第16話 最後の願い

文字数 1,200文字

「あなたがいなくなれば
全て上手くいく
思い通りになる」
「こんなことして
ただですむとおもってるの?」
「しかたないのよ。望みを叶えるために
あなたは必要ない」










































──────






柴山景子40歳 柴山透の妻である。


ある夜、柴山が珍しく早く帰宅した


食卓には、栄養バランスのとれた、彩りの良い食事が、並べられていた。







「おかえりなさい。
どうだった?今日は?
珍しく早い帰りね。
仕事が一段落ついたの?」



そう話すと、手馴れた感じで柴山のジャケットをハンガーに掛けて、埃取るグッツで、クルクルっとジャケットを綺麗にする。



柴山が疲れたのか ドスンっとソファーに埋もれるように寝っ転がる。そして靴下を脱ぎ、ポイッと床に投げ捨てる。



景子は、靴下を拾い上げ、洗濯場に持っていく





「はい、おつかさまです」


そして缶ビールを渡す





「ご飯できてるわよ?
たべる?」



「あーぁ」



ぶっきらぼうな返事である。








結婚生活も長くなると、相手が空気のようになるのだが、 それでもいつまでも、優しさや寄り添う心を意識して持っていけば、付き合いたての新鮮さはないにしろ、それでもこの人は素敵だなと思える部分を見つけやすくなり、せわしなくすぎる日々の中、時々は穏やかでささやかな幸せを感じることができ、円満に時を過ごせるのだが、、











柴山は
もうそういう気持ちが
消えてしまっているようにみえる









「最近あなたの会社、三人も亡くなって
ぶっそうね。。
あなたも気をつけてね。。」







「あーぁ」





「ねぇ?おいしい?」




「ふーーーん。」





「今日ね商店街の惣菜屋さんで、唐揚げ買ってきたの。そこね、ポテトサラダも手作りで、美味しいのよ。



美味しいでしょ?」







「あーぁ。」




モグモグ食べ終わると
柴山は、風呂に入って、すぐ自分のベットに横になった。













毎晩帰りが遅くて、最近夫婦の夜の営みもなく
寂しかった景子は





今夜はもしかしたらと、少し胸を膨らませ、期待していた












最近ランジェリーショップで買ってみた 薄いピンク色の花柄の透け感のあるレースのスリップワンピースを着て
寝室に行くと、柴山は寝ていた。









景子が柴山の横に寝て、耳元で声をかける



















「ねぇ あなた 最近 その してないじゃない、、?
今日は時間もあるし、、」







柴山が寝返りを打って、景子に背を向ける


















「疲れてるんだ ごめん」




































誰の子供にも遊んでもらえないフランス人形みたいに、景子はベットの上で、座り込んで、しばらく、ぼーっとしていた。









ベットには二人いるのに、気持ちはひとりぼっちだった。




























窓から青白く光る月光が差し込み
景子の横顔を照らしている。





















顔半分は月光の明かりで青白く、もう半分は闇と同化して まるで二重人格のように、二人の人間が重なって一人になっているかのように、不気味に見える。






























「やっぱり、、、、 そうよね。」





景子の頬に冷たい涙が流れた








「もうあなたのことで 泣かないわ わたし。
これが最後の涙よ。」




景子はそっと手で涙を拭った。













つづく
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