第1話:マリアの家族がシベリア送り

文字数 2,332文字

 1914年に勃発した「第1次世界大戦」は世界を巻き込む大戦に発展、各国総力戦に突入して国内産業は停滞、物の価格高騰や生活物資の不足に見舞われた。その後、1917年11月7日に、レーニンによるロシア革命がおこり帝政ロシアが終了。スターリンは1912年からレーニンの仲間のボリシェヴィキ達の活動に加わり機関誌プラウダを編集。

 革命後は人民委員会議、ソヴィエト政権の内閣で民族人民委員となりレーニンの片腕として次第に地位を築いた。1922年、ロシア共産党の書記長となり1924年のレーニンの死後、共産党の主導権をめぐってトロツキーと激しく対立し、その後トロッキー達を排除し1929年までには共産党の全権を握り、スターリン政権が誕生した。

 1929年、資本主義世界では世界恐慌が起きドイツ・イタリア・日本などのファシズム国家が台頭、一方の先進的な帝国主義諸国はブロック経済を形成し自国の利益を守ろうとした。そして世界中が混迷を深め、混沌とした暗黒の時代を迎えた。その頃、スターリンがソ連に政権を樹立した。彼は第一次五ヶ年計画をで政府主導の農業事業の集団化、コルホーズを進めて合理化と統制を進め、脆弱な工業力を強化すべく工業重点化政策を推進する。

 結果として帝政時代からの課題であった農業国から工業国への転身を果たしソ連が世界第2位の経済を有する基盤を築く。一方で急速な経済構造の改革は飢饉などの形で国民に犠牲を強いる事になり、反対派に対する厳しい弾圧も合わさって多数の犠牲者を出す事になった。政府主導の農業事業の集団化による農業政策の混乱によって深刻な食糧不足が発生。

 1932年から33年の飢饉へと続く。反対派への弾圧はグラーグ「収容所」に収監された者だけで100万名以上。これを免れた数百万人もシベリアなどの僻地に追放処分。強権支配は大粛清と呼ばれる大規模な反対派摘発で頂点に達し軍内の将官を含めて数十万名が処刑あるいは追放された。多くの人を罪人に仕立て上げて大規模な粛正が行われた。

 この小説の主人公であるイワンとマリアも犠牲者になった。モスクワ郊外の村で野良仕事から帰る途中、KGBの検問で多くの村人と共に国家反逆罪を言い渡され極北の地「シベリアのオイミャコンへ」の追放処分を受けた。その後、シベリア送りになった多くの男達の手で大きな2階建てのアパートを建て室内にトイレも作った。


 世界一寒い地域なので9月から5月までは薪や石炭で常に暖炉をたいて過ごした。たどり着いた先は世界一寒いと言われる現在のサハ共和国のオイミャコン。冬はマイナス50℃で寒い水道も凍るので使えないため水は川から直接調達。洗濯物は外に干すと干したそばから、どんどん凍りつき数分経つと服の表面に水分が吹き出し氷のかたまりになる。


 それを払い落とせば終わり見事に乾くという具合。冬は常に車のエンジンをかけたまま、もし止まると再び、かからない。夏は暑く7~8月は30℃以上になり年間の気温差は100℃近くなる世界で最も過酷な住環境の一つと言える土地。しかし住人に長寿の人が多い。その理由は病原菌やウイルスも冷たすぎて死滅してしまうと言う冗談の様な話が成立する程の厳しい環境。

 仕事と言えば、ただ、毎日、ひたすら土を掘り返し採掘した岩石を運ぶだけ。その岩石を作業場に持っていくだけの単純作業、実は、その岩石の中から稀に大きなダイヤが見つかる事があるのだ。イワンとマリア夫婦の間に1935年にレフという男の子が誕生し続いて1937年に女の子エミリヤが誕生した。

 1943年夏、イワン一家4人でオイミャコンの郊外の森にピクニックをかねて木の実や野いちご葡萄を取りに行った。その時、レフトと妹のエミリアが大きな岩石が多く地表に突き出ている場所を見つけた。イワンとマリヤが掘り返してみると偶然に光る石が3つ見つかった。よく見ると水晶の様な輝きで太陽に当てて見ると素晴らしい輝きを放つではないか直感でダイヤモンドかも知れないと思った。


 そこで他人に知られず、自分たちがわかる様に地表に目印をつけ石を地中深く埋めた。その後、陽が落ちてきたので帰宅。翌日、ツルハシとスコップとバケツを台車に載せて人に見つからない様に朝早く、その森へ出かけた。その場所に到着しツルハシで、その周辺を広く浅く掘り、次に4人でスコップを使い周りの岩石や土をどけた。するとまた別の3つの大きな水晶の様な物が見つけた。

 その後、夕方、陽が落ちるまで作業を行い合計7つの水晶の様な物を探しあてた。今後は前と違った場所に目印なる物と一緒に埋めた。その後、家に戻り、この話は他人に絶対に話さない様にと家族に言い渡した。その後、父のイワンは1944年にロシアと日本の戦争に駆り出されカムチャッカの戦いで戦死した。スターリンも死亡。1946年、母のマリアとレフ、ベロニカ、エミリアは、極寒の地オイミャコンを離れることを決意。

 イワンの古くからの友人で毛皮商人ユーリの家族とトラックに乗って、ひたすら南下。夏のシベリアは昼間は暑く、ヤブ蚊、ブヨなど多くトラックの長旅は困難を極め、2週間後、ヤクーツク到着し、そこを南下してネヴェルから東へ、海の方向へ向かった。一週間後ハバロフスクへ到着し、そこから南下を続けて二週間、ウラジオストクの港にでた。
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