第13話:博多で高度臨床検査センター設立へ

文字数 2,566文字

 夏、大変な暑さで患者さんに少しでも快適に過ごしてもらう様、待合室に冷凍庫を置いて凍った冷却剤を小タオルにまいて使い終わると横に置いてもらうサービスをすると好評だった。こう言う細かいアイディアを考えるあたりは、さすが元秘書と言った感じで泉田が田丸さんを我が妻ながら偉いと思った。やがて2017年10月12日夜20時、丹沢先生から召集がかかり新横浜の個室のある焼き鳥屋に集合した。

そして最初、丹沢先生が泉田に結婚おめでとうと言った。今晩、集まってもらったのは先日の結婚式で泉田の奥さんの田丸鈴江さんの実家が九州でも有名な田丸病院だとわかり色々調べたら博多の医師会の会長を務めていたことがわかった。そこで泉田君に九州、博多で高度臨床検査センターの設立委員会を作ってもらえないだろうかという事だと語った。それを聞いて、泉田が
「そんなむちゃな、ちょっと待ってと言った」。

 部屋の外に出て奥さんに電話して用件を話すと、こっちに来て話を聞いてくれる事になった。少しして奥さんの泉田鈴江さんが入ってきた。そして、ご用件を伺いたいと言うと丹沢先生が単刀直入に九州、博多で高度臨床検査センターを設立したいのだが協力してもらいたいと言った。わかりました、ただ、急にという訳にはいきません。こういう事は下手に動いて失敗しては元も子もないし、こちらの真意を正確に伝えて両者でじっくり話し合ってから決めていく事です。

 私も、この仕事をして高度臨床検査センターの意義、意味、良さは十分理解してるつもりですと、私も我が故郷でこう言う素晴らしいシステムを作るのは博多周辺の人達にとっても意義あると考えてますと言った。どうでしょう最初に私が父にわかり易く今やっている仕事の内容、その意義、患者さん、ドクターに取ってのメリットを説明し、それを終えてから丹沢先生が博多の私の父や博多の医師会の先生方とお会いになると言うのでは、いかがでしょうか言った。

 なる程、その方が確実で着実に事を運べそうですねと納得した。佐藤さんも泉田も同意した。では来週の金曜10月20日に実家に帰り話してきますと言った。そして焼き鳥を食べて今晩は、そのまま解散となった。自宅に帰って泉田が悪いな君まで私達の計画に引き込んだみたいでと言うと、そんな事ない。高度臨床検査センターの設立は患者さんやお医者さん、その地域に住む人にとって良い事だと思うから、是非、作って欲しいと思っていますと言った。

 だから変な話にならない様に順序立てて失敗しないように動く事が肝心なのよと、むしろ奥さんに泉田が説得された。あんたは、偉いと、言うと、私はこう見えても、早稲田大学の弁論部にいたのよいうと、おー恐!。下手に夫婦げんかもできないと言うと2人で大笑いした。2017年10月20日、泉田鈴江さんは18時に仕事を終えて、最終の博多行き新幹線で博多駅に23時頃に到着し、実家にタクシーで帰った。

 翌朝、土曜日で病院が休みだったので父の田丸徳一さんに今、新横浜で高度臨床検査センターの仕事をしてる事、旦那さんの泉田が新宿の高度臨床検査センターの丹沢センター長と静岡の医師会の佐藤さんの3人で昨年、新しく新横浜で高度臨床検査センターを設立した話。費用の4億円のうち1億円を丹沢センター長が5千万円ずつを佐藤さんと私の旦那の泉田が出し、2億円をソーシャルレンディングの会社が投資家に公募して集めた事を話した。

 そして高度臨床検査センターの存在意義は日本では以前から大型病院で救急、高度医療、高度な臨床検査、CTスキャン、MRIなども行い全部を一元化して巨大病院となっていた。最近になって病気の軽い患者は開業医。大きな手術を大病院で行っても、その後のフォローはかかりつけ医「開業医」と分業化している。

 その点で、もし高度臨床検査センターが民間で駅との近くの便利場所にあって気軽に高度臨床検査を受診して、そのデータを持って大病院や開業医に行き、その後の治療を決めるという合理的な医療体制をとれる。また博多も含め地方都市では大病院の数も少ないし開業医も少ない。更に高度医療の提供するための独立した高度臨床検査センターがない。

 だからと言って開業医が数億円の機材をリースしても患者さんの数が少なければ高度な高価な医療検査機械、CTスキャン、MRIのリース代金の回収すらできない。これを解決するためにも医療機関と独立した高度臨床検査センターが必要で気軽に高度な検査が受けられるのは住んでいる住民にとって大きな安心になると説明すると言いたいことは良くわかった。

 確かに博多と北九州は人口も多いが医療システムは首都圏に比べて大きく遅れているのは事実だし何とか追いつきたいと考えているが高度臨床検査センターの存在意義も良くわかったと言った。そこで現場での経験が豊富な新宿高度臨床検査センターのセンター長の丹沢先生に来てもらって博多の医師会ででも説明会を開いてもらえますかと聞くとわかったと言ってくれた。

 医師会に、あたってあげようと言ったが、前もって高度臨床検査センターの存在意義な度も書いたわかりやすいパンフレットが欲しいなと言い20部提供してくれと言われた。そこで聞いてみますと答えた。最後に高度臨床検査センターは資材の費用だけでも3億円は下らないだろう、設置する場所が東京だったら6から8億円、こんな大金、地方では調達できない100万人以上の大都市でも難しいと言った。

 高度臨床検査センターが首都圏でしかできてないのもよくわからるが、できたら全国の100万人以上の大都市には作って欲しいなと思うよと静かに言った。長年、博多で医療をして見ると、首都圏との格差は否めないものがあり何とか追いつきたいというのも本音だという事も知って欲しいなとつぶやいた。その意味について泉田鈴江は痛いほどわかると言うと
「涙を浮かべて、東京もんには負けやせんと悔し泣きした」。

「お前は頭も良いし弁舌もたつ、もし男に生まれたのから太か男のなったろうに」と言うと今の時代、男、女は関係ない。東京に負けない高度臨床検査センターを作るんだと泉田鈴江が言うと、わかった協力してやろうと肩をたたいてくれた。
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