森の闇

文字数 377文字

知人は辺りを注意深く見渡した。そして掘り返されたばかりの様に柔らかな地面を見つけ必死に掘り始める。

「何ぼさっとしてる!お前も掘れ!」

けれど私の体は血の気が引いてしまい冷たくなっていた。

「久野原!」
「……小宮山はもう……。」
「馬鹿野郎!まだ生きてる!このままじゃ死ぬぞ!」

そこから先は覚えていない。さめざめとしていた雨が次第に強まる中、無我夢中で土を掘り返す。

「……あっ!!」

土の中から人の手が見えた。我を忘れ、私は素手で土を掘り返す。

「小宮山っ!!」

やがて麻袋をかけられた頭部が現れ、私は急いでそれを外す。一瞬、誰かわからない。友人はまともに食べていなかったのか頬がこけ、皮膚の色も死人の様に悪かった。
だが息はある。

「おい!引っ張りだすのを……?」

それまで私より必死だった知人はいつの間にか手を止め、雨の中、無言で立っていた。森の暗がりをじっと見つめて。
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