第12話 潜入捜査

文字数 3,544文字

テーブルの上にある
長谷川結愛の携帯のバイブが振動する。







携帯画面に知らない番号が載る








あまり躊躇わずに出た
結愛はいつもそうだった。









結愛「もしもし長谷川です。」





高塚「長谷川 結愛さんのお電話でよろしかったでしょうか。はじめまして、突然お電話さしあげて、申し訳ございません。私、弁護士の高塚と申します。この度は柴山透様と奥様の双方が離婚されるという気持ちに固まりましたのでご報告と、これから事務処理手続きなど私が担当させて頂きます。高塚と申します。

柴山様から、離婚成立後、あなたと再婚するというご意志を確認致しまして、これからいくつか手続きをしていただくことになりました。まずは、長谷川様のお気持ちも確認したく、お電話で申し訳ありませんが、ご連絡をさせていただきました。もし、本当に柴山様と同じお気持ちでいらっしゃるのなら、長谷川さんの同意書等が必要となって参ります。柴山様と奥様は、もう既に別々に暮らしており、離婚成立までは、ご夫婦の直接当人同士がお話することは出来ず、長谷川さんに関しましても私を介して今後も経過報告などをさせていただくことになりました。つきましては、直接お会いして、同意書、承諾書等に印鑑を頂きたく、長谷川様の住まわれてるお住いまで、お伺いしたく存じあげます。どうぞよろしくお願い致します」



結愛「そうですか、ついに離婚が決まるんですね」


結愛は、飛び上がりそうなほどの嬉しさを隠して、冷静に話した。



結愛「わかりました、私も、柴山さんと同じ気持ちです。 彼と結婚する気持ちでいます。高塚さん、明日の午後14時空いてますので、いらっしゃってください。 では失礼致します。」









そうして電話を切った。

結愛は、なんの疑いもなかった。

弁護士が来て、離婚の話が進めば、

自分はやっと柴山と一緒になれると浮かれた。





























そして
その数日、
長谷川 結愛は 何者かによって 殺された。



















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沙織「同じ会社内で、1ヶ月の間に三人殺されるなんて、おかしいわね。きっと 三人と繋がってる共通の人物がいるはず。
バパ、私、時間空いてるし、潜入してみるわよ。From hereに。社内の実態を潜入調査をするわ!」




そう意気込むのは、柳林沙織である。





柳林「ううーーん、大丈夫か?
心配だなぁ」





本間「沙織さんに何かあったら汗! 俺も一緒に潜入を、、」





柳林善次郎と本間典健は、
静岡県警の刑事である。
今日も行きつけの『スナックゆみ』に、
娘の沙織も連れて
3人で来ている。




沙織「パパも本間さんも、心配性なんだから、、
大丈夫よ。」




ママ「あら? なんの話ししてるの。
なんだか面白そうね」



スナックゆみのママが、三人にお通しを出しながら、沙織ちゃんが潜入捜査をするって話が気になって、ソワソワしながら言う。今夜のお通しは、まぐろの昆布巻きだ。



柳林「ママ、、、遊びじゃないんだよ。」



柳林がママに優しくたしなめるように言う。




ママ「 善ちゃん、ごめんなさい、、
だけど、たしかに沙織ちゃんの言う通り三
人に共通した人物が怪しいと私もそんな気
がするわ。世間ではあのトップデザイナ ーが亡くなったって、大騒ぎよ。」




本間「山本純子が、自宅で水死体で見つかったのは 死亡推定時刻は0:30頃。 争った形跡があり、鈍器で頭部を殴られています。 次期社長候補の江川は、社長候補と言っても、山本が健在な限りは自分が社長になれることは無い、山本の存在がうっと惜しかったんじゃないかと。江川恵理子を疑ってみたのですが。
しかしその日、江川にはアリバイがあって、タイムカードの退勤時間が1:52。山本純子が自宅で殺された時は、江川は会社にいたということになります。そして証人もいて、柴山透。今一番力を入れているプロジェクトの作業を一緒に江川とやっていたと言うんです。」






ママ「そんな遅い時間に、、?」






沙織「プロジェクト?」







ママ「密会の匂いがプンプンするわね。」
ママが刑事ぶった口調で言う







沙織「不倫じゃないの?」







本間「いや、しかし、柴山と奥様の仲良しぶりは社内でも有名で、奥様が時々会社に来ては、みんなにお菓子を差し入れしたり、あんな風に結婚したら仲良しでいたいって社内の独身女性達はこぞって言っているようです。」






ママ「ふーーん でも
そういう人ほど、実は、演技で、嘘つきだったり、夫婦仲上手くいってなかったりするのよね」







柳林「しかし江川もその後、亡くなる。自殺だ。会社の給湯室で。山本社長を殺した犯人は江川で、心が苦しくなって自殺した。遺書が置いてあった。犯人は江川だった、一件落着のようにみえた。しかし、。その後デザイナーの長谷川結愛も殺される。真犯人がいることになる。その真犯人が3人を殺したのか、それとも、山本社長を殺したのはやはり江川で、江川は自殺して、長谷川結愛だけが、誰か真犯人に殺されたのかは、、、まだ分からない。」






ママ「社内で社長の座を狙ってる人間の犯行かしら。、」






柳林「デザイナーの長谷川結愛は社長になりたいということでもなかったから、そうなると社長の座を犯人が狙っているわけでもないかもしれない。」






ママ「そうねぇ。」







沙織「山本社長と江川さんが殺された時、長谷川結愛は何してたの?」




本間「山本社長が殺された時はパリに2週間行っていて、日本にはいません。江川が殺された時は、長谷川はもう日本に帰ってきていたんですが、新しいデザイン画の作成があったから、会社に来ないで自宅で作業をしていたそうなんです。江川と長谷川は、同じ会社で働いていますが、ほとんど接点はなく、そもそも、江川を殺す動機がありません。長谷川は社長になりたいとは思ってなかったし、もっと言うと、江川が新社長になったら、私も新しいデザインをどんどん考えて、江川さんとこの会社を守っていきたいと成長させたいと長谷川は言っていました。」






ママ「そう、それじゃ長谷川結愛は犯人じゃないわね。 一体誰が犯人なのかしら。。それにしても、その犯人、、地獄に落ちて、針山を歩くことになるわね、、、」



遠い目をするママ。






柳林「ママ、、、ママ、、、、、」



ママ「あっ、ごめんなさい汗 ぼーっとしちゃった笑」





沙織「ねぇ、その柴山っていう人、怪しくない。やっぱりそんな深夜に。。もし江川取締役と不倫関係にあったとしたら、


それで、山本社長とも長谷川結愛とも関係があったとしたら、、?」






ママ「三人と繋がってる共通の人物となるわね。」


ママが人差し指を立てて、刑事ぶる。






沙織「柴山は、社長の座を狙っていた。山本社長と親密だったし、会社の内部事情やこれからの経営の進め方も傍で聞いて分かっていたから、自分が社長になったら会社運営の仕方も心得ていた。江川取締役も次期社長の座を狙っていたから、柴山にとってみたら、邪魔な存在だった。デザイナーの長谷川さんは、柴山にぞっこんだったから、柴山は長谷川さんのことうっとおしくなって、奥さんにも不倫のことバレたら困るし、口封じのために。 しかしデザインの才能はある。柴山が長谷川さんのデザインを盗んではいないかしら、、? そういう理由で三人を殺害したんじゃないかしら?」







本間「確かに先日の株主総会で、江川恵理子が次期社長に就任することに決定になったのですが、副社長を経理の柴山さんを推薦したいと江川恵理子が発言したそうです。柴山さんは勤務歴も長く、色々な部署の経験もあり、人格も素晴らしいので、ぜひ副社長になり、二人で新たなステージへ、From hereを牽引して行きたいと熱く語ったそうです。何か江川にあった時は、すべてを柴山さんに引き継ぐという話で、株主も納得したらしく 会は終わったそうです。」






ママ「そうなのね、、なんだかますます、怪しいわね」






沙織「私、柴山をマークしてみるわ!」






本間「沙織さん、俺も一緒に、、」






柳林「沙織、気をつけるんだぞ。何かあったらパパがいつでもすぐ助けに行くから、携帯をいつも持ち歩くんだぞ」






柳林「ママ また来るよ」






柳林は、本間も沙織もいてくれるが、それでも俺が最終的にはこの難題事件を解決しなければと重責を感じている。





柳林は自分の不安な気持ちや弱音なんかは普段は口にせず、柳林の帰っていくその後ろ姿、背中に孤独との戦い、哀愁、決意みたいなものを ママは感じた。






ママ「..善ちゃん、、善ちゃんも気をつけてね。
うまくいくように
わたすぃ祈ってるからね..
また 来てね

いつでも わたすぃ待ってるから。」








カランコロン










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