近づく前に即死する。
「くそッ……どうすればいい?」
利久がそう呟いた時だった。
再び頭上にテロップが流れだす。
”Jackが戦闘参加許可を求めています。許可しますか?”
「許可してくれるかな」
少し低い女性の声。
利久が振り返ると全身黒のスーツにコートという恰好をしたスレンダーな中性的な人物が立っている。
しかもその腕には腕章が。
利久は慌ててyesのパネルをタッチする。
「あとは、任せな」
「う、うそ。
彼女は両手を肩から背中に回すと、 二本の片手剣を具現化した。
「二刀流! クソカッコいいっ」
駆け出す彼女。
利久は自分の置かれている状況も忘れ、観戦に夢中になったのだった。
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