第15話
文字数 1,721文字
「つまり巫女さ ん が舞ったように、ある部分を舞うんです」
鈴木は向井と友塚に、巫女の舞う画像を見せながら言った。
「………本来なら、こういう舞い方なのか?それとも、こういう風に舞うべきなのか………とにかく、この違う部分を入れて舞うと………」
先日こっそり自分が舞って来た、とある小さな社での舞の画像を見せる。
すると不思議な事に、鈴木が舞っている間、画像は驚く程に眩しく光りが差している。だが鈴木が舞っていた時には、こんな光は記憶には無い。
そして何より目を引いたのが、社の周りに小さな玉の様な光りが、踊る様にフワフワと幾つも浮かんで、シャボン玉の様にキラキラと七色に光っている。そして屋根の上にも、光りが薄っすらと見えている。
「これはほんとうに、ご神託ですよ……」
鈴木が、はっきりと言うと、友塚は、嬉しそうに鈴木を見つめた。
「舞え、と言う?」
「舞え、と言うだけじゃ、神託にならないだろう?………何か未来の事を告げていなくちゃ………」
友塚が言ったので、向井が横槍を入れる。
「えっ?そうなんですか?」
鈴木が不思議そうに聞く。
「永きに渡る予言を、遺しているご神示が在るからね」
難しい顔を、作った友塚が言った。
ソレが存在するから、友塚の苦悩が在る。
ご神託と感じた時から、ソレが事実か否か……本当の事なのかどうかの葛藤だ。
「予言?」
鈴木が言うと、うんうんと向井が頷く。
「予言は、されているんじゃないですか?」
友塚が渋い顔を作ったから、鈴木は向井と友塚を見て言った。
「………やっぱり、光大君のがソレか?」
「………たぶん………僕も友塚さん同様、確信を持ちました」
「だけど、アレを解読してもらうのは………」
「いやそうじゃない………友塚さんが、託されたのはソレじゃない。舞ってみろ…………だから〝舞〟なんですよ。友塚さんが最初に感じた通り、舞ってみないと解らない。舞ってみたら、たぶんコレだと解った………だったら解るまで舞ってみましょう………きっと何かを、示唆してくれるはずです」
鈴木は、友塚よりも断定的だ。友塚が抱く不安を、全く抱かない。
友塚は良い日取りを、とある小さな社で占って、大掛かりな雅楽の奉納を、向井の神社の協力によって執り行う事にした。
その祭事に、この社の総長である高田の呼び掛けで、氏子達が動いてくれる事になった。
その日、とある小さな社の氏子達は、初めての大掛かりな祭事に忙しかった。
この社での祭事といっても、お正月くらいしかなく氏子が集まる事もない。最近では、年越しの初詣でなども、名のある神社仏閣へ行く若者が増えているから、大掛かりな何かを氏子でする事などもなくなっていた。だがどういう経緯かは、はっきりとされていないが、最近話題になっている雅楽を、この社で行うと聞いて、珍しさも手伝って盛り上がっているのは嬉しい事だ。
巫女が舞った時の様に、社殿の前に敷物を敷いて、向井の神社の雅楽会が、その両脇で雅楽を演奏する。
雅楽を馴染みとする事のない地域の人達も、その賑やかで荘厳なる悠久の歴史を持つ音色に、惹かれる様にやって来て、鈴木が舞う前に奏する楽曲に引き込まれている様だ。
裏手で支度をした鈴木が、徐に面に手を付ける。
衣装や構成などは、向井の父の伝手で大きな神社から借りたり、教えてもらったりしたが、鈴木は、そういった事では無い、と思っている。
確かに、流れ的にはしっかりとした、流儀とした方がいいのかもしれないが、望まれているのは、そういった古代からの流れや、構成やしきたりの様なものでない無い様に思える。
………ならば何を奉納するのか………
それも鈴木はもはや、一人で舞った時に解った様に思えている。
そしてほんとうに、そうである事を鈴木は面を付けて確信した。
サ〜と、時が大きく揺れて動いた。
社の裏に続いている竹林が、大きく鈴木の眼前に現れ、それが社の裏の竹林ではなく、違う場所の庭園にある竹だと理解した。
大きく鉾を振り、大きく足を上げ振り下ろし、軽やかに足先を動かす。
首を捻り宙を見上げ、大きく腕を上げ下ろし、鉾を振っては指先を動かす。
その動きは淀みなく流れて、静かに時を刻み静かに過ぎていく。
鈴木は向井と友塚に、巫女の舞う画像を見せながら言った。
「………本来なら、こういう舞い方なのか?それとも、こういう風に舞うべきなのか………とにかく、この違う部分を入れて舞うと………」
先日こっそり自分が舞って来た、とある小さな社での舞の画像を見せる。
すると不思議な事に、鈴木が舞っている間、画像は驚く程に眩しく光りが差している。だが鈴木が舞っていた時には、こんな光は記憶には無い。
そして何より目を引いたのが、社の周りに小さな玉の様な光りが、踊る様にフワフワと幾つも浮かんで、シャボン玉の様にキラキラと七色に光っている。そして屋根の上にも、光りが薄っすらと見えている。
「これはほんとうに、ご神託ですよ……」
鈴木が、はっきりと言うと、友塚は、嬉しそうに鈴木を見つめた。
「舞え、と言う?」
「舞え、と言うだけじゃ、神託にならないだろう?………何か未来の事を告げていなくちゃ………」
友塚が言ったので、向井が横槍を入れる。
「えっ?そうなんですか?」
鈴木が不思議そうに聞く。
「永きに渡る予言を、遺しているご神示が在るからね」
難しい顔を、作った友塚が言った。
ソレが存在するから、友塚の苦悩が在る。
ご神託と感じた時から、ソレが事実か否か……本当の事なのかどうかの葛藤だ。
「予言?」
鈴木が言うと、うんうんと向井が頷く。
「予言は、されているんじゃないですか?」
友塚が渋い顔を作ったから、鈴木は向井と友塚を見て言った。
「………やっぱり、光大君のがソレか?」
「………たぶん………僕も友塚さん同様、確信を持ちました」
「だけど、アレを解読してもらうのは………」
「いやそうじゃない………友塚さんが、託されたのはソレじゃない。舞ってみろ…………だから〝舞〟なんですよ。友塚さんが最初に感じた通り、舞ってみないと解らない。舞ってみたら、たぶんコレだと解った………だったら解るまで舞ってみましょう………きっと何かを、示唆してくれるはずです」
鈴木は、友塚よりも断定的だ。友塚が抱く不安を、全く抱かない。
友塚は良い日取りを、とある小さな社で占って、大掛かりな雅楽の奉納を、向井の神社の協力によって執り行う事にした。
その祭事に、この社の総長である高田の呼び掛けで、氏子達が動いてくれる事になった。
その日、とある小さな社の氏子達は、初めての大掛かりな祭事に忙しかった。
この社での祭事といっても、お正月くらいしかなく氏子が集まる事もない。最近では、年越しの初詣でなども、名のある神社仏閣へ行く若者が増えているから、大掛かりな何かを氏子でする事などもなくなっていた。だがどういう経緯かは、はっきりとされていないが、最近話題になっている雅楽を、この社で行うと聞いて、珍しさも手伝って盛り上がっているのは嬉しい事だ。
巫女が舞った時の様に、社殿の前に敷物を敷いて、向井の神社の雅楽会が、その両脇で雅楽を演奏する。
雅楽を馴染みとする事のない地域の人達も、その賑やかで荘厳なる悠久の歴史を持つ音色に、惹かれる様にやって来て、鈴木が舞う前に奏する楽曲に引き込まれている様だ。
裏手で支度をした鈴木が、徐に面に手を付ける。
衣装や構成などは、向井の父の伝手で大きな神社から借りたり、教えてもらったりしたが、鈴木は、そういった事では無い、と思っている。
確かに、流れ的にはしっかりとした、流儀とした方がいいのかもしれないが、望まれているのは、そういった古代からの流れや、構成やしきたりの様なものでない無い様に思える。
………ならば何を奉納するのか………
それも鈴木はもはや、一人で舞った時に解った様に思えている。
そしてほんとうに、そうである事を鈴木は面を付けて確信した。
サ〜と、時が大きく揺れて動いた。
社の裏に続いている竹林が、大きく鈴木の眼前に現れ、それが社の裏の竹林ではなく、違う場所の庭園にある竹だと理解した。
大きく鉾を振り、大きく足を上げ振り下ろし、軽やかに足先を動かす。
首を捻り宙を見上げ、大きく腕を上げ下ろし、鉾を振っては指先を動かす。
その動きは淀みなく流れて、静かに時を刻み静かに過ぎていく。