第2話:ウラジオストクでの商売

文字数 2,040文字

 そのウラジオストクの郊外に友人のユーリと共に大きな家を借りて住み始め家の中を間仕切り、小さい方の一画をマリア一家が借り使わせてもらった。その後ユーリはウラジオストクの町中の大きな毛皮屋を探しては雇ってくれる様に頼み込んだが、簡単には雇ってくれない。あきらめかけた時に、ある毛皮屋を見つけ、そこの主人セルゲイと話をした。すると、じっと考えて、じゃー俺の試験に合格したら雇ってやろうと言った。


そして倉庫から4つの毛皮を出してきた。どれも、あまり上等ではない熊の毛皮だった。熊の毛皮のベストが600ルーブル、ハーフコートが1000ルーブル、帽子が200ルーブル、マフラーが400ルーブルの合計で2200ルーブルが仕入れ値。これら全部を売って利益が出たら俺に返せ。もし赤字や売れ残りが出たら不合格で雇わない。


その条件で試験を受けるかと聞いた。そして、そのテスト受けると言い2200ルーブルを払って毛皮を買い取った。ユーリーは、その毛皮は直感で高いと思い、うまく工夫をして売らないと、そんなに簡単に利益が出ない事を悟った。自宅に帰り作戦を立てるのだが、もし自分がお客だったら間違いなく買わないであろうB級品をどうやって売るか考えあぐねていた。

 そんな時に隣に住むマリアと妹のベロニカが裁縫「さいほう」上手できれいな刺繍「ししゅう」の服をつくっては売っていたのを思い出し、マリアに、どうやって高く見せるか相談を持ちかけるとベロニカと2人、3日できれいな刺繍をつけて見せますといい、毛皮商品を持っていった。3日目の晩に数種類の素敵な刺繍の民族衣装を手分けして製作したとマリアとベロニカが商品を持ってきた。


 そして帽子の内側にきれいな刺繍の布をあてベストとハーフコートに前あわせの所に縦長の刺繍入りの布をつけてきた。マフラーには目印になる様な美しい刺繍の布を外から見えない様にうまくつけてきた。早速、翌日、町に出て町の1流ホテルで金持ちそうな夫婦や旅行客に売って回った。やはり思ったとおり刺繍の美しさをみて、その日のうちに全商品が売りきった。

 売値は合計で3000ルーブル、店の店主に2500ルーブルと言い、お金を手渡した。喜んだ毛皮屋の主人は、どうやって売ったのか聞いたので、「その質問に対してユーリは商売人の腕ですよと答えて煙に巻いた」。明日から、うちで雇うから売れ残った商品を外で売ってこいと言われた。

 「まーそんな程度の仕事しかないかとユーリは思った」が仕事にありつけたので良しとしようかと、自分に言い聞かせた。家に帰り、妻のミラナに事情を話すとミラナは明日から仕事が見つかって大喜で儲けの500ルーブルのうちの200ルーブルを手渡した。明日からも、また手伝っておくれと依頼。翌日、セルゲイの店へ出かけて今後の仕事について聞いた。

 すると「うちの店で雇うのではなく店の商品を卸売りする」と話した。それを買い取って郊外の町、村へ出かけて売ってこいと言うので仕方なく了解した。セルゲイが店の倉庫にユーリーに見せて売れ残り品どれでも良いから売ると伝えた。ユーリーが慎重に商品を選んで、刺繍つきのブラウスや毛皮のチョッキ、ハーフコート合計15点を選び出した。

 セルゲイが1万ルーブルで良いと言ったがユーリは8千ルーブルなら即金で買う1万ルーブルなら5回に分けて来月から毎月2千ルーブルずつ払うと回答。そりゃ厳しい帽子3つもつける
からとい1万ルーブルで即金と言ってユーリは8千ルーブルで即金を譲らない。押し問答したがユーリの言った即金の魅力に負けて8千ルーブルで買い取った。

 それ商品を家に持ち帰り4日かけてマリアとベロニカが協力してきれいな刺繍つきのブラウスに仕立て直し、毛皮の裏地を刺繍をあしらった布に変更。それを持ってユーリがトラックに乗り女房のミラナと2人で売って回った。少しずつ売れ始めチョッキが5つ、ハーフコートが4つ、売れ3日で完売した。

 販売総額が1万2千ルーブルできれいな刺繍が特に富裕層の女性達に人気だった。売れないであろうと思った毛皮の帽子や手袋は高く買ってくれたお客さんにサービス品としてつけてやった。いらないと言われた小物、手袋、帽子は最終日、じゃがいも、野菜、魚などの食料品を物々交換した。

 最終的に売れ残った手袋や帽子は地元のアカギレだらけの恵まれない子供達に無料で渡した。
 そう言う行いが正直者のユーリという評判を呼び行商に行くと家に呼ばれて、お茶をご馳走になる事もあった。更に、お客さん達に愛される様になり順調に売上を伸ばし、お金が入るようになっていった。
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