第12話

文字数 689文字

僕は店内を歩いた。
そして、刃物(はもの)()いてある金物(かなもの)のコーナーを探した。
不思議と笑いがこみ上げてくる。

「うふふふふふ……」

僕は笑いを(おさ)え切れずに声を()らしていた。
そうして金物コーナーまで来て、手が届く高さに置いてあるカマと包丁を手に取った。
そのカマと包丁を見て、その硬質(こうしつ)()の部分を見て思わずうっとりしてしまう。
僕はカマと包丁をリュックにしまった。
そして店を出ようとした。


不意に後ろから肩をつかまれた。
ホームセンターの警備員(けいびいん)だった。

「ちょっとリュックの中を見せてもらっていいかな?」

僕の体が一瞬(いっしゅん)(こお)りつく。
僕は肩をつかまれたまま、あっという間に警備員にリュックを取り上げられた。
取り上げられたリュックは包丁のパッケージやカマの()の部分が生地(きじ)にあたって不自然に出っ張っていた。
僕はその不恰好(ぶかっこう)なリュックを見て顔面(がんめん)蒼白(そうはく)になった。
思わず体をよじって()け出そうとするけれど、警備員に後ろから抱きかかえるような形で捕まえられて身動きが取れなかった。
僕の頭の中は後悔(こうかい)絶望(ぜつぼう)で真っ白になっていた。


ああ!!
両親を殺すなんて!!
悪い事を考えたから!!
バチが当たったんだ!!


警備員の人が僕の目の前で僕にしっかり見えるようにしながらリュックの中を確認した。
そして、中からカマや包丁を取り出した。
警備員が僕にゆっくりと(たず)ねる。

「やってきた時、リュックはスカスカだったよな? これはお店の中で取ったものだろう?」
「ちがいます!! ちゃんと買ったんです!!」
「そんなのお店のレジを調べればすぐわかる事だよ。とにかく事務室まで行こうか」
「いやだいやだ!!」

僕は警備員に引っ張られるようにして、事務室に連れて行かれた。
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