蝉と雨

文字数 568文字

突然空が暗くなり
突然雲が黒くなり
雷ゴロゴロ遠くで唸る

スンスン息撒く扇風機
にやけ笑いでピピっと止めりゃ
(ぬく)い空気にハグされた

窓に近付き空見上げ
小さな声で問いかけよう

   雨おいで
    さあおいで

汗はじんわりしたたり落ちる


しばらく待ったら蝉の声
これじゃだめか降らんよね
落胆しながらカーテン閉じて
読みかけ(ぼん)のページを開く

シンシンシンシン 蝉の声
ジリジリジリジリ 蝉の声
フワフワフワフワ 蝉の声

トン
 ツン
  テン
   トトン

 ザー……

雨もどうやら降りだした


けれども蝉も負けていない
けれども蝉は鳴きやまない
雨と蝉の大合唱
カーテン隔てて聞き耳立てれば
白の(とばり)に夕焼け()みる

しばらくしたら静かになった
おやと思って顔を上げたら
静かに静かに蛙鳴く

蛙だけが 鳴いていた




───────────
初稿 :2020年8月13日

【活動報告】
https://novel.daysneo.com/author/kei_satsukihara/active_reports/16fe7e2a80b11a4723277ef90f4512c5.html
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