第3章 第9話

文字数 1,087文字

 これで完璧に繋がった。宿に対しては偽名で取材許可を申請していたのだろう。金光の持ってきた名簿には岩倉の名前がなかったのだから。

 すぐに所轄に連絡し、『あおば』近辺及び駅周辺の防犯カメラのチェックを依頼する。島田と間宮の供述から、宿に連絡し二人の泊まった『楓の間』の鍵の保全を依頼する。鑑識に連絡し、名簿についた指紋の検証ともう一度楓の間を髪一本逃さず捜索するよう指示を出す。

「よく思い出してくれた。これで昨夜の流れがほぼ繋がった」

 間宮は俺の言葉が耳に入らぬ様子で、
「それと〜 岩倉は、ハゲ隠しの黒いベレー帽を被って、ベージュのコートを着ていたわ〜
そうだっ こんなのどう?『ハゲ隠し 帽子の男 追跡し』 ご馳走さま♫」

 田中はちょっと真剣な顔で、
「ええと…『ハゲ隠し 帽子の男 』アレ? 何でした?」
「バカヤロウ! そんなの書くなっ 田中っ すぐ所轄に連絡っ」
 直立し俺に敬礼しながら、
「ハイッ」

 机をドンドン叩きながら、
「ちょっと! 馬鹿って何よ! 頭きた〜 もう知らないっ 黙秘っ プン。」
「山岸っ 県警本部に連絡っ 県内主要駅及びバスターミナルの防犯カメラのチェック。」
「ハイッ」
「あと… 港も一応チェックだ」
「わかりました!」
「石田っ 署長に警察庁への協力依頼、すぐにっ。 高跳びの可能性もあるから、羽田、成田、関空、中部などの国際空港のチェックもだ!」
「了解ですっ」

 一気に事態が動き出す。まあ事件が解決する時なんて、こんなものだ。次々と部下に指令を出している俺を間宮は何故かうっとりとした目付きで、

「… すごい… ホントに、刑事ドラマみたい…」

 アホか。ドラマなんて所詮演技だろうが、筋書きがあるのだろうが。こっちは全て本気、細い糸をそっと手繰るしかねえんだよ! 俺はスマホでメールを書きながら、

「黙秘したんじゃないのか?」
「ねえねえねえ、何でそんなにいっぺんにいろんな事が出来るの?」

 話しかけてくるな、ええとタクシー会社への連絡はー
「邪魔すんなっ おい、誰かいないかっ」

 目をハート型にしながらいちいち絡んできやがる、留置所にでも放り込むか?
「ちょ、カッコいいよアンタ… ヤバ…」
「課長、お呼びでしょうかっ?」

 所轄の刑事が駆け込んでくる。
「黙れ! いや、すまん、君に言ったんじゃない、県内のレンタカー屋にチェック入れてくれないか?」

 彼は目を白黒させつつも。
「わかりましたっ」
「すっご… ねえねえ、お兄さん〜」
「うるさい。『青木だ。どうだ? うん。うん。そうか。よし』おい、誰かいないかっ?」

「キュン キュン キュ〜ンッ」

「誰かっ この女を留置場にーー」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み