変化../麻弓
文字数 2,137文字
煮え切らない返事に苛立ちを覚えるが
あれだけ待ち遠しかった日がやっときたのだから、と
私は深呼吸をする
*ガチャン
と音をたて 玄関の鍵が開く
挨拶を済ませ 私は足早に自室へと向かう
仕事ばかりの私は 娘との関わり方が分からない
*コンコンコン
軽く身支度を済ませ
部屋を出ると 遼が玄関でしゃがみ込んでいた
部屋を出ると 遼が玄関でしゃがみ込んでいた
とゆっくり立ち上がる遼に私は耳打ちをする
青ざめる遼に微笑み
私はリビングへと向かった
食欲をそそられる匂いが リビングに漂う
強張った表情のままの遼
10年以上 私と理沙は待ち続けていた
この人が帰ってきてくれることを
女手一つ 不自由なく暮らせるようにと 仕事に打ち込んだ
仕事ばかりで 娘を構ってやることが出来なかったが
これからは
そう信じている
私の前で軽く俯いたままの彼
居心地の悪そうな遼に 私は会話を続ける
少しの沈黙のあと こちらを見た遼の瞳が私を捉える
彼の思いもよらない言葉に開いた口が塞がらない
*ガタッ
振りむいたそこには 怯えた表情の理沙が立っていた
理沙はゆっくりと椅子に腰を下ろす
遼は俯き口を開こうとしない
遼は再び口を閉じる
ふらふらと歩きながら 理沙は部屋へと戻っていく
リビングに遼を置き去りにし 私は自室へと戻る