第2章 第11話

文字数 741文字

「エライっ あの舎弟。やっぱやれば出来る子だな ギャハ!」
「お前… しかしいつの間に…」
「ま、アレだ、サプライヤーってヤツ? てへ」

 俺たちは会えなかった時間を取り戻すかの如く、凄い勢いで語り合っている。だがそれがまるで、つい昨日もそうだったかの様に思えるのが不思議でたまらなかった。

「… それよか、いいのかクリスマス。ここ、掻き入れどきだろう? 忍ちゃんも旅行行くんだろう?」
「二十五日は店閉めるし、毎年。経験なクリスチアーノだからな、ウチは」

 ホントかよ? 前、店閉めるのは正月だけって言ってなかったか?
「…… そうか、ならいいんだが。あと、その、着てく服、な… お前、ちゃんとした服持ってるか? アレなら明日にでも買いに行くか?」
「馬鹿にすんない! フォーミュラーの一つや二つ、ちゃんと持ってんだよ」
「…… ならいいが。俺は仕事終わってから直で行こうと思ってんだけど、ちゃんと来れるか?」
「そんなん、その辺で聞きゃあわかんだろ。何せマゼラン5つ星だからなっ」

 それは無い。断じて無い。俺は心底心配になって、
「…… 明日、地図を翔に送っておくから、コピーしておけ…」
「へへへ〜 夢だったんだよ… こういうの…」

 不意に光子のモードが山ノ手モードになる。思わず顔が綻んでしまう。
「バブルの頃とか流行ってたじゃない、クリスマスは恋人と高級レストランとかホテルとか…」
「…ああ」
「私には関係ない、そんなガラでもない、そんな身分じゃないって、諦めていたの…」
「…そっか」
「へへへ〜 今年、また夢が叶っちゃうんだ… 嘘みたい」
「明後日、いや明日か。雪でも降るといいな」
「それって〜 スノークリスマスって言うんだっけ?」
「ホワイトクリスマス」

 結局その晩は朝まで二人で語り明かしてしまった。
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