第5話:レフ、フュードル夫婦の日本旅行

文字数 2,062文字

 そのレストランの長期休暇を利用してレフが日本海の向こうの日本へ旅行したいと話した。友人のフョードルに提案し、奥さんのポリーナがとても興味があると答えた。そこで日本見学の旅を決めた。1968年5月1日からにレフと妻アリサとフョードルと妻ポリーナが横浜港へ旅行へ出かけた。東京と横浜の以前の日本旅行でレフが感動した所を訪ねた。

 まるで新婚旅行の様だった。まず横浜から汽車に乗り清水駅で降りて美しい富士山の絶景を眺め清水から電車で小田原へ小田急に乗り換え箱根湯本でおりて湯元富士屋ホテルに泊まり、その宿の温泉が気持ちよくて天国にいるような心地だったと話した。

 翌日、芦ノ湖へ向かい遊覧船に乗って再度、富士山の絶景を楽しみ、その後、小田原経由で鎌倉へ、大仏さんと長谷観音、銭洗い弁天、鶴岡八幡宮を見学して横浜へ戻り、その晩、ホテルニューグランドに泊まりシャリアピンステーキを食べた。翌日は東京へ行き皇居を散歩して多くの写真を撮った。

 次に銀座のレストランで昼食をとり浅草の浅草寺をお参りして東京駅に戻り日比谷のホテルに宿泊した。奥さん達は和服を着た日本女性にレフとフョードルは築地市場の魚と日本のオモチャみたいに小さな自動車に興味をひかれた。

 日本車のデザインが良く、気に入った様で車のディーラーで日本車のカタログをもらいレストランで食べた日本食の旨い米に感動して、お土産に精米した米を買って帰った。もちろん鎌倉の大仏、神社の大きさと装飾の美しさ富士山の絶景にも感激した。麺類、ラーメン、蕎麦にも驚いていた。駆け足で日本を回り8日目にウラジオストクへ戻った。

 マリアとベロニカに銘々に土産を買い中でマリアは日本のお米、蕎麦、うどんの乾麺、レフは日本車のカタログに特に興味を持った様でマリアは、お米を炊いてみて、その旨さに感激、乾麺の保存が効く事と調理が簡単なことに興味を持ちロシアに輸入したいと考えるほどだった。レフは日本の車の中古車を輸入できれば良い商売ができるだろうと考えた。

 ロシアでは、この頃からインフレがひどくなり物価が上がってきて庶民生活が苦しくなった。翌年1969年にマリアとユーリとミラナとフョードルも日本旅行に出かけた。フョードルと、ほぼ同じコースで観光してまわり富士山、箱根、鎌倉、横浜港、皇居、銀座、渋谷、浅草を案内してミラナは長谷の大仏、皇居の大きさに驚いた。

 食べ物では、日本そば、静岡のお茶、まんじゅう、中華街の本格的な中華そば、美味い珈琲、きれいで豪華な箱根湯元富士屋ホテル横浜のホテルニューグランド、帝国ホテルには驚いた。また日本の文化の高さにソ連との違いを見せつけられたような気がした。こんな小さな国、日本に、こんな素敵な町、ホテル、自然があるとは全く知らなかった。

 マリアは東京で食べた、お好み焼き、もんじゃ焼き、横浜中華街で食べた中華麺が印象に残ったようだ。ユーリは女性達と別行動で自動車のディーラーや系列の中古車屋を見て回り中古車の値段の安さに日本車を輸入すれば良い商売ができると考えていたが当局の許可が下りず実現できなかった。ミラナは銀座を歩く日本女性の美しさに驚き着物が一目で気に入ってしまった。

 着物の古着屋を訪ね歩き、これが輸入できれば儲かると考たが、これも中古車と同じで当局の許可が下りず、実現できなかった。帰る時にはマリアが蕎麦、うどんの乾麺をバッグいっぱいに詰め込んで8日目にウラジオストクへ戻った。1970年代、ブレジネフ政権下、言論統制、当局の締め付けが厳しくなった。。

 しかしマリアとレフのレストランは地元ウラジオストクの数少ない美味いレストランは相変わらず繁盛していた。地元の役所の上層部の人が来ても無料で豪華な食事を提供した。そのため当局からの締め付けをかいくぐり営業を続けられた。この頃は共産主義にも関わらず共産党幹部の腐敗、汚職が多く彼らを敵に回す訳にいかない。その、おこぼれとして同時、手に入りにくい野菜、肉、魚も不自由なく手に入れることができ、このレストランも繁盛した。

 マリアファミリーは順調に商売で儲けて続けた。もちろん国民に知らされていなかったが中国との国境紛争やチェコスロバキアの民主化、プラハの春に対して武力介入した。1979年12月にはアフガニスタン侵攻という世界を敵に回しても強硬策を取り続けた。そのため、翌年1980年のモスクワ・オリンピックはソ連をあげて開催に力を入れていた。

 しかし冷戦でソ連と対立するアメリカ合衆国のカーター大統領が1980年1月にボイコットを主唱。その後、ソ連のアフガニスタン侵攻に反対し日本、分断国家の西ドイツや韓国、中華人民共和国やイラン、サウジアラビア、パキスタンも同調。アフガニスタンでムジャヒディンを支援するイスラム教諸国、及び反共的立場の強い諸国など50カ国近くがボイコットした。これによって全くと言って良いほど、盛り上がらないオリンピックとなってしまった。
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