ニシムラさんが言ってた。

文字数 371文字

「マジ?!」
「うん!ニシムラさんが言ってた!」

はじめに「ニシムラさん」を耳にしたのは電車の中だった。噂好きそうな女子学生たちがキャピキャピと話していた。

「古典の先生、結婚するらしいぞ?!」
「嘘だろ?!」
「いや、ガチ。ニシムラさん情報だ。」
「うわ!そりゃ間違いない!!」

友人たちとの会話の中。そこに当たり前のように「ニシムラさん」はいた。妙な緊張が走る。

「え……ニシムラって……誰?」

驚く俺に、皆がきょとんとした顔を向ける。

「誰って、ニシムラさんだよ。」

さも当たり前のように皆は言う。遠い場所にいたはずの「ニシムラさん」は、俺の間近にも存在していた。得体のしれない何かに背筋が寒くなる。

「そういや……。」

そんな中、友人の一人が言いにくそうに呟く。

「お前んち、離婚しそうなんだって?」
「……え?」

俺は言葉を失う。

「……ニシムラさんが言ってたぞ?」
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