第7話:観光地ソチへの進出

文字数 2,463文字

 その後もレストラン中心にエゴールの仕事は順風満帆でソ連・最高の観光地ソチ進出を考え始めた。1984年には地元でも有名なレストランに名前が挙がった。その繁盛ぶりにエゴールはソチにレストランを出そうと出張し地元の不動産屋でレストラン売り物件を探し出した。マリアとレフが育て上げた若手6人のコックも腕を上げ、ソチに連れて行こうと考えた。

 その後エゴールがソチで売却予定のレストランを探しあてた。レフとエゴールが飛行機でソチに飛び、そのレストランを見に出かけ場所は観光地の中にあり以前の店主が調理機材も全て込みで販売価格を出していた。景色も良い所で何故、店主に店を売るのか聞いてみると賃料が高く薄利多売で、お客を増やしたのだが利益が出なくなった様だった。

 そこでエゴールとレフが店を出すとしたら高級店として看板目メニューを考えなくてはいけない。エゴールがレフに看板メニューについて意見を聞くとレフが舌平目の ムニエル、牛肉の煮込み、ビーフシチュー、最高級キャビア、にしんの酢漬け、スモークサーモン、ビーフストロガノフ、リンゴとアーモンドクリームのタルト、バニラアイス・ロシア風パンケーキなどをあげた。

 しかし今の若手が作る高級料理として舌平目のムニエル、マリアの牛肉の煮込み、鶏肉の煮込み、ビーフシチュー、最高の具材のピロシキ、ボルシチの6つと答えた。リンゴとアーモンドクリームのタルト、バニラアイスのロシア風パンケーキなどのデザートは材料の善し悪しで決まると話した。わかったと言いマリアとレフで若手が慣れるまでソチのレストランで指導してくれないかと言った。レフは良いがマリアは高齢で無理だと言った。

 レフが、その後1984年4月から若手6人とレフが月の半分、出張という形で手伝った。 3ヶ月が過ぎて若手達の料理の味が安定してきた。半年が経ち、そろそろ独立できる位の味になってきた。後はエゴールが良い材料を手に入れる腕次第となりスモークサーモン、キャビア、鶏肉、牛肉、豚肉、鹿肉などは、素材次第で良くも悪くもなるが、カレー、シチュー、煮込みに使うスパイスはエゴールのコネで良い物が入るようになった。

 1985年9月レフが若手達だけでもOKとの許可を出し、この頃になるとエゴールの政治力でソチの有力者達をレストランに招待して豪華料理をふるまった。その記事を地元の新聞に書いてもらって高級店の名前を宣伝し富裕層、観光客の来店が増えた。それらの努力の結果、ソチの有名レストランの仲間入りし利益も出た。エゴールがレストランの名前を統一してブランド化する様に宣伝して回った。

 1985年、エゴールの商売の腕と政治力でレストランの名前は知れ渡り繁盛。その後もエゴールはソチのレストランで儲かり、お金で1986年3軒の高級レストランを買収。そこにマリアとレフのレストランで修行を積んだ12名の若手コックが移動して行き料理を提供し始めた。その中の1軒を高級ロシア料理店とした。

 そこではエビ、かに、サーモン、キャビア、高級ワイン、コニャック、高級なオリーブオイル、高級アイスクリームを使った最高のデザートなどを揃えた外人向け高級ロシア料理店として企画した。開店記念に事地域の共産党の幹部を無料で招待して良質の料理の材料を仕入れるルートを確保し大当たりし、ソ連、第一の観光地・ソチと言う事もあって高級料理の5星・名店として大きな利益を稼ぎ出した。

 1986年7月マリアがレフに宝石の話をして何とか国境を越えヨーロッパへ行きダイヤモンドの原石を研磨したいと告白。困ったレフは列車で行こうと思うので時刻表を調べておくと伝えた。翌日、マリアはエゴールに昔の友人の結婚式に出るので数日間、出かけてくると話した。ヤルタからキエフまで6時間、キエフからワルシャワへ1日。

 キエフ、ウクライナからワルシャワ、ポーランドへの列車でソ連国境を越える時に税関が回ってきて身分証明書を見せると何しに行くのか聞かれた。そこで病院の先生の手紙を見て治療を受けに行くと言うと何か申告するものはないか聞きないと言う立ち去った。意外に簡単に国境を
越えられひと安心した。

 ワルシャワからベルリンへ8時間、ブリュッセルへ10時間、合計、約3日の旅でブリュッセルに着いた。例の物は土産用の四つの陶器製の人形の中に忍ばせてブリュッセルに到着した。市内のホテルにチェックインしレフが英語でホテルのコンシェルジュに有名な宝石店を聞くとゴータム社を紹介された。その店に行き袋から10個の水晶の様な物を渡して宝石の鑑定を依頼。

 依頼してから数分後、別の部屋に案内されて英語で、これどうしたんですかと質問した。我が家の家宝ですと答えると、それでは答えになってない。どこで手に入れたのかと聞くのでシベリアと言うと納得した。担当者が全部間違いなくダイアモンドの原石ですと言った。あまりの大きさに驚いた。先祖の家宝なんですが研磨してもらえませんかとお願いすると良いですが担当者が、そのダイアモンドを持って国外に出るのは難しいよと言われた。

 レフが逆にどうしたら良いかと聞くと、それでは我が社で全部、研磨すると言う事で良いのですねと確認してきたのでお願いしますと言った。全部、研磨するのにどの位の時間がかるかと聞くと10個だと3ヶ月程度と言い持って帰るのは危険だと告げた。多分どこかの税関で引っかかると話し、我が社に預けておきませんかと言われた。彼の名刺を渡してくれゴータムの研磨場
のペーター所長さんだった。

 そこで管理をお願したいと言うと何枚もの書類を書いてもらいますと言われ個人情報の全てを書いて持ち主、依頼人の書類にサインをいれた。逆にゴータム社長の預かり印を押した書面を渡してくれた。この預かり証はゴータムとレフさんで一部ずつ保管する事になっている。もちろん依頼書も同じで両者が持つことになっているので絶対になくさないで下さいねと念を押された。
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