第8話

文字数 854文字

「つまりご神託があり 、〝舞〟と言われたので、かつて巫女がご神託を得るのに、舞っていたから巫女舞にしたと?」

「あーまぁ……何せその〝舞〟が〝舞〟なのか?とかご神託なのか?だとか、俺が言うのも何なんだけど、ちょっと怪しいんだよ……」

 向井が、申し訳無さげに言う。

「そう言い切った人間が、ご神託を得られるタイプじゃないんだ……俺と同様に凡人………」

「………でも、その人が言った事は、真実(ほんとう)だと思いますよ」

 鈴木は、真顔できっぱりと言ったから、向井の方が唖然顔となった。

「まず〝舞〟に違いないと思います。間違っていたら、こんな舞を巫女さんに舞わさせないと思いますよ………巫女さんが知らず識らずに舞っていたのであれば、それは何かの意思です………舞楽は神に捧げる物ですから、舞楽なんだろうと思います………」

 鈴木はきっぱりそう言うと、ちょっと首を傾げた。

「………しかし何故、一部なんでしょう?何故それを舞わせてる?」

「やっぱ、何かが違うのか?」

「………そう言えば、その神社の氏子さんの孫が、ご神託されたんですよね?」

「うん。何を言っているか、さっぱり分かんないけどね。伝手を辿って、解読してくれそうな人を見つけたんだけどね……書記じゃないし、一本調子で何を言っているのか、全く分かんないし………」

「神様の御言葉ですからね………じゃぁ、それでは解らないんですね?」

「ああ、だから、とにかく舞を奉納してみたんだけど………」

「………奉納()()()()()()か……???………つまり、舞ってみないとダメなのか………」

「………そうなんだよ。舞ってみないと分かんない」

 向井が、同調を得る様に言った。

「だったら、コレが一部と思われる舞を舞ってみますか?」

「えっ?舞ってくれるの?」

「僕に見せた……というのは、そういう()()()でしたよね?」

「………だったらいいなぁ……って感じだよ………」

 向井が、ちょっと媚びる様に言う。

「………ただコレ、マジで難舞なんですよ………僕に舞えるかどうか?」

「えっ?そうなん?」

 鈴木は大真面目に、大きく頷いた。
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