第6話

文字数 530文字

ドア()しに部屋の様子を探る。
もうケンカはおさまっているようだった。
静かにドアを開ける。
途端に母親が奥からつかつかとやってきた。
そして、待っていたように母親に頭を叩かれる。

「なんで外に出るの!?」
「僕が邪魔って……」
「誰も外へ行け、なんて言ってないでしょう!! あんたがうろついて警察に連れていかれでもしたら、こっちが迷惑するのよ!!」
「でも見つからないようにしてた……」

口答えするな、とでもいうように僕はもう一度頭を叩かれた。

母親は僕が人目に触れることにやたらと敏感(びんかん)だった。
僕が5才の頃、外をうろついていて警察官(けいさつかん)のおじさんに声をかけられ、そのまま児童相談所(じどうそうだんじょ)に連れていかれたことがあったからだ。
そして、体を調べられ虐待(ぎゃくたい)を受けているという事になって 僕はしばらくの間施設(しせつ)で保護された。
僕は訳が分からないまま、半年ぐらい施設で生活する事になった。
それから、母親が 「もう大丈夫ですから」 と言って僕を引き取りに来た。
その後、僕は母親から外に出て人に会うことを一切禁じられた。

「あんたが誰かに見られて通報(つうほう)されたら、私は警察に捕まるのよ。分かってる?」

母親は僕に度々そう言って聞かせた。
けれど、一方で父親は時々隠れて僕にお使いをさせる。
これはもちろん母親には秘密(ひみつ)だった。
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