第3話 生成

文字数 1,692文字

 飛び散った物質が等速度運動になってから暫くしたある時・・。
爆発の中心点に半透明の右手が突然現れた。
種子を置いたあの右手のようだ。

 手に筒のような物を持っているように見える。
その筒も半透明に見える。

 やがて、その筒を突き出すように右手は移動し始めた。
移動するに従い、筒が徐々にはっきりと見え始める。

 やがて筒だけがはっきりと見えるようになると、手の動きは止まった。
手は筒と違い、半透明なままである。
筒は銀色に鈍く光り輝いていた。

 やがて筒の先端から一滴、何か液体のような物が射出される。
射出された滴は、筒から差ほど離れない位置で突然停止した。
それを確認したかのように、筒を持った右手は移動した方向と逆に移動し始める。
移動するに従い、筒は徐々に半透明になる。
そしてやがて、筒ごと右手は姿を消した。

 右手が消えると同時に、筒から射出された滴が突然大爆発を起こした。

 しかし、この爆発は奇妙だった。
手が現れる前に無空間で等速運動をしていた物質は、爆発が無かったかのようだ。
爆風で等速運動をしていた物資は飛び散ることも無く、また爆発前と密度も変わっていない。
ただ黙々と物質は爆発前と変わらずに均一な密度を保ちながら等速運動を続けていた。

 爆発した滴は霧状になり無空間に急速に広がっていく。
先に拡散している物質に全く影響を与えない。
まるで先に拡散している物質がないかのようだ。
やがて、この霧状の物質は先に爆発し等速運動している物質の移動している先端に追いついた。
恐ろしい速度である。
しかし、先に広がっている物質の先端に到達すると、何故か先の物質と同じ等速速度となった。
まるで歩調を合わすかのようだ。

 すると、どうしたことだろう・・・
均一に広がりながら等速運動していた物質に変化が現れた。
(むら)ができはじめたのだ。
その斑は斑模様(まだらもよう)となり、まるで水に墨汁を垂らしたマーブリングのようだ。

 やがて密度の高い部分は、近隣の薄い密度の物質を集め始めた。
これによりさらに濃淡がはっきりし始める。
まるで、あちこちに島ができたようだ。
置き換えていうならば、瀬戸内海の小さな島々のように見える。
ただし島といっても数光年の広さだ。

 その各々の島状の物質が渦を巻き始める。
まるで島が互いに声を掛け合い、呼吸を合わせたかのように・・・

 まるで日本神話で島が産まれる時のようだ。

 それからさらに時間が経過した。
島状だったものは球体になっていた。
よく見ると、その球体は膨大な数の星々の集まりだ。

 そして球体の中心には信じられない大きさの惑星がある。
それを核とし回りに小さい惑星が群がり球体を形成していたのだ。
中心に大きなコアがある野球のボールのような構造である。
この球体は、ゆっくりと回転していた。

 そして球体は回転は徐々に早くなっているようだ。
やがて遠心力で、外周の星々が帯状に外側に広がり、土星のような形状に変化した。
ただし、球とリングの間に隙間は無い。
そのリングは回転する遠心力により等間隔で無数にちぎれ、ちぎれた部分が外側に次第に伸び始めた。
やがて銀河系の形になった。

 さらに時間経った。
中心の信じられない大きさの惑星は他の惑星を自分に引きつけていた。
引きつけられた惑星は、大きな惑星に衝突し、さらに大きな惑星を構成していった。
その惑星だがある時を境に、なぜか突然縮んでいき強烈な光を発して消えた。
その消えた場所に周辺の惑星が吸い寄せられ消えていく。
消えるときに、粉々となった惑星の残骸が勢いよく、直線に吹き出される。
やがて吸い寄せられる近くの惑星が無くなると、何事も無かったように静寂が訪れた。
しかし、たまに運悪く中心付近の惑星で軌道がずれたものが中心に吸い寄せられることがあった。
吸い寄せられた惑星は、中心付近で粉々になって飛び散ることがあった。

 このような銀河が至るところで発生していた。
どうやら神は星を、銀河を作成していたようだ。
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