変化../遼
文字数 2,750文字
*ガチャン
と音をたて 玄関の鍵が開く
ただいま とだけ伝えると麻弓は足早に部屋へと向い
その様子を寂しそうに女の子は見つめていた
俺に気が付き じっとこちらを見つめる姿は
麻弓に似ているものの 幼さを感じる
女の子の言葉にゆっくり頭を上げると
酷いことを言われる覚悟でいたが
口から出た言葉に拍子抜けする
そう言い 足早に奥の部屋へと消えていく
姿が見えなくなったことで 張りつめていたものが一気に緩み
その場へとしゃがみ込む
部屋から出てきた麻弓に声をかけられ
立ち上がった時だった
…そう、そうだ
あの女の子は
目の前に並べられた食事はどれもおいしそうな匂いを漂わせている
こんな気まずい空間でなければ もっと箸も進むのだが…
この言葉に胸が締め付けられる
ずっと寂しい思いをしてきたのだろう
俺にもう1つの家庭があり 娘がいることなんてあの2人は知らない
それに 俺は知らせるつもりもなかった
おかしいことを言っているのは分かる
散々放置してきた 彼女を目の前に 今の家族が大事だなんて
覚えているとも
忘れるはずがない
話したいことがあるの
仕事を終えた後 重い足取りで彼女の家へと向かう
と促されるままに封筒を開くと
そこにはエコー写真が入っていた
笑顔にあふれていた麻弓の顔は途端に崩れていく
娘は女の子と…
俺も麻弓との娘が一緒の高校だとは思っていなかったし
藍から泉本の名前を聞いた時は驚きを隠せなかった
子供たちに罪はないから 教えるつもりはなかった
2人が仲いいのは 藍からも聞いていたし
知ってしまえば関係は壊れてしまうだろうから
あまりの提案に顔が歪む
自分の娘の反応をみても こんなことがなぜ言えるのだろうか
頭が痛い
自分が蒔いた種だが 事を大きくするつもりはなかったのに
藍と慶子に伝わることがないよう どうにかしなくては
様子が少し変な感じしたけれど、大丈夫?
何かあったなら相談してください
お仕事は無理せずにね
お仕事が忙しいのかしら?
働いた後は疲れているだろうから、元気が出る様においっしい料理を作っておくわね
帰りが遅くなるのであれば、連絡ください
慶子 5時間前
不在着信 3件
着信履歴にメッセージ
どれだけの心配をさせてしまったのだろう