第2話 静から動へ

文字数 1,082文字

 時間が存在したとして、種子が置かれてからどれくらい経ったのだろうか・・・
数時間・・・数年、・・・数百年、数億年・・。

 置かれた種子は何も変化を示さない。
無空間に一粒の種子がポツンと浮いているという状態が続いている。

 無空間に現れ種子を置いた手は、あれから姿を見せない。
あの手は一体何であったのだろうか?
地球外生命体が無空間に手だけを出したのであろうか?
それとも手の姿形をした生命体だったのであろうか?
あるいは無空間に物を入れるマジックハンドのような物なのだろうか?

 分かるのは無空間に作用することができる唯一無二の存在であるということだ。
神の手が無空間に顕現したのかもしれない。
いずれにせよ、人には分からない存在であることだけは確かだ。

 無空間にある種子は、別の空間からもたらされた物である。
種子はいったい何が目的で、無空間に置かれたのだろうか?
無空間で種子が変化をするのを待っているのであろうか?
あるいは種子を置いたことにより、無空間に変化がおきるか観察しているのであろうか?
それとも種子を無空間に置きたかっただけなのだろうか?
あたかも棚に荷物を置くかのように。
種子は何も答えない。

 さらに時が過ぎた。
数秒なのか、数年なのか、数億年なのかは不明である。

 しかし、その時がついに来た。

 突然、アーモンド型の種子が膨らんでいく。
縦長方向の大きさは変わらない。
ラグビーボールに無理矢理過剰な空気を入れているかのようだ。
やがて、種子は球状になると膨らむのをやめた。

 その直後、強烈な光を発した。
あたり一面が真っ白となり、無空間が闇でなくなったかのようだ。
強烈な光の中で、種子は大爆発を起こした。

 この刻を神は待っていたのだろうか・・・。

 大爆発により無空間に何かが急速に撒き散らかされる。
その範囲は・・・おそらくハッブル望遠鏡でも捕らえられない範囲であろう。
種子から放出された物質は、光の速度で無空間に広範囲でまんべんなく広がり続ける。
なんという量なのだろう・・。
種子の大きさからは、とても想像できない量だ。

 それから、どれ位の刻が経ったであろうか?
数年であろうか?
数億年であろうか?
無空間に変化が生じた。
飛び散り続けていた物質の加速度が徐々に小さくなってきた。

 さらに時間が経つと飛び散った物質は等速度運動になり広がる。
伸びきったゴムが元に戻る寸前のような速度の変化だ。
何か計算された動きなのだろうか?
いったい神は、無空間で何をしようとしているのだろう?
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