19・システムの影響
文字数 1,419文字
「どうなってるんだよ!」
「知るかッ」
───【時は少し遡る】
「ここからゲートを通って、ワープで一気に23地区まで行くぞ」
海斗は手首を数回振ると、自分だけに見えるパネルを表示した。どのゲートに向かうか確認しているようだ。
「悪い、俺今……ワープ使えない」
申し訳なさそうにそう切り出したセトを、海斗と利久は音のしそうな勢い振り返る。
「え? なんで?」
と、利久。
この世界でワープが使えないのは行ったことがない場所だけだ。
セトは、”今、ワープが使えない”と告げた。
つまり限定で使えないという事。そんな話は聞いたことがないと顔を見合わせる利久と海斗。
セトは手首のリングを見つめた。それは”指定保護認定者の証”。白いリングには、金の文字が浮かび上がっている。
利久たちの位置からでは文字が読み取れないだろう。
「今の時間は、レジェンドの影響を受けるらしい」
「は?」
セトの言葉に声を発したのは、海斗だ。
「どういうこと? レジェンドは封印されてるんだろ? 噂では17地区に。ここからは相当距離があるぞ。まあ、バーチャルの世界だから、距離は関係ないのだろうけど」
普段無口な海斗が饒舌になる。それほど異常事態という事だ。
海斗は仕方なく、そこら辺の石の上に腰を下ろした。
「ねえ、セト」
「ん?」
海斗を申し訳なさそうに見つめていたセトは利久に呼ばれ、そちらに視線を移す。
「”指定保護認定者”って……レジェンド候補って一体何なの?」
もしかしたらセト自身も知らない可能性があるが、利久は聞かずにはいられなかったようだ。
バーチャルリアリティーゲームAGの中で、たった一人だけの”レジェンド候補”。候補と言うからにはレジェンドとなれる可能性を示しているのだろうが、この世界で”レジェンド”とはシステム名だ。
システムになるというのは、どう考えてもオカシイ。
彼は自分の考えを述べたうえでチラリとセトを見つめる。
「それは……」
セトは、言っても良いのだろうかと顎に手をやった。
軽くマザーから説明は受けているが、自分で調べたことも合わせ知っていることはいくらかある。
セトはどう説明するか迷った挙句、
「レジェンドの器ってことみたいだ」
と抑揚のない声でそう吐き出した。
「器?」
海斗はじっとセトを見つめている。
利久は首を傾げた。
「そう。レジェンドが降臨するための器」
「システム、レジェンドって具現化するわけ?」
と利久が問う。
セトは頷いた。
「確か、システムレジェンドは……秩序を守るために稼働していたって聞いたけど。無属性でAG最強の存在。具現化して守ってたってことか」
呟くように言葉を繋ぐ利久。
「他は調べ中。何せ、資料がなさすぎる」
セトがため息をつく。
せっかく育てたキャラクターを乗っ取られるという事なのだ。少しでも、どうなるのか知りたいのは、普通のことであろうと彼は解釈したようだ。
「意図的に消されたか、どこかに保管してあるんだろうな」
といって、海斗が立ち上がる。
「しょうがない、荒野をボードで移動する。利久、三人乗り持ってたよな」
「うん。任せて」
利久はパネルを表示すると空間を開きアイテム庫からボードを引っ張り出す。
「長い道のりになりそうだな」
と、海斗がため息をつくのがわかった。
管理棟から23地区まではかなりの距離がある。
しかもこの中で戦えるのは利久だけ。光属性の利久は闇属性との相性が悪い。どうしても遠回りになるのは否めなかったのだ。
「知るかッ」
───【時は少し遡る】
「ここからゲートを通って、ワープで一気に23地区まで行くぞ」
海斗は手首を数回振ると、自分だけに見えるパネルを表示した。どのゲートに向かうか確認しているようだ。
「悪い、俺今……ワープ使えない」
申し訳なさそうにそう切り出したセトを、海斗と利久は音のしそうな勢い振り返る。
「え? なんで?」
と、利久。
この世界でワープが使えないのは行ったことがない場所だけだ。
セトは、”今、ワープが使えない”と告げた。
つまり限定で使えないという事。そんな話は聞いたことがないと顔を見合わせる利久と海斗。
セトは手首のリングを見つめた。それは”指定保護認定者の証”。白いリングには、金の文字が浮かび上がっている。
利久たちの位置からでは文字が読み取れないだろう。
「今の時間は、レジェンドの影響を受けるらしい」
「は?」
セトの言葉に声を発したのは、海斗だ。
「どういうこと? レジェンドは封印されてるんだろ? 噂では17地区に。ここからは相当距離があるぞ。まあ、バーチャルの世界だから、距離は関係ないのだろうけど」
普段無口な海斗が饒舌になる。それほど異常事態という事だ。
海斗は仕方なく、そこら辺の石の上に腰を下ろした。
「ねえ、セト」
「ん?」
海斗を申し訳なさそうに見つめていたセトは利久に呼ばれ、そちらに視線を移す。
「”指定保護認定者”って……レジェンド候補って一体何なの?」
もしかしたらセト自身も知らない可能性があるが、利久は聞かずにはいられなかったようだ。
バーチャルリアリティーゲームAGの中で、たった一人だけの”レジェンド候補”。候補と言うからにはレジェンドとなれる可能性を示しているのだろうが、この世界で”レジェンド”とはシステム名だ。
システムになるというのは、どう考えてもオカシイ。
彼は自分の考えを述べたうえでチラリとセトを見つめる。
「それは……」
セトは、言っても良いのだろうかと顎に手をやった。
軽くマザーから説明は受けているが、自分で調べたことも合わせ知っていることはいくらかある。
セトはどう説明するか迷った挙句、
「レジェンドの器ってことみたいだ」
と抑揚のない声でそう吐き出した。
「器?」
海斗はじっとセトを見つめている。
利久は首を傾げた。
「そう。レジェンドが降臨するための器」
「システム、レジェンドって具現化するわけ?」
と利久が問う。
セトは頷いた。
「確か、システムレジェンドは……秩序を守るために稼働していたって聞いたけど。無属性でAG最強の存在。具現化して守ってたってことか」
呟くように言葉を繋ぐ利久。
「他は調べ中。何せ、資料がなさすぎる」
セトがため息をつく。
せっかく育てたキャラクターを乗っ取られるという事なのだ。少しでも、どうなるのか知りたいのは、普通のことであろうと彼は解釈したようだ。
「意図的に消されたか、どこかに保管してあるんだろうな」
といって、海斗が立ち上がる。
「しょうがない、荒野をボードで移動する。利久、三人乗り持ってたよな」
「うん。任せて」
利久はパネルを表示すると空間を開きアイテム庫からボードを引っ張り出す。
「長い道のりになりそうだな」
と、海斗がため息をつくのがわかった。
管理棟から23地区まではかなりの距離がある。
しかもこの中で戦えるのは利久だけ。光属性の利久は闇属性との相性が悪い。どうしても遠回りになるのは否めなかったのだ。
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