接触

文字数 388文字

「バスを逃したら連絡下さい。」

彼女は明るく笑った。渡した名刺を面白そうに見つめ去っていく。

私は気持ちを切り替え、目の前の朽ちたガソリンスタンドに目を向けた。小宮山が最後に来たとしたらここだ。「呪われる」噂のスタート地点。変な通知が入るとか、電話が鳴ると言われている。
バスの時間の関係で昼間に訪れたのに、山を背に作られたソレは既に薄暗く不気味だった。じわじわとコンクリートに染み込む蝉の声。無意味なスプレーアートが虚しさを強めている。私は意味を成していない立入禁止のロープを跨ぎ中に入る。入り口もこじ開けられガラスも割られ、中も風雨に晒され汚かった。手掛かりになりそうなものもない。
私が諦めて帰ろうと思った、その時だった。

ジリリリリリリリ……ン。

ビクッとした。目の前の古い電話が鳴った。ありえない事が起き鼓動が早くなる。極度の緊張に判断が鈍る。

私は何故かそれに手を伸ばしていた。
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