それは誰にでも降り注ぐ

文字数 381文字

雨?噂じゃなくて?

どういう事かわからず固まった。その隙に老婆はバスを降りていく。

「あ!降ります!」

発車準備に入ったバスの中、反射的にそう声を上げ慌てて荷物をまとめる。バスを降り辺りを見渡すと、老婆は山間の道に入っていく所だった。急いでその後を追う。
しかし、直ぐに追いかけたはずなのに見失った。

「何で……?」

舗装されていない細い山道。高い木々に覆われ、涼しくはあるが都会では失われた虫の声が延々と響く。積もった枯れ葉、鳥や聞きなれない動物の声、風に薙ぐ木々。静かだが決して無音にならず、絶え間なく何かしらの音がさざめく。

音なく常に誰かの噂が行き交う仮想現実のように……。

目的地はまだ先だ。何で老婆を追おうと思った?一時間以上バスは来ないぞ?!

「……あれ?どうかされましたか?」

自分の行動がわからず慌てる私に、後ろから歩いてきた仏花を手にした女性が声をかけてくれた。
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