第9話

文字数 550文字

そうして、僕は家を出た。
今日はリリとララは出てこなかった。
僕には父親の言っていた電器店というのが分からなかった。
とりあえず、父親が言っていたらしい大きな道まで出た。
辺りを見回しても、緑色の看板なんて見えない。
お店はどこなんだろう……?

僕は通りの一方を向いて歩いていってみた。
けれど、行けども行けども緑色の看板というのが見えない。
いいほど歩いて、どうやら間違った方向に進んだらしいということに気がついた。
僕は(あせ)り、道を逆戻(ぎゃくもど)りした。
そうして、ようやく緑色の看板というのを発見(はっけん)した。
その電気店は近くまで行って見上げるとすごく大きな建物だった。
同じ敷地内(しきちない)にホームセンターも建っている。
僕はその敷地内の駐車場をうろうろし、中に入れずにいた。

今まで父親のお使いをするのにお金をもらった事なんてない。
それは、つまり(ぬす)んで来いという事だった。
だから、僕は今まで酒屋の煙草であったり、コンビニの商品であったりを父親の言いつけ通りに盗んできた。
もちろん盗みが悪い事だって分かっている。
施設のおばちゃんにも、悪い事はしたらダメだと言われた。
けれど、父親には逆らえなかった。
盗まなければ父親は不機嫌になり、僕に暴力を振るう。
特に喫煙(きつえん)常習者(じょうしゅうしゃ)である父親の煙草が切れた時の機嫌の悪さはひどかった。
だから、僕は父親の言う通りにした。
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