第11話

文字数 995文字

ふと、リリとララが頭の中に登場した。
「リリ! ララ!」
僕は頭の中で2人に呼びかけた。

けれど、今日は2人の様子がいつもと違った。
いつものどこか知らない戦場じゃなく、目の前の駐車場のアスファルトの上に立っている。
さらに全然決闘をしようとする気配がない。
今日はどうしたんだろう?

2人はいきなり僕の方を向かって言った。

「俺が勝ったらホームセンターな!」
「俺が勝ったらホームセンターな!」

2人とも同じ事を言っている。
どういう事?

そうして、2人は電器店ではなくホームセンターの方に向かって走り出した。
え? え?
僕は訳も分からず、2人を追いかけた。

そうして、2人に(みちび)かれてホームセンターの中に入る。

ふと、リリの手がカマになった。
リリの頭に触角(しょっかく)()えた。
目が大きくなり、体が細くなり、腹から細い足が生えた。
(はね)()えた下半身が後ろに()き出し、リリは茶色いカマキリみたいになった。

ララには尻尾(しっぽ)が生えた。
首まわりにとさかのようなものが生えた。
目が突き出し、口がとんがり、舌が()びた。、
4つ足になって、ララは緑色のエリマキトカゲみたいになった。

リリの持っていた玩具のピストルがカマに変わった。
ララの持っていた玩具のピストルが包丁(ほうちょう)に変わった。
そして僕に向かって言う。

「俺が勝ったら父親な!!」
「俺が勝ったら母親な!!」

「どういう事?」

僕は2人に聞き返す。
2人は(おそ)ろしい答えを平然(へいぜん)と口にした。

「俺が勝ったら父親を(ころ)すんだよ!!」
「俺が勝ったら母親を殺すんだよ!!」

「ええ!?」

父親と母親を殺す。
そんな事……!!

「無理だよ!!」

「無理じゃねえよ!!」
「無理じゃねえよ!!」

「でもそんな事したら……」

「そうしないとお前の方が先に()ぬぜ!!」
「そうしないとお前の方が先に死ぬぜ!!」

僕はそうかもしれない、と思った。
けれど、僕には父親と母親のどちらも怖かった。

「けど、どっちか一方が残っても同じだよ……」

その僕の(つぶや)きに2人が初めて声を合わせた。

「じゃあ、両方殺せよ!!」

目の前の世界から父親も母親も両方いなくなる。
僕は不意(ふい)にその光景(こうけい)想像(そうぞう)して恍惚(こうこつ)とした気分になった。
なんて素敵なんだろう。

そうだ、父親も母親もいなくなったら施設に戻れるかもしれない。
そして、もう一度施設に戻ってあのおばちゃん達のところで(やさ)しくしてもらえるかもしれない。
僕には父親も母親もいない方がいいんだ!

「分かったよ!」

リリとララはにやりと笑うと姿を消した。
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