第15話:夏の避暑と一族の金庫番交代

文字数 2,318文字

ポルトガルの暑い夏はレフとアリサは北欧の旅へ出かけ避暑地でゆっくりと暮らしていた。2012年はリスボンからコペンハーゲンへ飛び、コペンハーゲン出発から豪華客船でオスロへ到着。コペンハーゲンかららストックホルムへ空路1時間でストックホルムのコンドミニアムに14日間、宿泊。スウェーデン王の狩猟地だった自然豊かなユールゴーデン島には、博物館やカフェ、遊園地、お散歩コースなどを歩いてまわった。水辺には散策路が整備されていた。

ストックホルムの美しい風景を楽しめる。晴れた日は本当に気持ちが良い。またフィンナルビークスベリイェットというストックホルムが一望できる丘からの眺めは実にきれいで感動的。ストックホルム市内観光をして避暑を楽しんだ。その後、ロンドンへ飛び、イギリス北部の湖水地方で毎日の様に多くの花を見て回り、ウインダーメアー湖クルーズを楽しんで14日間過ごしリスボンに戻った。

 2013年11月にウクライナの首都キエフにて始まった反政府デモは2014年2月21日に最高潮。ロシアの圧力に屈したウクライナ政府、ヤヌコーヴィッチ前大統領は民衆の圧力を受け首都から逃亡、政権は崩壊した。以前、レフがヤルタに住んできた時、やがてロシアの圧力が及ぶと思いヨーロッパを横断してボルトガルで生活を始めたのは間違いではなかった事が証明された気がした。2014年ロシアはウクライナのクリミア半島にある軍事施設を占領した。

ウクライナとロシアの関係は悪くなりNATOとロシア、米国との関係も悪なった。2015年はギリシャ債務問題でユーロ危機、ギリシャで1月、反財政緊縮派政権が誕生し、欧州連合「EU」との金融支援交渉が難航、財政危機が深刻化した。一時はデフォルト「債務不履行」状態に陥りユーロ圏離脱の危機が高まりった。一方、ECBは3月、デフレ阻止のため国債を買い取る量的金融緩和策を初導入。

12月には追加緩和に踏み切った。中国で景気減速、チャイナショック、日本など海外からの直接投資が減少し中国の製造業は過剰な生産と在庫、輸出入の不振に苦しんだ。2015年パリ同時多発テロ、2015年11月13日、パリ中心部の劇場や飲食店などで市民を無差別に標的とするテロが相次いで起き130人が犠牲となりイスラム国が犯行声明を出した。COP21でパリ協定採択。

 フランスで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議「COP21」は12月12日、2020年以降の地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」を採択した。条約加盟国のすべてが参加する枠組みは初めて。各国が温室効果ガス削減で自主的に目標を掲げ世界の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑える事事を目指す。以上の様に2012から15年の世界は経済、政治的にも不安定で大きな事件が多発し激動の時代となった。

 2015年に、孫のブルーナ、セルジオ、アマンダが時間ができたので2日後、家族全員で米国からリスボンへ来るとアマンダが電話してきた。電話の話では、ブルーナとセルジオ家では子供3人、アマンダ家では子供が2人だと連絡してくれた。リスボンの空港で待つと総勢14人で3つの孫家族がやってきた。 そこで3台の車に分乗し宿泊予約したホテルへ直行。そのホテルのレストランで話しそすることになった。レストランで皆にレフとアリサが自己紹介した。

 その後、ブルーナとセルジオをソフィアとレフ、アリサの5人だけで少し話をする事にした。レフが、最初に、私も80歳の誕生日を迎え、いつ体調を崩すかも知れない。そこで数年前に言った様にファミリーの資産の管理の権限を君たちに渡そうと思っていると話した。PCTの残金500万米ドルと書いてある通帳を見せた。今後、君たち3人のうち、代表してPCTの担当者と交渉する係を誰にするのかと聞いた。

 するとブルーナがセルジオが現職の銀行マンだからファイナンス担当を引き受けて欲しいと言うとソフィアも賛成した。セルジオが引き受けると言ったのでレフは詳細は全て書面にしてメールで各自に送ると言った。これでレフの金庫番の役目は終わり肩の荷が下り張り詰めた心の糸が、ゆるんでくる不思議な気持ちを味わった。これで話は終わりと言うと、今回も、あのマリーナを2泊、予約してもらえませんかと聞いてきたのでマリーナに電話して予約を取った。

 すると少しして大きなケーキがテーブルに運ばれた。 レフが何これと言うとソフィアがレフさんへの感謝の気持ちサンクス、アニバーサリー・ケーキですと言った。ケーキには大きめのローソクが8本、それに火をつけたとたん拍手がわいた。レフさん火を消してというので慌てて吹き消すと、「おめでとう、ありがとうと声が聞こえ、更におおきな拍手となった」。思ってもみなかったことにレフもアリサも驚かされた。レフが、ありがとうと言った。

 何か、あのピクニックの日から、ウラジオストク、ヤルタと思い出が走馬燈の様に頭の中を駆け巡った。その画面には若き日のマリア、ベロニカ、エミリアが生き生きと描き出されて、まるで映画を見ている様だった。そして、みんながレフの方を見てありがとうと礼を言っているのが、ほんの一瞬の出来事だった。

 しかし、まるでスローモーションを見ている様な不思議な感覚に襲われた。レフが、ぼーっとしているうちにパーティーは終了しアリサがレフ、大丈夫と耳元で大きな声で叫んだので我に返った。脳の血管でも切れたか思ったと笑いながら話した。3日後、孫達の大家族をレフやファミリーで見送った。そして2016年を迎え2016年も世界情勢は波乱の幕開けだった。
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