最終話
文字数 1,969文字
「今のは?」
天を仰いでいた高田が、血相を変えて友塚の側に走り寄って来た。
「友塚さん……今のは?」
見ると、其処に居た見物人達の様子がまちまちだ。
周りをキョロキョロと見回す者もいれば、何も無かった様に音色に耳を傾けている者もいれば、隣の人間に何かを聞いている者もいる。
「高田さん………聞こえたんですか?」
「ああ、確かに聞こえた………これって演出じゃないよね?」
「………違いますよ」
高田と友塚の会話を、聞いていた向井が口を開いた。
「私にも聞こえた………」
「同じ事を言っていたかな?」
「………たぶん同じだ……」
向井が、見学者達の騒めきに気がついて言った。
「内容は同じだ………つまり同じ言葉を聞いたって事だ」
向井が自宅の客室で、友塚と鈴木を前に言った。
「あそこに居た見物人の、4分の一くらいの人間が、神の御言葉を聞いた………ってヤツ?」
「4分の一?」
向井の言葉に、鈴木が聞き返した。
「あーつまり、関わりを持った人間………そして霊感的な何かを持った人間……」
それに友塚が、答える形となった。
「霊感?」
「とは違う……と言う人もいる様ですが……まっ、そんな何かを察知できる人間………」
「まぁ、そういったものを持つ人間が聞くのは分かるが、関わった人間ってどういう事だ?」
向井が友塚に聞く。
「善きかな舞を、奉納した褒美でしょう?本当に存在するなら、聞きたいと心底願っていたから………」
「ああ、褒美かぁ………そういや親父が残念がってた………誰だって聞けるものなら、聞きたいもんな………」
「………とはいっても、かなり深刻というか、過激な内容ですよ?………ビデオには御言葉は、録音されていないんですか?」
「………無い………集団催眠とか言われかねん………」
友塚が、げっそりした感じで言った。
「まぁ………戦争とか災害については、託宣されてるものも多々あるし……」
「それでも天の御祖神によって、半分どっかに引き受けてくれるなら、被害は少なくなる………」
「………と言ったところで、半分は災害に遭うわけだし、果たして日本だけの事なのか、地球上で起こる事なのか?………」
「神の星に与えた因果………って言えば、地球規模の災害でしょう?」
鈴木が、シレッと言ってのける。
「………近い将来……って何時なのか?………それでも暫くあそこの神社で舞を奉納していれば、護ってやる、と言ってたんだから、そんなに直ぐに起こる事じゃない。それに人間が変わらない限り、地球が汚染され異常気象で、大規模な災害になるのな知れてるじゃないですか?誰だって分かってる事で、自然を壊せば災害は大きくなる………つまりそういった事をしている国は、被害が大きくなる………大した事は、言われていない感じですよね?」
「うん……大した事じゃないけど……遠くない未来に戦争が起こり、その後大規模な災害が起こる………これは真実で、それを少しでも回避するには、これ以上日本の聖地を失くしてはいけないし、生き物達も減らしてはいけない。もしかしたら、俺たちの居るこの近くに、聖なる地が在ってそれを察知できるものがいれば、そこに逃げる事が可能となり助かる命も増える」
「つまり聖なる地………とは、我々が思っている所とは違うんだろうね」
友塚は、神の御言葉を聞けて本当に嬉しかった。
自分の感じた、第六感的な感覚が真実であったからか、それとも神の御言葉を聞けたからか、そこのところは解らないが、ただ本当に嬉しくホッとした。
………ご神託が下された……
そう巷で噂になり、インターネットで騒がれて、とある小さな社は、暫く物見高い若者達がやって来ては賑やかだったが、余りに騒がれる内容とは異なる、辺鄙で小さな社だった為に、直ぐに閑静な田舎の小さな社の毎日を取り戻した。
彼の昔にご神託を得て、大きな宗教となった時代とは違い、現代において信仰の理由とならなかったのか、此処の神がソレを望まなかったのか………だがそれでも神の声を聞いた、友塚と向井の神社が協力して、高田達氏子達に守られながら、毎年神様への舞の奉納は欠かさないで行う事となり、その時だけは大勢の人々が集まって、それは賑やかな祭事となる。
そして人々はその厳かで雅やかな感覚を、悠久の時を通して尊い方々と共有する事が叶う。
我が国には神の声を聞ける者が存在し、神の声を聞き神を降ろし、神を楽しませる様に楽舞を作り広げ残して来た。
神の国である我が国は、数多の神を始め、国を統べる天子の祖神に護られている。
そう遠くない未来に、神による裁決が下されるだろうが、神は決して地上の全てのモノを、無に還す事はしない。
………そう神の声を聞いた者達は、信じている。何故なら神はほんとうに、関わりを持つ者達に語ったからだ………
……………ご神託の舞・終……………
天を仰いでいた高田が、血相を変えて友塚の側に走り寄って来た。
「友塚さん……今のは?」
見ると、其処に居た見物人達の様子がまちまちだ。
周りをキョロキョロと見回す者もいれば、何も無かった様に音色に耳を傾けている者もいれば、隣の人間に何かを聞いている者もいる。
「高田さん………聞こえたんですか?」
「ああ、確かに聞こえた………これって演出じゃないよね?」
「………違いますよ」
高田と友塚の会話を、聞いていた向井が口を開いた。
「私にも聞こえた………」
「同じ事を言っていたかな?」
「………たぶん同じだ……」
向井が、見学者達の騒めきに気がついて言った。
「内容は同じだ………つまり同じ言葉を聞いたって事だ」
向井が自宅の客室で、友塚と鈴木を前に言った。
「あそこに居た見物人の、4分の一くらいの人間が、神の御言葉を聞いた………ってヤツ?」
「4分の一?」
向井の言葉に、鈴木が聞き返した。
「あーつまり、関わりを持った人間………そして霊感的な何かを持った人間……」
それに友塚が、答える形となった。
「霊感?」
「とは違う……と言う人もいる様ですが……まっ、そんな何かを察知できる人間………」
「まぁ、そういったものを持つ人間が聞くのは分かるが、関わった人間ってどういう事だ?」
向井が友塚に聞く。
「善きかな舞を、奉納した褒美でしょう?本当に存在するなら、聞きたいと心底願っていたから………」
「ああ、褒美かぁ………そういや親父が残念がってた………誰だって聞けるものなら、聞きたいもんな………」
「………とはいっても、かなり深刻というか、過激な内容ですよ?………ビデオには御言葉は、録音されていないんですか?」
「………無い………集団催眠とか言われかねん………」
友塚が、げっそりした感じで言った。
「まぁ………戦争とか災害については、託宣されてるものも多々あるし……」
「それでも天の御祖神によって、半分どっかに引き受けてくれるなら、被害は少なくなる………」
「………と言ったところで、半分は災害に遭うわけだし、果たして日本だけの事なのか、地球上で起こる事なのか?………」
「神の星に与えた因果………って言えば、地球規模の災害でしょう?」
鈴木が、シレッと言ってのける。
「………近い将来……って何時なのか?………それでも暫くあそこの神社で舞を奉納していれば、護ってやる、と言ってたんだから、そんなに直ぐに起こる事じゃない。それに人間が変わらない限り、地球が汚染され異常気象で、大規模な災害になるのな知れてるじゃないですか?誰だって分かってる事で、自然を壊せば災害は大きくなる………つまりそういった事をしている国は、被害が大きくなる………大した事は、言われていない感じですよね?」
「うん……大した事じゃないけど……遠くない未来に戦争が起こり、その後大規模な災害が起こる………これは真実で、それを少しでも回避するには、これ以上日本の聖地を失くしてはいけないし、生き物達も減らしてはいけない。もしかしたら、俺たちの居るこの近くに、聖なる地が在ってそれを察知できるものがいれば、そこに逃げる事が可能となり助かる命も増える」
「つまり聖なる地………とは、我々が思っている所とは違うんだろうね」
友塚は、神の御言葉を聞けて本当に嬉しかった。
自分の感じた、第六感的な感覚が真実であったからか、それとも神の御言葉を聞けたからか、そこのところは解らないが、ただ本当に嬉しくホッとした。
………ご神託が下された……
そう巷で噂になり、インターネットで騒がれて、とある小さな社は、暫く物見高い若者達がやって来ては賑やかだったが、余りに騒がれる内容とは異なる、辺鄙で小さな社だった為に、直ぐに閑静な田舎の小さな社の毎日を取り戻した。
彼の昔にご神託を得て、大きな宗教となった時代とは違い、現代において信仰の理由とならなかったのか、此処の神がソレを望まなかったのか………だがそれでも神の声を聞いた、友塚と向井の神社が協力して、高田達氏子達に守られながら、毎年神様への舞の奉納は欠かさないで行う事となり、その時だけは大勢の人々が集まって、それは賑やかな祭事となる。
そして人々はその厳かで雅やかな感覚を、悠久の時を通して尊い方々と共有する事が叶う。
我が国には神の声を聞ける者が存在し、神の声を聞き神を降ろし、神を楽しませる様に楽舞を作り広げ残して来た。
神の国である我が国は、数多の神を始め、国を統べる天子の祖神に護られている。
そう遠くない未来に、神による裁決が下されるだろうが、神は決して地上の全てのモノを、無に還す事はしない。
………そう神の声を聞いた者達は、信じている。何故なら神はほんとうに、関わりを持つ者達に語ったからだ………
……………ご神託の舞・終……………