第1話

文字数 1,098文字

 
 ………ご神託が現れた………

 とある小さな名もない社の、それも宮司でもその一族でもない、古るからの氏子の遠く離れた孫が神託を受けた。
 まだ子供である孫は、滔々と一点を見据えて一昼夜言葉を述べた。だが親はそれを理解する事ができず、ただ恐れおののいてパニックに陥った。
 それから数日後に、再び同じ子供が同じ事を繰り返した。
 慌てふためいた親は、その様子を録画して、医師やいろいろな人間に相談して、父方の親であるとある小さな社の氏子にこぼした。すると父親から、現代人には考えも及ばない事を告げられた。
 かつてその社の神が、とある氏子にご神託をくだされた伝説があるという。
 神………とは、いろいろな名を持ち、いろいろと形を変えて、現代に伝えられているが、多くの名を持つ神が実は同じ神であったりもする。
 よくよく遡っていくと、意外と気軽に神託している事もある。
 そしてその神はそういった、多少人間に関わりを持つのがお好きな神だ。
 元来神とは人間の為に存在するものではなくて、無関心の事が多く、偶に気まぐれを起こし関わりを持ったり、興味本位で関わったりする事もあれば、人間をお好きな神も存在する。
 人間でいえば、動物好きな人間もいれば、嫌いな人間、無関心な人間もいるという感じだろうか?
 とにかくご神託くださるという事は、多少なりとも人間に興味をお持ちのお方だ。良い事も悪い事も、〝ご教示くださる〟のだから………。
 さてそんな理由(わけ)で、医師に掛かったり、霊媒師などに掛かっていた子供だが、不思議な事に、とある小さな社の宮司が祖父の縁で訪れると、無邪気に遊んでいたのをやめて、急に宮司の前に立ちはだかって、大きく一声

「舞」

 と発した。
 その一声を最後に、子供の奇行は治った。
 と同時に子供の述べていた言葉が、大人達の疑問となった。
 滔々と日を空けて述べていた言葉は、何を言っているのかは分からないものだったが、録画していた物を見ると、その奇々怪界なる言葉が、ただの子供の言葉では無い事と、確かに同じ言葉を繰り返している事が解り、何となく意味を持っているものの様に感じた。だから霊媒師などにも、見てもらったりもしていた。
 現代人にとって、神のご神託も霊が喋らせるのも同じ現象で、ただの怪奇現象でしかないから、ご神託だのという考えには及ばないが、霊現象かもしれない………とは、夏によく見るテレビ番組の影響や、インターネットの配信などで、考えたのかもしれない。
 だがこれは決して霊の仕業ではなく、神のご神託だった。ただその長い言葉の内容については、簡単には解明されるものではなさそうだ。









 







 













 

 
 










 
 

 



 
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