第14話 アトランティスの滅亡

文字数 2,558文字

 盛者必衰の理(せいじゃひっすいのことわり)からアトランティスも逃れられなかった。 

 他国が発展するに従い、アトランティスの技術的優位性が少しずつ無くなってきた時だった。
アトランティスの為政者らの一部に変化が出始めた。
アトランティスの優位性を維持するため保身に走り始めたのだ。

 皮肉にも、この為政者らに追風となったのが他国の争いだった。
他国が秘密裏にアトランティスの技術を使い軍事技術を開発していたことを利用した。

 軍事利用されたのを幸いに、他国への技術の公開制限、または国により公開をしなくなった。
そして他国を技術会議に参加させ、その国の技術を暴露させるようにしたのだ。
さらには他国が優位性にならないよう、外交的、軍事的圧力と工作をもし始める。
他国は技術的にも、軍事にも自国より優位のあるアトランティスには逆らえなかった。

 これによりアトランティスは自国の優位性を維持することになる。
だがこれにより技術の発展にブレーキがかかったことは否めない。

 これはポセイドンが戒めた事に反していた。
しかしアトランティスの国民は誰も気にしなくなっていた。
文明が発展したことで、ポセイドンへの崇拝は無くなっていったのだ。
もし、アトランティスが教義を守っていたら、別の未来もあったであろう。

 アトランティスの悲劇の発端は内紛に始る。
権力者、財界人が地位、財力を、親族で独占しようと画策したのが発端だ。
為政者は子供が自分の後を継げるように、科学者は自分の子供が教育を優位に受けられるように、そして財産を多く持っている者がより優位になるように奔走した。

 やがて為政者らは自分や、権力者、財界人に便宜を図り始める。
これが国民に知れ、国民が暴動を起したのだ。

 この暴動を一人の為政者が軍隊を投入し国民を押え込んだのだ。
この時、軍隊はこの為政者の政敵を暴動を誘導した嫌疑で連行しようとした。
連行されそうになった為政者らのうちの数人は、他国へと亡命したのだった。

 亡命者はアトランティスに再び返り咲くことに執着した。
そして、亡命国もアトランティスの傲慢さに多かれ少なかれ不満があった。
そして、やがて亡命国はアトランティスに戦線布告をすることになる。

 アトランティスは、この戦線布告を受けてたった。
技術的優位があるため、軽くみていたのだ。
それに、戦線布告をしてきたのは一国だけだったから、直ぐに勝利すると確信した。

 だが、アトランティスは複数の国から戦線布告をされることとになる。
各国に亡命した者達が手を組んだのだ。
複数の国が次々と戦線布告をしてくるとは、アトランティスは思ってもいなかった。

 窮地に立たされたアトランティスは、地殻変動ミサイルを使うことを決断する。
アトランティスが極秘裏に開発したミサイルだ。

 戦線布告後に、このミサイル情報を入手した亡命先の為政者は焦った。
もし、このミサイルが放たれたら国は滅びる。
かといって降伏すると自分達の地位も財産も失うこととなる。
いや、もしかしたら命にも関わる。
このようなミサイルがあるなどと知らず、亡命者の言うこと聞いたことを後悔した。
しかし、今更遅い。
亡命者を処刑しようが、差出そうが自分達に未来はない。

 他国は同盟をさらに固くし、アトランティスの地殻変動ミサイルの軍事施設の占領を試みた。
ここを占拠すれば、アトランティスの為政者の手元にある発射ボタンは意味を成さなくなる。
そして他国軍は、アトランティスの軍事施設の通信網を乗っ取る事に成功した。
他国が生き残りをかけて必死に行った事が功を奏したのである。
そして極秘裏に軍事施設を襲撃し、占拠直前まであと少しという所までこぎ着けた。
だが・・もうすぐ占領が終るという直前で他国はミスを犯した。
 
 アトランティスの中枢部が軍事施設の異常に気がついてしまったのだ。
アトランティスは躊躇(ちゅうちょ)すること無く地殻変動ミサイルを放った。

 当初、他国軍は軍事施設の占領と、ミサイルの発射口の封鎖を同時に完了する予定だった。
だが、アトランティス側に軍事施設の襲撃に気付かれたとき、ミサイルの発射口は一つだけしか封鎖されていなかった。
これは他国軍同士が指揮権の主導争いで遺恨を残し、連携がうまくいっていなかったからだ。
 
 本来なら発射口を塞いだことがアトランティスの中枢部で分かる。
それを他国軍が情報を操作し、発射口の封鎖工作がわからないようにしたのだ。
全発射口の封鎖が完了したときに、情報操作をやめ現状を見せつけるはずだったのだ。

 それが、軍事施設を占拠する前に、アトランティス側にバレてしまったのだ。
しかも情報操作により発射口が一つ塞がれたことをアトランティス側は知らなかった。
もし、知っていれば塞がれた発射口のミサイルは発射していなかっただろう。
だがアトランティスは、全ミサイルを発射してしまったのだ。

 発射口が塞がれた地殻変動ミサイルは、塞がれた扉に衝突し扉を吹飛ばした。
本来塞がれていれば発射口内部で大破するはずだった。
ミサイルの頑丈さ、発射の威力を甘くみた結果である。
ミサイルは衝突により角度が変り、アトランティスの最高峰の山に向った。
このとき、扉にぶち当ったことで位置情報関知システムが故障をしてしまっていた。
そのため山に当ると、そこをターゲットと見なし地殻に潜り込んだ。
皮肉なことに自分の放ったミサイルが、自国の大陸を標的としたのだ。
アトランティス大陸は地殻変動により海に飲まれたのは、それから間もなくの事だった。

 そして放たれていた他のミサイルであるが・・。
ミサイルは敵地に届き、その大陸にある敵国の領土だけに巨大な地殻変動を起こした。
平地だった場所は山脈に、あるいは海や広大な湖にと変わり果てた。
または山が一斉に噴火をし、溶岩が都や町や村を襲い荒涼とした風景に変えた。
敵国は完全に滅んだのだ、国民をも巻込み全てを破壊つくした。

 滅んだ国は最も技術が進み最も豊かな国々と、軍事力が強大な国家であった。
これにより人類の技術的進歩は後退することとなる。
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