第13話:昔話とベロニカの胃ガン

文字数 2,194文字

 マリアの死からエミリアも元気がなくレストランの調理場にも出なくなって、ふさぎ込んでいた。そんな時、レフとアリサが2ヶ月に1回程度、車でポルトのコスタズメラルダ・ヨットクラブへの旅へ連れて行く様にした。2005年春に少しずつ元気を取り戻し調子の良い時はレストランの調理場を手伝う様になった。

 この年はエミリアも元気を取り戻したかに見えたのだが12月初旬、腹痛を訴え近くの病院の救急へ運ばれた。診察の結果、胃がんと診断された。2006年に入り放射線治療をし髪の毛がなくなったのを悲しんでいたが体調は思わしくなかった。春になり体調の良い時、また海が見たいというのでポルトのコスタズメラルダ・ヨットクラブへ連れていった。レフとアリサと同じ部屋に泊まって懐かしそうに昔話をした。

 イワンがソ連のスターリンの命令でイワンが一家でシベリアのサハ共和国のオイミャコンのいく様に命じられマリアと私が小さなレフと手をつないでを連れて長いに道のりを歩いた。途中で何回も泣くので困った。それでも何とかオイミャコンについた。そこでは凍傷にならない様に何枚も毛皮をきて生き抜いてきた。マリアが、近くの山から食べられそうな野草と少しのジャガイモと川魚を入れた煮込み料理が冷たくなった身体を温めてくれたのよ本当に美味しかったわ。

 マリアの手料理がなかったら飢え死にしたかもしれなかったんだよ。本当にマリアには感謝だったよ。でも、その姉さんも天に召された。次は私の番だね、仕方ない年だからねと薄笑いを浮かべた。早く天国に行って姉さんと昔の様に歌でも歌いたいものだよと言った。その後はレフ、あんたのお陰でソ連を脱出して、この暖かいポルトガルに来られて本当に幸せだよ、レストランも繁盛しているしファミリーに囲まれて、まるで天国にいる様だよと言った。

 こんな幸せな時間をイワンにも味わって欲しかったよと泣き出した。レフがイワンも天国から今までのファミリーの生活を見守ってくれているから知ってるよと入った。今頃、天国にたどり着いたマリアと昔の様に仲むつまじく生活を始めているよと言った。私もイワンとマリアの所へ早く行きたいよと、また泣いた。醜くく年を取っていくのはもう嫌だ、痛みに耐えるのも、こりごりさと言った。これにはレフもアリサも何も言えなくなってしまった。

 エミリアが、もう疲れたからと言い、すっと寝てしまった。翌日はマリーナが見えるレストランの席で遠くの海を眺めていた。本当に綺麗な景色だね、こう言う時間がもてるなんて夢の様だと言った。するとレフトアリサが、また連れてきてあげるから長生きしましょうねと言うと、そうしたいが、残念ながら私には、この世に残された時間が、もう少なそうだ。でも、この景色は忘れない様に頭の中に焼き付けておきましょうと笑った。その笑顔は、まるで童女の様な素敵な
笑顔だった。

 私とマリアとレフとベロニカで山へピクニックへ行った時レフが何か光るものを見つけたんだよねスコップとシャベルで掘ってみると硝子の様な光るものを見つけたんだ。最初、水晶だったら良いなと思った。その後、幼いレフが少し離れた場所をシャベルで掘ると同じ様なものが見つかった。合計で10個、見つけたんだよね。3つが大きく他は小さかった。その時マリアは驚いて、この事は絶対に他の人にしゃべっちゃいけないよと言った。

 多分、あの時マリアはダイヤモンドだと直感したんだろう。神様がマリア・ファミリーがあまりに可哀想だと思い、私たちにプレゼントを下さったのだと感謝した。その後、ウラジオストク、ヤルタとソ連を横断した。その後、レフがブリュッセルでその水晶の様なものが、ダイヤモンドだと調べてもらい、研磨してマリア・ファミリーの宝物をスイスの銀行に預けてファミリーのみんなに分けてくれた。そして暖かく安全な港町リスボンにたどり着いた。

 マリアに教えてもらった、刺繍と料理で生計を立てて今は、最高に幸せな時間だよと言いファミリーの孫達に更に素晴らしい人生を送ってもらいたいと言った。これは、みんなレフのお陰だよ、ありがとうよと、また泣いた。ちょっと疲れたからと言いベッドに入って少し話をして小さな寝息が聞こえ、寝てしまった。翌朝、朝食をとり9時ころマリーナを出発して昼過ぎにリスボンの家に着いた。今年の夏は最近にはなく暑い夏だった。

 ベロニカが暑さで体調崩して2週間入院した。レフはベロニカが可哀想な位やつれた姿を見るに忍びなかった。秋風が吹き涼しくなりレストランの方は変わらず盛況で繁盛していた。寒い風が吹き始めた11月、再びベロニカが急に具合が悪くなり救急車で病院に運ばれた。入院の予定が2週間と言われたが体調が回復せず2006年12月24日、危篤状態になり12月25日に亡くなった。

 マリアの時と同じ様に何があっても仕事の手を休めないよう質素に身内だけで交代でお通夜をして2007年の年が明けレストランが休みの日にファミリー総出で葬式を執り行った。遂にレフがマリア・ファミリーの最長老になりファミリーの更なる発展を誓った。マリア、ベロニカも亡くなり、レフとアリサだけで店のビルに住む意味がなくなった。そこでレフとアリサは将来的には別荘のような海の見える素敵な所に家に2人だけで住みたいと思い始めた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み