第6話

文字数 442文字

「ハル! 無事に入れたんだね」

「はい、なんとかなりました。お二人共、すっかり馴染んでますね」

「ありがとう。ハルのおかげだよ」

「ありがとう、ハルお兄ちゃん」
茉璃がつけている髪飾りが揺れた。リアルな姿より少し背が高い。

ファッションに興味はなく、とりあえず揃えた衣装だったが、茉璃によく似合っていると、ハルは思った。
少女から女性へ成長したように感じた。

「どういたしまして。さ、まずはどこに行きましょうか?」

「私、お腹すいちゃった…」

「朝早かったからね。では、近くのカフェに寄りましょう。コーヒーだけじゃなくて、サンドイッチも絶品なんですよ」

聞き慣れない単語を流暢に話す。内側にいる人々にとってはただの日常会話なんだ、と透日は思った。

いかに自分が、狭い世界に閉じ込んでいたかが分かる。
なぜ留まっていたのだろう。外側の世界から脱出する方法を、早くに探していたら。

透日には出来なかった。ずっと、言われたことを言われたまま行動していた。
努力してもどうせ報われないという、諦めの気持ちが根底にあった。
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