変化../遼
文字数 978文字
どうやったら2つの家庭と関係を続けながら 穏やかに暮らせるだろうか
俺の頭の中はそんな事ばかりで
*カチャン
なるべく音をたてないようにと 静かに鍵をあける
暗闇の奥から 小走りでこちらに向かう慶子
と 抱きつく慶子は少し震えていたのに
抱き返してやることができなかった
仕事で朝帰りだなんて 誰が信じるだろうか
と 安心した顔でほほ笑む慶子に胸が痛む
言えるはずがない 自分にもう1つの家族があるなんて
ハッとした表情でこちらを見る慶子の目元にはクマがある
そっと頭に触れる
と いつの間にか起きていた藍が
後ろからニヤニヤとこちらを見つめていた
後ろからニヤニヤとこちらを見つめていた
ああ やっぱりこんな他愛ない話ができる この2人が大事だ
やり取りに思わず笑みがこぼれ
心に引っかかっていたモヤなど 薄れ忘れかけていた時だった
*ピコンッ
穏やかな空気は 通知音によってシンとなる
ちょっと 帰るなら一言ちょうだい
鍵は開けっ放しだし 安全もなにもないわ
携帯を見つめながら話してしまったが故に
麻弓の名前が出そうになった
見ているなら返信ぐらいしなさいよ
それとも今 愛しい奥さんへの謝罪中かしら?
自室に向かい 改めてメッセージを見返す
既読が付くってことは 開いた状態ってことよね?
愛しい奥さんにこのメッセージみられているのかしら?
初めまして 奥村慶子様
何十年もの間 遼がお世話になりました…なーんてね
携帯をベッドへと投げ捨てる