うわさづくり

文字数 381文字

「ねえねえ、知ってる?あのうわさ……。」

私は噂を作るのが好きだ。
皆「噂」という響きが好きだ。ここだけの話みたいな秘密めいた内容が自分に特別感を与え、「それを知っている自分」という優越感に浸るのだ。

「噂」は何でもいい。

ちょっと見かけた「事実」。そして「さもありえそうな嘘」。

それを組み合わせて、「ねぇ知っている?」と密やかに数人にだけ話す。
すると数日もしないうちに、その噂は「誰もが知っている公然の秘密」に変わっている。時にはSNS等にも広まって、私の属する小さなコミュニティ内だけの話ですらなくなっている。

「ねぇ知っている?N区の廃ガソリンスタンドの話?」
「知ってる!電話が鳴るやつでしょ?!」

盛り上がる皆に話を合わせるが、いつものように「噂」を流そうとした私は内心とても驚いた。

「そんなはず……。」

皆の話す内容は私が流そうとしていた噂と全く同じ。背筋が凍った。
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