第10話 生命の進化・海から陸へ

文字数 2,136文字

 オルリは地球という惑星へ、生物調査に訪れていた。

 この惑星にいるのは海洋生物だ。
進化し多様化している。
種類の多さは想像以上だった。
だが、余りにも海での進化に特化しすぎている。
陸への進出がないのだ。

 確かに他の惑星でも海洋生物だけのところもある。
それは陸地がないからだ。
その星で、生物は目まぐるしい進化を遂げている。
近隣の惑星に探査衛星を飛ばし宇宙観測までしているのだ。

 それに比べこの惑星には陸地があるのだ。
陸地があれば、海洋生物は陸に上がるように進化するはずだ。
だが、この惑星の生物はそうならなかった。
生物が誕生してからだいぶ経つというのにだ。
それに海洋生物は多様化するが、知的生命体が現れない。

 なぜだ?
もしかしたら、地上に進出したならさらなる進化をするのではないだろうか?
そうすれば、知的生命体が生れるかもしれない。

 それにしても海洋生物しかいない理由は不明だ。
不本意だが解明は後回しだ。
それよりも、陸に進出するように仕向け、知的生物が現れるか研究しよう。

 そう考えたオルリの行動は早かった。
海洋生物を捕まえ、陸に上がることが可能になる遺伝子操作を行ったのだ。
本来ならこのような操作をしなくても遺伝子に備わるものなのだが・・。
これで生物の進化の段階で、陸に上がる確率が上がるだろう。

 さらに念には念をいれておく。
地上への進出を促すため、惑星コアに手を加えた。
地殻変動を起して新たに大陸が作られたり、火山活動を活発化させる。
これにより惑星環境が変わる。
環境変化により海から陸への進出を余儀なくされるだろう。

 もちろん、このような操作をしてもカイリへの配慮は忘れはしない。
地殻変動を起しても、惑星が崩壊しないよう対策も施してある。
後は5000万年程したら様子を見に来ようと思う。

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 あれから一億年たった。
地球では長い年月かもしれないが、オルリ達にとっては差ほど長くない。

 地球来訪が遅れた理由だが・・。
前回加えた地殻変動により、思ったより多くの海洋生物が絶滅してしまったからだ。
誤差範囲ではあるが・・・。

 進化を見越し、ある程度進化してから地殻変動が起るはずだった。
しかし思った以上に進化が進まなかったのだ。
そのため生命力が予想を下回り、絶滅寸前までいってしまったのが原因だ。

 こうなると生物はそう簡単には増えない。
また当然生態系がかわる。
それにより新しく進化した生物は現れやすくなるメリットはある。
ただ、進化した生物が出て来ても数を増やすのに時間がかかる。
さらなる進化も、そうは簡単にはいかなくなったのだ。

 悩むのは後にして、まずは惑星の現状を知る必要がある。
オルリは惑星に降り立って観察を始めた。

 地上では植物、昆虫が多様化し繁栄していた。
脊椎動物も見られる。
当初の地上への生物の進出という点では成功してはいる。

 そして海洋生物だが・・。
多様化してきているようだ。
そして、やはり生態系は変ったようだ。
一部、進化した生物も見られる。

 しかし・・・陸も海も知的生命体と呼べる生物はいなかった。
遺伝子操作をして進化を促したが、思ったほど成果がないようだ。

 オルリは深いため息を吐いた。
これではまたリードの嫌みの恰好のネタになるかも・・そう呟いた。

 今回の研究は自分達に近づく生物がどのように発生するかが重要なのだ。
今のところ他の惑星においても、自分達に近づいている生物は見受けられない。

 各惑星で自分が予測した生物が現れ、予測通に進化しているので成果はある。
しかし、あのリードの事だ、そのような予想とあった進化は偶然と言うだろう。
まあ、周りはそのように思わない人が多いから我慢はできる。
しかし、なぜ彼はあれほど俺に敵対心を燃やすんだろう?
そんな暇があるなら、自分の研究をもう少し掘下げればよいものを。
そう思う。

 まあいい、リードの(いや)みを聞いた日はカイリと飲みに行くに限る。
あ、そういえばキルスに(おご)るといって忘れていたような気がする。
ま、まあいいかな。
忘れたふりをしていよう。
うん、そうしよう!
・・・。
でも、だいぶキルスを振り回しているよな、俺。
それに、嫌な顔をせずよく協力してくれているしね・・。
それに、可愛い弟のような存在でもある。
あの美形には周りも溜息をつくほどだから、俺も鼻が高い。
これで成人の義で、女性になったなら周りの奴等が放っておかないだろう。
俺も若ければね、参戦したい気がするけどね。
うん、カイリと飲みに行くときは誘うとするか。

 それにしても・・。
他の惑星の進化に比べ、この惑星の生物の進化が遅い理由がわからない。
進化が遅い分、知的生命体が現れたとき想像がつかない。
いったいどのような文明を築き、宇宙へと飛出すのだろうか・・。
それとも期待外れで終るのだろうか・・。

 たぶん、進化をし知的生命体が現れるまでには時間が足りていないだろう。
もうすこし気長に待つことにしよう。
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