第17話 カイルとオルリ・リードについて語る

文字数 1,891文字

 オルリのところに珍しくカイルが顔を見せた。

 「よぉ、オルリ、元気か?」
 「久しぶりだね、カイリ。」
 「ああ、そういえ久しぶりかな・・、お前の方は大変そうだな。」
 「まあね・・、あちこちの惑星で生命が順調に進化しているからね。」
 「順調・・なのか?」

 カイリにしては珍しく歯切れが悪い。

 「なんだよ、その疑問符が付いた言い方は?」
 「いや・・まあ、何時ものことと言えば何時ものことだが・・。
 リードが盛んに学会に対し、お前のことを言っているぞ。
 研究の成果が乏しいから無空間実験から外すべきだと。」

 「えっ? そうなの?」
 「ああ、それに俺のところにも押しかけてきたぞ。
 お前を外して、自分の研究を無空間でさせろと。」
 「・・・・」

 「まあ、リードは息巻いているが、空間管理委員長はお前の成果を認めている。」
 「・・そうなのか・・なら嬉しいが・・。」
 「おいおい、お前らしくないな、自信があったんじゃないのか?」
 「カイル・・、先ほど君は疑問符をつけて順調か聞いてなかったかい?
 もし、カイルが僕の研究成果に対し不足だと思うんだったら、僕は・」

 「バカ言ってんじゃねぇ!」
 「え?!」
 「俺はお前を認めている。」

 「そ、そうなのか?!・・、えっ? でも?」
 「バカか! お前、俺と何年付合ってんだよ。」
 「それは

だからだろ?」
 「お前な~!! ・・まあ、うん、確かに腐れ縁でもあるけど、な。」

 カイルとオルリが話していると、ノホホンとした脳天気な声が二人にかかる。

 「あははははは!! 二人で何を

てんですか~。」
 「「

てねぇよ!!」」

 「プッ!! 息ぴったりじゃないですか、二人とも。」
 「「・・・」」

 カイルとオルリは互いの顔を見合わせ苦笑いをした。

 そして、カイルは苦笑いをやめ真剣な顔でオルリを見る。
オルリは、おや? と思いながら、カイルの顔を見直す。

 するとカイルはキルスの方を向き、話しかける。

 「キルス、悪いがオルリと二人で話したいんだが?」
 「えっ!・・」

 キルスはカイルの言葉に動揺する。
キルスはカイルと話したくて、二人の会話に割り込んできたのだ。
それなのに席を外せと言われてしまった。

 私だってオルリと居たいのに!

 最近オルリは忙しい。
ゆっくりとオルリと話す時間もなければ、一緒にいる時間もない。
オルリの研究助手なのに、二人でゆっくりと話せないのだ。
それに、いつも誰かがオルリの側に居る。

 私だってできえばオルリと二人きりでいたい。
なのに・・。

 キルスはそう思い、無意識に口ビルを軽く噛む。
しかし、カイルの真剣な顔を見て何も言えなくなった。

 「わかった・・。」
 「すまんな・・」

 キルスは二人に背を向けるとドアに向って歩き始める。
そして思うのだった。
オルリに、私と二人でいたいと思われたい、と。

 でも、今の私ではオルリのパートナーとして役不足だ。
悔しいが、これが現実なのだ。

 

で、女性になろうかな・・。
そうしたらオルリは振り向いてくれるだろうか?
そう思い、ドアから出る前に、一度振り向いてオルリを見た。
すでにオルリとカイルは何か話し始めていた。
キルスは部屋を出ると、そっとドアを閉めた。

 「相変わらずだなキルスは・・」
 「何がだ?」
 「お前・・気がついていないのか?」
 「何を?」
 「・・・まあ、いい。お前らしいよ。」
 「おいおい、何が言いたいんだ?」

 カイルは首をユックリと横に振り、ため息を吐いた。

 「わからんならいいさ。 それよりもだ・・。」
 「?・・、何?」
 「リードの件だ。」

 リードと聞いて、オルリは顔を(しか)めた。
しかし、このような顔はけっしてカイル前以外では出さない。

 オルリは自分が平民の出であることを十分に自覚している。
だから貴族階級の者達には、自分の感情を顔に出すことはない。
ただカイルに対してだけは、気を許し自然と顔に出てしまう。

 カイルもオルリに対し平民出だからという思いは一切ない。
だが、カイルは名門中の名門の家系である。
立場上、どうしても貴族とし振舞わねばならない時だけ貴族の顔をする。
だが、公式の場でないときは、友人として気軽に接していた。

 オルリはあまりリードのことは聞きたくはない。
だが、この様子だと聞いておいたほうがよい内容なのだろう。
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