第5話 オアシス
文字数 1,567文字
純子は
時々癒しの時間が必要だった。
柴山 透 45歳。
彼が山本社長のオアシスだ。
2週間に1度くらいのペースで2人は、ホテルの高層階のバーで落ち合う。
柴山は、From hereの 経理部の部長だ。
柴山は結婚している。いわゆる不倫関係だ。
純子の『忘れられない男』が柴山だ。
会社で純子の テキパキとした有能な仕事ぶりをいつも傍でみていて、
2人っきりになると、純子は女っぽくなり自分に甘えてくる、まるで違う両方の純子を知っている
柴山は男の優越感に浸っていた。
「はぁーあ♡」
「大きいため息だねぇ」
「今度のプロジェクト、結構周りの業者からクレームが多くてね、経費をできるだけ押えて、やってるから、もっと材料を高く買い取ってくれとか
くるのよ、、」
「そうだな、経理も、何度も訂正された 請求書がメールで届くよ」
純子の横顔は色っぽく、元々美人なのだが
ちょっと疲れ気味で、弱っているその姿は、
柴山を 俺がそばにいて 元気にさせてあげたいという気持ちにさせた。
柴山と純子は入社してから20年以上の付き合いになる。お互いのいい所も悪い所も知っていて、どちらかが弱っている時はどちらかが支えると言った具合で、厳しかった入社5年目くらい目までの時代も、そのあと自分達が前に立って会社を動かしていった時代も、ずっと2人は支え合いながらやってきた。
プライベートでは、可愛い奥さんを柴山が貰った時は、純子は柴山には見せてはいなかったが、かなりショックを受けていて、しかし、仕事に夢中になることで、その悲しみを跳ね除け、過ごしていた。そんな時代もあった。
柴山が、女好きで、結婚前も結婚後も、色んな子に手を出してきたことも、ずっと純子は見て来た。(あの性格は直らない)、順子はそう思っていたから、(あー、またか)と、母親が息子を見るような感情で、いつも近くで柴山を見て来た。
「マスター、チャイナブルーつくってくださる?」
コリンズグラスの中に、ライチとグレープフルーツジュース、トニックで割った なんとも水色と黄色の滲んだような少女が好むような乙女チックな色合いの飲み物を頼む。
かわいいなと柴山は思った。
柴山はいつものスコッチのグレンフィディックのソーダ割りだ。
「純子、今日はこの後も一緒にいれる?」
「もちろん、いつもそうしてるじゃない。」
「いや、最近忙しそうだからさ、どうかなと思って」
「大丈夫よ。忙しい時ほど疲れてる時ほど、一緒にいたいものよ。あなたとの時間があるからこそ、私はここまで成長できたのだから、
あなたの方こそ、奥さんは大丈夫なの?」
「あーぁ あいつは大丈夫だよ。毎月ある程度のお金を渡してるから、好きなように自由に生活してるさ。女としての魅力はもうない。家事だけやっといてくれれば、それでいい。」
「なんか酷い言い方ね、、 少し可哀想な気もするわ」
「それじゃぁ、今夜はやめときますか?」
純子は柴山の肩に頭をかたむけ寄りかかる。
「チャイナブルーです どうぞ」
「マスターありがとう」
チャイナブルーに、スライスレモンと赤いチェリーがピックに刺さって、グラスの上の部分に飾られてある
純子は 嬉しそうに1口飲んだ。
「これが私のご褒美の時間なの。」
柴山はテーブルに置いてあったホテルの部屋のキーをジャケットのポケットに入れると
「マスター またきます、お勘定を」
「柴山様、いつもありがとうございます」
そうして、2人はエレベーターに乗って、上の階の部屋へ足取りを合わせ、向かった。
エレベーターのドアが閉まる。
我慢できずに、エレベーターの中で2人は慣れた様子で、長いキスをした。もう何年もこうして、過ごしてきた。お互いが、どんなアプローチが好きで、どこが感じやすくて、なにに興奮して、何を嫌うか、全てを知り尽くした長い関係。
その数日後、
山本純子は何者かによって殺された。
つづく
時々癒しの時間が必要だった。
柴山 透 45歳。
彼が山本社長のオアシスだ。
2週間に1度くらいのペースで2人は、ホテルの高層階のバーで落ち合う。
柴山は、From hereの 経理部の部長だ。
柴山は結婚している。いわゆる不倫関係だ。
純子の『忘れられない男』が柴山だ。
会社で純子の テキパキとした有能な仕事ぶりをいつも傍でみていて、
2人っきりになると、純子は女っぽくなり自分に甘えてくる、まるで違う両方の純子を知っている
柴山は男の優越感に浸っていた。
「はぁーあ♡」
「大きいため息だねぇ」
「今度のプロジェクト、結構周りの業者からクレームが多くてね、経費をできるだけ押えて、やってるから、もっと材料を高く買い取ってくれとか
くるのよ、、」
「そうだな、経理も、何度も訂正された 請求書がメールで届くよ」
純子の横顔は色っぽく、元々美人なのだが
ちょっと疲れ気味で、弱っているその姿は、
柴山を 俺がそばにいて 元気にさせてあげたいという気持ちにさせた。
柴山と純子は入社してから20年以上の付き合いになる。お互いのいい所も悪い所も知っていて、どちらかが弱っている時はどちらかが支えると言った具合で、厳しかった入社5年目くらい目までの時代も、そのあと自分達が前に立って会社を動かしていった時代も、ずっと2人は支え合いながらやってきた。
プライベートでは、可愛い奥さんを柴山が貰った時は、純子は柴山には見せてはいなかったが、かなりショックを受けていて、しかし、仕事に夢中になることで、その悲しみを跳ね除け、過ごしていた。そんな時代もあった。
柴山が、女好きで、結婚前も結婚後も、色んな子に手を出してきたことも、ずっと純子は見て来た。(あの性格は直らない)、順子はそう思っていたから、(あー、またか)と、母親が息子を見るような感情で、いつも近くで柴山を見て来た。
「マスター、チャイナブルーつくってくださる?」
コリンズグラスの中に、ライチとグレープフルーツジュース、トニックで割った なんとも水色と黄色の滲んだような少女が好むような乙女チックな色合いの飲み物を頼む。
かわいいなと柴山は思った。
柴山はいつものスコッチのグレンフィディックのソーダ割りだ。
「純子、今日はこの後も一緒にいれる?」
「もちろん、いつもそうしてるじゃない。」
「いや、最近忙しそうだからさ、どうかなと思って」
「大丈夫よ。忙しい時ほど疲れてる時ほど、一緒にいたいものよ。あなたとの時間があるからこそ、私はここまで成長できたのだから、
あなたの方こそ、奥さんは大丈夫なの?」
「あーぁ あいつは大丈夫だよ。毎月ある程度のお金を渡してるから、好きなように自由に生活してるさ。女としての魅力はもうない。家事だけやっといてくれれば、それでいい。」
「なんか酷い言い方ね、、 少し可哀想な気もするわ」
「それじゃぁ、今夜はやめときますか?」
純子は柴山の肩に頭をかたむけ寄りかかる。
「チャイナブルーです どうぞ」
「マスターありがとう」
チャイナブルーに、スライスレモンと赤いチェリーがピックに刺さって、グラスの上の部分に飾られてある
純子は 嬉しそうに1口飲んだ。
「これが私のご褒美の時間なの。」
柴山はテーブルに置いてあったホテルの部屋のキーをジャケットのポケットに入れると
「マスター またきます、お勘定を」
「柴山様、いつもありがとうございます」
そうして、2人はエレベーターに乗って、上の階の部屋へ足取りを合わせ、向かった。
エレベーターのドアが閉まる。
我慢できずに、エレベーターの中で2人は慣れた様子で、長いキスをした。もう何年もこうして、過ごしてきた。お互いが、どんなアプローチが好きで、どこが感じやすくて、なにに興奮して、何を嫌うか、全てを知り尽くした長い関係。
その数日後、
山本純子は何者かによって殺された。
つづく