真帆の呟き·第1話  美女と野獣とファザコン女子

文字数 1,464文字

私、尾道真帆。
今月、4月で18歳になる高校3年生。
趣味は部活の体操と読書とお洒落。
地元の私立の高校、親愛高校に通ってる。
この高校、私たちの学年までは女子高だったんだけど、1つ下の学年から1クラスだけ共学になったの。
それまでは普通科·看護科·調理科·スポーツ科だったんだけど、そこに進学科が新たに加わって、そのクラスが共学ってわけ。
そりゃ女子高じゃ彼氏とか出来ないし、共学の方がいいんだろうけど、今さら共学になったところで私ら3年からしたら、男子は後輩しかいないからねぇ…。しかも1クラスだけ。
私らにとってはほぼ女子高のままかな?
それに私、年下の男、興味ないの。
年上、それもだいぶ大人の男の人にしか惹かれない。
たぶん小さい頃に、父親亡くしてるから、その影響かな?
ファザコンなのかな。

小さい頃のパパの記憶。
柔道やってて、身体が大きくて、力強くて、でもすっごく優しいひとだった。
真面目で、実直で家庭が第一の子煩悩なひとだった。
きっとママもそんなところに惚れたんだろうね?
私も…、パパの事が大好きだった。
でも突然の出来事。
私が小学校に、入ったばかりの春。
交通事故。
仕事から車で帰宅中、居眠り運転のトラックに追突されてさ。
呆気なかったな。
あんなに強いひとだったのに。
季節はちょうど今頃、…春。
お葬式のとき、葬儀会館の桜が満開だったの覚えてる。
パパの命日は4月4日。
あと1週間で私の誕生日だったのよね。
初七日を終えた次の日に、ママは私の誕生日のお祝いをしてくれたんだ。
毎年必ず3人でしてた誕生日を思い出して泣いたの覚えてる。
今でも誕生日はあまり好きじゃない。
なんか悲しい想い出になっちゃってるからね。
あ、あとお花見も好きじゃない。
お葬式を連想してしまうから。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている」
文豪·梶井基次郎の小説のコトバ。 
ホント、そうかもね…。

私、それから柔道始めた。
パパが指導員してた近所の道場で。
パパの面影を感じれたから。
それまでは、バレエ教室に通ってたんだけどね。
こっちはママの影響。
ママは若いときはバレエやってたんだって。
そういえばうちのママ、結構美人なんだよね。
バレリーナと柔道家…、美女と野獣だよね。
ディズニーの「美女と野獣」は小さい頃大好きだった。
なんかパパとママみたいって思ってた。
私はバレエも続けながら道場に通ってた。
どちらも中学までは続けたから、そこそこは上達したかな。
でも、高校入ってからはどちらもやめて、今は学校の体操部で一応レギュラー選手やってる。
高校入るまでは、体操なんてやったこと無かったけど、ママに仕込まれたバレエの経験…、これはかなり役にたってるのかな?
体操からバレエに転身する選手ってのは結構いるみたいだから共通点多いんだろうね。
柔道は…、これが以外に役に立ってるんだ。
バレエだけだったら体操に必要なパワーは無かったってのもあるけど…。
でも、本当に柔道が役に立つのは、練習とかで技を失敗するとき。
だって、体操って鉄棒とか平均台で失敗したら、かなりの高さから落下するんだよね。
その度に怪我してたんじゃ体が持たないよ。
フィジカル?って言うのかな?怪我しない強い身体じゃなきゃ、体操の技って習得できない。
そう言う意味では、かなり役に立ってると思うよ…柔道の受け身。
きっとパパが守ってくれてるんだろうね。
あの人、凄く子煩悩だったから(笑)
ママのバレエとパパの柔道、今の私にはどっちも役にたってる。
だからさ、体操している時って、私の中でもう一度ママとパパが出会えた様な気がするんだ。
なんか嬉しいんだよね。
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