第6話:子供達の結婚と孫の誕生とヤルタへ移動

文字数 2,238文字

 こんな暗い時代にもマリア、レフの家族には一筋の光明が差してきた。1978年にレフの長男マキシムがレストランで働いていた地元ウラジオストク出身のイザベル、1958年生まれ20歳と結婚を決めた。マリアとレフはレストランの儲けで大きい中古の家を手に入れた。

 そこにマリアの家にマキシムとイザベルが住む様になった。翌年1979年にはマキシムの長男ブルーナが誕生し同じににレフの長女ソフィアとアンドレ「1957年生まれ22歳」が結婚し、住まいはレフとアリサが住んでいる家に入ることになった。その後レストランは順調に売上げを上げて、マリアのファミリーは車2台を手に入れた。

 1980年にソフィアに長男のセルジオが誕生し1981年にマキシムに長女アマンダが誕生した。ファミリーにとっては、めでたいこと続き。マリアはレストランとで忙しい冬、マリアが仕事中に倒れ車で病院へ運んで病室で身体を温めて、ゆっくり休んだお陰で意識をとり戻した。病名は軽度の心筋梗塞で医者が寒い環境で立ちっぱなしの仕事が身体にきつい。

 それで倒れたのだろうと言い冬場は仕事を減らす様にと言った。できたら、もっと暖かい地域へ引っ越した方が良いと話した。数週間後、マリアが元気を取り戻し顔に赤みがさし笑顔を取り戻し退院してマリアとレフがファミリーの今後の事を話し合った。その結果1982年レフの妻のアリサが、こんな寒いウラジオストックを出ようとは語った。

 そして彼女の故郷、ウクライナ南部、黒海に面した温暖な避寒地、ヤルタへ行こう言い出した。マリアも高齢で寒さが身にしみる様になり、その意見に大賛成。そこでアリサがヤルタの実家に連絡して移住について了解を得て手にいれた大きな家と車2台も地域の共産党の高級幹部に売却して現金を手に入れた。その後、昔から、いろいろと世話になったユーリ家族に涙で別れを告げた。

 別れの時、マリアは、「この恩は絶対忘れないと言いレストランで儲けたお金からお礼をし、ユーリも涙ながらに別れを惜しんだ」。1982年の7月にシベリア鉄道で7日かけモスクワへ2日間のホテルで休息してウクライナ・キエフへ向かった。その後2日かけ南下してヤルタに到着した。

 当時、ソ連では国民が長い旅をする事に当局が神経を尖らせていたが病気療養のためと書いた医者の手紙を持ち歩いていた。そのため検問を受ける度に事情を話し、遠くの親戚の所へ引っ越すというと了解してもらった。その後11日の長旅を終え、ヤルタに到着した。そしてアリサが両親に会い、次にマリア、レフの家族が挨拶した。

 アリサの両親は地元で土産物屋、遊覧船て観光業、レストランなどの商売を手広く営んでいた。5年前に自宅も増築して離れを建て、その離れの4LDKの家をマリア家族に貸してくれた。マリアとレフの妹ベロニカ、娘のエミリアは刺繍の名人で土産物屋で販売する洋服の仕事をレフはレストランでコックの手伝い、アリサは土産物屋の販売員として仕事を始めた。

 その後、それぞれの職場で忙しく仕事をしていた。マリアのファミリーのソ連を横断する大移動の一年、1982年が終わり、1983年を迎えた。特にマリアと娘のエミリアの刺繍の入ったYシャツTシャツ、ブラウス、カーディガンが評判が良く飛ぶように売れ始め、土産物屋で一番の売り上げを誇る様になった。

 そのうちアリサも刺繍の仕方をマリアに教えてもらう様になり一人前の針子になった。レフの方はマリアに教えてもらった卵料理や肉と野菜の入ったピロシキやビーツ、赤カブと肉、ベーコンの入った煮込み料理、ボルシチ、寒いシベリアの名物料理ペリメニと言うロシア風の小ぶりな水餃子、マッシュポテトを添えたビーフストロガノフが評判。地元客だけでなく観光客のお客さんも増えてきた。

 土日、祭日になるとレストランではウオッカがを飲んでロシア民謡、踊りが始まり大盛況。これにはアリサの父エゴールも大喜び。1983年になってレストランの売り上げが倍増し夏、秋の観光シーズに入り、更に、お客さんが増えたためエゴールが給料も上げてくれた。あまりにお客さんが増えたのでコック長とレフだけでは手が足りなくなりエミリアに応援を頼んだ。

 マリアとエミリアはレフと違った鹿肉、豚肉、鳥肉、牛肉など肉料理の煮込みが上手。その味付けと言ったら一度食べたらやみつきという程、美味しかった。そのため応援を頼んだはずが、かえって多くのお客さんを呼び込む事になった。1984年に入り、お客さんがレストランには入れなくなり長い行列ができる様になった。

そこで1983年6月にエゴールが近くの土産屋を改装し新たにマリアとエミリアのレストランを作った。そこは海に近く景色も良くマリアとエミリアに肉と野菜の煮込み料理の専門店とし、レフの店を魚料理、ボルシチ、ピロシキ、ビーフストラガノフの店と看板を上げた。人手が足りないのでマキシムとソフィアもレストランを応援する様に頼み込んだ。

 若いコックもそれぞれの店に5人ずつ採用し料理の腕を鍛えた。料理の評判を聞きつけて遠くのソチからも観光客が来る様なり、この2つの店が、まるで競い合う様に、お客を二分して一年が経った。冬は寒い地域からの避寒の観光客が増え売り上げは順調。エゴールに家を無料提供されていたのでマリアが家賃を支払うと言っても充分稼いでくれてるからといらないと決して受け取らなかった。
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