第19話

文字数 534文字

腰に鈍い痛みを感じながら起き上がる。

「透日くん、いらっしゃる?」
女性の声が聞こえる。

—きっと(みやこ)さんだ。出ないとまた来てしまう…

「はい、今行きます…」
とりあえずの返事をする。

洗面所へ向かう途中、廊下で寝ていたハルを起こす。

今はまだハルの存在を知られたくない。
近隣住民に変な勘繰りをされても困る。

流石に家に入ってくることはないだろうから、リビングのドアを閉めて隠れるように言う。

チェーンロックをつけたままドアを開け、顔を確認する。

「お待たせしました…」

「あ、透日くん、ごめんなさい…。こんな時間に…。都ですけど」
シミが目立つ初老の女性が立っていた。所々、痣や傷が目立つ。
胸元で両手を摩っりながら、透日の様子を伺うような目線を向ける。

透日はチェーンを外し、再びドアを開けた。

「ああ、都さん。どうされました?」

「あの…水道がね…。出なくなって…。見てもらえる?」

「え、水道ですか?」

都は透日たちより先に住んでいる。外側にいる人間相応の容姿。

骨が浮き出るほど痩せた腕に、頭髪はストレスによって真っ白になってしまった。

「あの…無理かしら?」

「いえ、一回見てみます」

「本当?助かるわ…」

 都の部屋も角部屋であるため、ここから正反対にある。同じマンションといえど少し距離が離れている。
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