夜雨と紫陽花

文字数 386文字

どうしてその山を導き出したのか私にはわからない。けれど彼は確信していたし、何より友人の命の危機という認識が甘い私よりも必死だった。

「噂は廃村周辺に核がある。だが山向こうの村に噂はない。だからこの山の廃村側に大元があるはずだ……。」

山につき旧道という名の山道を歩いて登り始める。山の日は落ちるのが早い。転げ落ちる様に暗くなった山中、しとしとと霧雨が降る。用意周到な彼はポンチョと大型のライト、私は傘に気持ちばかりの携帯ライトといった出で立ちだ。
とはいえ広い。こちら側の斜面と言われても、その中で人一人を探すのは厳しい。彼もそれは感じているようだ。

「他にヒントになりそうな事はないのか?!」
「いや、雨がどうのって事ぐらいしか……。」
「雨……か……。」

彼が急に立ち止まった。足元に注意しながら進んでいた私は思わずぶつかる。

「おい?!」
「……紫陽花だ……。紫陽花を探せ!久野原!」
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