この窓を叩き割れ!

文字数 1,014文字



パソコン立ち上げブラウザ開き
「窓」に言葉を放り込む
誰が付けたか知らないけれど
「窓」と名付けるセンスがイカす

  あんたの気持ちがわからない
  そんな態度でどうしたい
  俺のこと嫌いなんだろ?
  放っておいたらいいだろが!
  俺は何すりゃいいんだよ
  検索したって「答え」は出ない

リアルな「窓」は見飽きてる
映る景色はいつもの通り
俺はため息「窓」を見る

グラウンドはそこにある
木の配置も同じだし
土の加減も変わらない
周囲の様子も写真のようで
季節と空と、行き交う人が違うだけ

  あんたの気持ちがわからない
  何か言ったらどうなんだ
  黙って睨むな無視してくれよ
  俺が何した?
  思い当たりもしないんだ
  俺はどうすりゃいいんだよ
  検索結果に不満が募る

仮想の「窓」も見飽きてる
見える世界は毎回同じ
浮かぶ字面に頭が痛い

検索履歴は「気持ち」で溢れ
それでも求める「答え」じゃない
知りうる限りの「言葉」を入れて
見慣れたページにたどり着く
「このページに20回アクセスしています」とか
そんなの前からわかってる!

訊いたことしか返さない
検索窓は〈魔法の鏡〉
「美しさ」の定義を忘れて問うから
求める「答え」が返らない
あの継母は今の俺
俺には「言葉」が足りてない
知りたい「結果」にどうすりゃ届く?
俺の……知識の辞書は薄っぺらい

  あんたの気持ちがわからない
  すれ違うときの息苦さを
  あんたは知りもしないだろ?
  つんとそっぽを向かれたら
  俺は声も掛けられない
  悪いのは俺じゃないだろ?
  俺は絶対被害者だ!
  振り返らずに走り去ったら
  ビビッて今日も「窓」を見る

  あんたの気持ちがわからない
  たぶんずっとわからない
  はっと気付いて手を止めた
  指の下にはキーボード
  にやりと笑って嫌味を投げて
  「窓」は沈黙俺を見る

きっと小さすぎるんだ
「窓」に区切られ世界は縮む
世界のホントは「窓」の外!
「窓」の中では余所行きの顔
綺麗に飾られまとまっている
だからさっさと叩き割れ!
この「窓」を叩き割れ!

パソコン閉じて俺は駆けだす
この「窓」を乗り越えろ!

─────────────────
初稿:2020年10月11日
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