第3話:レフの結婚と日本旅行

文字数 2,089文字

 マリアの息子レフとユーリの息子のフョードルが中学時代、ウラジオストクに住む日本人、加藤彰が経営する柔道場を見学して興味を持った。そこへ通いだし柔道を通じて日本文化に興味を持つ様になった。やがて月日が流れ1957年にレフが同じ会社のウクライナ系ロシア人女性アリサと結婚し翌年1958年にフョードルがロシア系の女性ポリーナと結婚した。

 レフは、妻のアリサとの間に1958年に長男マキシムと1959年に長女ソフィアを授かり、フョードルは奥さんポリーナとの間に1959年に長男マカール、2年後に長女オリガをもうけた。1958年、レフ24歳の時、船会社の仕事で1958年から開設された、ナホトカから日本の敦賀港への定期貨物船の船乗りの仕事に就いた。

 日本の敦賀港に着くと、りんご、なし、日本のお米、お餅、うどん、そば、ラーメンの乾麺など珍しい物を土産に実家に帰ってきた。ユーリは51歳になり毛皮の行商から毛皮の店を持ち、その他、食料品や日用品などスーパーマーケットを経営し金回りも良くなった。店を閉める頃、売れ残った商品を貧しい人達に超格安の値段で売るので閉店間際には行列ができた。


 売れ残りだけでなく使用期限の短くなった商品も捨て値で彼らに譲った。1961年フョードルの会社でウラジオストクと横浜港との定期航路が開設され日本とロシアを旅客船が往来する様になった。そんな、ある日、柔道を教えている加藤が日本へ旅客船で帰るというのでレフとフョードルも休暇を使って日本に行きたいと言いだした。

 ユーリが旅費を出してやるから日本を見てきなさいと言い送り出した。1962年の横浜港に降り立つと大きなビル、電車、人、車の多さに驚いた。横浜に泊まり翌日、東京へ行き東京駅周辺の高層ビルに圧倒された。おしゃれな銀座、魚の築地、公園の皇居と2人は見るもの全てが物珍しく興味津々で、東京に2泊した。


 その後、電車で下町、山手、武蔵野の方まで回わり多くの写真を撮ってウラジオストクへ戻った。実家に帰って多くの土産と写真を家族達に持参して日本の発展しているの様子に驚いたと語った。1964年マリアと言えばベロニカとアリサと一緒に得意の裁縫の腕できれいな刺繍入りのシャツや下着を仕立ててユーリの店の一角を借りて順調に商売を続けていた。

 最近マリアの家でも乗用車を買いレフや妻のアリサが運転していた。季節は春から夏へ、そんなある日の晩、マリアが20年前のピクニックの話を思い出して、息子のレフと娘のエミリアに、この夏、車でオイミャコンへ行ってみようと言い出した。毛皮の縫製の仕事と家の方はベロニカに任せ3週間の休暇を昔の友人に会うという名目で出かけることにした。

 一週間走り続けシベリヤのオイミャコンに到着した。ピクニック用具を買い込んで20年前、水晶の様な物を埋めた草原に行きピクニックに行く振りをした。そしてレフとエミリアに野いちご、レッドベリーなどを取らせた。マリアは埋めたと思われる所を小さなスコップとシャベルで丹念に探し出した。30分位で埋めた場所の目印を見つけた。

 地中から袋に入った水晶の様なものを探し出し、もう一つ埋めた場所も探して当てスコップとシャベルで埋めた水晶のような光る物を回収。その後、買ってきたサンドイッチとポットに入れた珈琲を飲んで、ゆっくり休んだ。取ってきた野いちご、ベリー類を袋に入れて車に戻り来た道を一目散に、南下。ウラジオストクへめざし途中の町で宿泊しながら7日間で自宅に戻った。

 帰って、留守番していたベロニカに、お土産を渡して、お礼を言った。14日間で戻ってきたのを不思議に思いベロニカが何かあったの聞いた。そこで昔なじみの友人達がモスクワ郊外に既に引っ越していなかったと答えた。マリアが持参した水晶の様な物をいれた袋を家の縁の下に穴を掘ってしまった。その後、気になったので一番小さな水晶の様な物を別にして持ち歩いた。

 1964年の日曜日にウラジオストクの町の宝石屋に行き気になり小銭いれの小さな水晶みたいな物を鑑定してもらうと間違いなくダイヤモンドの原石だと言われた。こんな物どうしたのと不思議そうに聞いたので亡き夫から大事にする様にもらった形見の品だと伝えた。店を出てマリアは心臓が飛び出そうになるのを抑え冷静さを予想っていた。しかし額に冷や汗が滲んでいた。

 家に帰りベロニカが不在なのを確認して息子のレフと娘のエミリアに本物のダイヤモンドの原石だったと告げた。すると二人とも大喜。しかし今のソ連では、こんなダイヤモンドを持って
いるのは変だと警察官や役人に取り上げられる。そして、ひどいめにあわされるから秘密を守り続ける様に言い絶対口外するじゃないよと念を押した。
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