第13話 アトランティスの勃興

文字数 2,196文字

 ネアンデルタール人が滅んでから、かなりの年月が過ぎた。
ホモサピエンスという生物が徐々に数を増やし席巻し始める。

 そして、アトランティスという国が生れた。
その国は一柱の神を(あが)め、神の名前はオルリと言う。
しかし誰も神の名を口に出して呼ぶことはない。
名前を呼ぶなど恐れ多い事だからだ。
そのため神を示したいときはポセイドンと呼んだ。

 ポセイドンの神話がアトランティスに残っている。
ポセイドンは東雲の頃、突然海に現れ朝日を背にこの地に降り立った。
そして、アトランティスの人々に教義を説いた。

 だが、誰もその教義を理解できなかった。

 ポセイドンはアトランティスに滞在し教義を広めることにする。
そのため、拠点として小高い丘の上に神聖な家を作った。
その家は、人々の見ている前で一瞬にして現れたという。

 ポセイドンはこの神聖な家に祈りを捧げにくるよう命じた。
人々は祈りを捧げることにより教義が理解できるようになる。
そして、後々この神聖な家は神殿と言われるようになった。
このように神話で語り継がれている。

 しかし、この神話には俗説のようなものも語り継がれている。
それは、人々が神聖な家に入ったと思ったら、神殿から出ていたというものだ。
神話などでは神殿に神の神々しさを記すため、神殿内部を記載しているものが多い。
なのに、一切、神殿内部の記載がないことから俗説になったという。

 神話の続きであるが・・。
ポセイドンは人々が教義を理解できるようになると次の行動を起した。
農業、医術、航海技術、芸術などを人々に広げたのだ。
これらも人々は神殿で会得したという。
これにも俗説があり、神殿で祈りを捧げただけで人々は理解したという。
不思議な神話である。

 神話の最後になるが、これはポセイドンがアトランティスを去る時のことになる。
人々が一通りの知識や技術を習得したときだった。
後は自分達で創意工夫をして発展させるようにとポセイドンは命じた。
そして、さらに人は進化する努力を忘れてはならぬと戒めた。
そう戒めるとポセイドンは姿はその場で突然消えたという。
神話はここまでだ。

 アトランティスの人達は、神話にあるポセイドンが消えてから高度な文明を築いていった。
ポセイドンが現れたことで、衣食住は安定し豊かな暮しをしていたという。
アトランティスでは、神話時代以降、階級制度が整備され、政治経済も急速に発展する。

 アトランティスの発展について上げていこう。

 一つは海への進出だ。
海洋の殆どを把握し、海洋生物の牧場を作った。
食料の調達と、海洋生物の生態調査のためだ。
それにより舟の技術が急激に発展を遂げた。
そして潜水艦も作られる。
それにより深海も調査され、深海で未知の場所はなくなった。

 二つ目はエネルギーだ。
ポセイドンから与えられたのは水力、風力、潮力発電だという。
それらを発展させていき、最終的には核融合発電まで手に入れた。

 三つ目は交易と、文化交流だ。
アトランティスの人々は、海外との交易を積極的に行った。
最初の頃は、他国へ一方的に技術や知識を与えている状態であった。
だが他国に移住し、他国の者と子をなし、その子が他国の文化を引上げていった。
子供達に優秀な遺伝子が受継がれていったようだ。

 アトランティスは聖地、文化経済の中心地として発展をしていった。

 他国はアトランティスの技術を貰い発展していった。
やがて、アトランティスの技術をさらに発展させ独自の技術を開発するようになった。
そしてアトランティスへの恩義から、無償でアトランティスにその技術を今度は提供した。

 アトランティスから一方的に出されたものが、逆にアトランティスにもたらされたのだ。
これによりさらに技術は進展していった。

 しかし・・。
アトランティスへの恩義を感じない国があった。
表面的には恩義を感じているように振舞ってはいる国である。

 その国の土地は痩せていて、なおかつ気候的にも恵まれていなかった。
それにも関わらず為政者らは贅をつくし、国民は貧困に喘いでいた。
為政者達は、裕福な他国の土地が欲しくてならなかった。
また国民も他国の土地にあこがれていたのだ。
ただ、軍事バランスから他国に手が出せないでいた。

 そんな時代に突出した技術を持った国が、お人好しにも無料で技術を教えてくれるのだ。
これを利用しない手はない。
その国はただでもらった技術を、よりすぐれた技術にしようとしていた。
それも軍事に利用するための技術だ。
とうぜん成果については一切公表などするわけがない。

 だが、他国もバカではない。
この国がこっそりと軍事力に力を入れているならば、と、隣接国も同じようにし始めたのだ。

 それに気がついたアトランティスは、技術を与えるための枠組を作った。
定期的に研究施設の視察を行うことにしたのだ。
さらに技術供与を受けた国に年に一度、技術会議に出てその技術の応用成果を発表させたのだ。
もし、この学会で発表しない、または稚拙な発表を行うと恥じをかくように。
それにより他国は技術開発を隠せなくなった。

 だが、文化を与え、イニシャチブを取ってきたアトランティスも斜陽の時を迎える。

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