第9話 天才が望む平穏な暮らし
文字数 1,862文字
期待の天才新人デザイナー。
10代のとき、各賞を総なめ。大学在学中も わずか20歳でパリコレにも出て、世界の天才デザイナー100人の中にも選ばれ、色彩と配色、鋭い感覚を持ち合わせたデザイナーが現れた、旋風を巻き起こす!新時代到来。と世で騒がれている。ファッション雑誌の編集にも携わり、高級ブランドの香水のポスターなどのデザインも手がけた。
入社して、6年目の From hereの専属トップデザイナー、長谷川 結愛(はせがわ ゆあ)28歳は、柴山透に本気だった。
白色に近い金髪のボブヘアーで、毛先はピンク色に染めて遊んでいる。少し前に口元に一つピアスを開けたのだが、柴山が「おじさんには、痛々しく見えるからやめて欲しい」と言ったら、すぐに言うことを聞いて、次会った時は付いていなかった。
色白で きめ細かく、20代の水を弾くような潤いに満ちた肌は、柴山を夢中にさせた。
グレーブラウンのカラコンを入れていて、黒目がクリクリのアイドルみたいなベビーフェイスだ。
口紅はヌーディーなベージュピンクで、アイカラーも濃くはなく、まつ毛だけはしっかりエクステをして、クールビューティーといった感じの冷たさの中にかわいらしさを残しているメイクをしている。
化粧は、顔がパレットみたいなもんで、配色センスや筆の使い方が上手なほど、絵を描くのと同じように、化粧も上手いというわけだ。天才のメイクアップというわけだ。多分結愛はメイクアップアーティストをやらしても、その世界でトップクラスで通用する。 何をやらせても 時代の波に乗っている人間は うまくやりこなすものだ。
一夜を共に過ごすと
どうしてもメイクが落ちてくる。
しかし柴山は知っていた
結愛はメイクが落ちた素顔も可愛いということ。
「奥さんと別れて欲しい。」
「できないよ」
「どうして? 私の事、愛してないの?」
「愛してるよ。」
「それじゃぁ、奥さんと別れて」
「結愛ちゃん、これはゲームなんだよ」
「俺たちは時々会うだろ。
嬉しいでしょ?
そしたら
君はデザインを描くことをまた頑張れる。
俺は経理部の仕事をまた頑張れる。
2人のどちらでも、頑張れなくなったら、ゲームオーバーなんだよ。」
「わたし、そんなゲームしたくない。。」
結愛が柴山の顔の近くまで寄って、柴山の右腕にしがみつく。
まるで話してくる感じが、終始、子猫のような甘えた声と仕草で、俺はこの子が本当に時代の先端を行く鋭いアート感覚を持った天才デザイナーなのかと疑ってしまう。
「社長も、江川取締役も、死んじゃった..
怖い.. 私いつも2人の近くにいれて、嬉しかったんだ。私が描いたデザインをいつも褒めてくれた。ちょっと大変なことがあっても、2人が応援してくれたから頑張れてきた。
なんだか 取り残されて一人ぼっちになってしまった気分。。仕事もやる気なくなっちゃってきたし。。ここのところ喪失感と虚無感に襲われているの。」
「わかるよ。俺も気味が悪いよ、武者震いがする。会社で続けて2人も亡くなり、しかもよく知っている二人。早く警察にこの事件を解決してもらいたい。 俺も二人のことを思い出すと、、生きるのが最近かったるくてね。体が重いんだ。どうも気力がでない。」
「柴山さんが奥さんと別れて、私と一緒になってくれれば、わたし生きていく目標が見つけれそう。。
でも、結愛 わかるんだ。きっともうすぐ柴山さんは私と一緒になるって。」
(なんなんだ、その根拠の無い自信は。重いな.. )
柴山は、結愛との温度差に困惑して、少しだけめんどくさいと思った。
(デザイナーになりたくてもなれない人間は、世の中に大勢いて、しかもなれたとしても、活躍する才能を持てる人間は極わずか、ひと握りだ。
自分が神から与えられた才能が、どれだけ凄いものなのか、この子猫は分かっていない気がする。せっかく世界に認められているのに。。)
「結愛ちゃん、君の才能がこれからも伸びて開花することを 俺は望んでいるし、応援もする。
社長と江川取締役はあんな事になってしまったけれど、、、君には 生きていて欲しいんだ
だから とりあえず
今夜いっとく?」
人間の根本的な性格は、悪い癖は、残念ながらそうそうには直らない。柴山は、半分ふざけた いたずらっ子のような、口元が緩んだいやらしい表情で、結愛の目の前で、ホテルの部屋のキーをぶらつかせる。
結愛は 微笑みながら嬉しそうに こくりと頷いた
── わたしは しばやまさんが いっしょにいてくれるなら なんにもいらないの なんにも──
つづく
10代のとき、各賞を総なめ。大学在学中も わずか20歳でパリコレにも出て、世界の天才デザイナー100人の中にも選ばれ、色彩と配色、鋭い感覚を持ち合わせたデザイナーが現れた、旋風を巻き起こす!新時代到来。と世で騒がれている。ファッション雑誌の編集にも携わり、高級ブランドの香水のポスターなどのデザインも手がけた。
入社して、6年目の From hereの専属トップデザイナー、長谷川 結愛(はせがわ ゆあ)28歳は、柴山透に本気だった。
白色に近い金髪のボブヘアーで、毛先はピンク色に染めて遊んでいる。少し前に口元に一つピアスを開けたのだが、柴山が「おじさんには、痛々しく見えるからやめて欲しい」と言ったら、すぐに言うことを聞いて、次会った時は付いていなかった。
色白で きめ細かく、20代の水を弾くような潤いに満ちた肌は、柴山を夢中にさせた。
グレーブラウンのカラコンを入れていて、黒目がクリクリのアイドルみたいなベビーフェイスだ。
口紅はヌーディーなベージュピンクで、アイカラーも濃くはなく、まつ毛だけはしっかりエクステをして、クールビューティーといった感じの冷たさの中にかわいらしさを残しているメイクをしている。
化粧は、顔がパレットみたいなもんで、配色センスや筆の使い方が上手なほど、絵を描くのと同じように、化粧も上手いというわけだ。天才のメイクアップというわけだ。多分結愛はメイクアップアーティストをやらしても、その世界でトップクラスで通用する。 何をやらせても 時代の波に乗っている人間は うまくやりこなすものだ。
一夜を共に過ごすと
どうしてもメイクが落ちてくる。
しかし柴山は知っていた
結愛はメイクが落ちた素顔も可愛いということ。
「奥さんと別れて欲しい。」
「できないよ」
「どうして? 私の事、愛してないの?」
「愛してるよ。」
「それじゃぁ、奥さんと別れて」
「結愛ちゃん、これはゲームなんだよ」
「俺たちは時々会うだろ。
嬉しいでしょ?
そしたら
君はデザインを描くことをまた頑張れる。
俺は経理部の仕事をまた頑張れる。
2人のどちらでも、頑張れなくなったら、ゲームオーバーなんだよ。」
「わたし、そんなゲームしたくない。。」
結愛が柴山の顔の近くまで寄って、柴山の右腕にしがみつく。
まるで話してくる感じが、終始、子猫のような甘えた声と仕草で、俺はこの子が本当に時代の先端を行く鋭いアート感覚を持った天才デザイナーなのかと疑ってしまう。
「社長も、江川取締役も、死んじゃった..
怖い.. 私いつも2人の近くにいれて、嬉しかったんだ。私が描いたデザインをいつも褒めてくれた。ちょっと大変なことがあっても、2人が応援してくれたから頑張れてきた。
なんだか 取り残されて一人ぼっちになってしまった気分。。仕事もやる気なくなっちゃってきたし。。ここのところ喪失感と虚無感に襲われているの。」
「わかるよ。俺も気味が悪いよ、武者震いがする。会社で続けて2人も亡くなり、しかもよく知っている二人。早く警察にこの事件を解決してもらいたい。 俺も二人のことを思い出すと、、生きるのが最近かったるくてね。体が重いんだ。どうも気力がでない。」
「柴山さんが奥さんと別れて、私と一緒になってくれれば、わたし生きていく目標が見つけれそう。。
でも、結愛 わかるんだ。きっともうすぐ柴山さんは私と一緒になるって。」
(なんなんだ、その根拠の無い自信は。重いな.. )
柴山は、結愛との温度差に困惑して、少しだけめんどくさいと思った。
(デザイナーになりたくてもなれない人間は、世の中に大勢いて、しかもなれたとしても、活躍する才能を持てる人間は極わずか、ひと握りだ。
自分が神から与えられた才能が、どれだけ凄いものなのか、この子猫は分かっていない気がする。せっかく世界に認められているのに。。)
「結愛ちゃん、君の才能がこれからも伸びて開花することを 俺は望んでいるし、応援もする。
社長と江川取締役はあんな事になってしまったけれど、、、君には 生きていて欲しいんだ
だから とりあえず
今夜いっとく?」
人間の根本的な性格は、悪い癖は、残念ながらそうそうには直らない。柴山は、半分ふざけた いたずらっ子のような、口元が緩んだいやらしい表情で、結愛の目の前で、ホテルの部屋のキーをぶらつかせる。
結愛は 微笑みながら嬉しそうに こくりと頷いた
── わたしは しばやまさんが いっしょにいてくれるなら なんにもいらないの なんにも──
つづく