第1章 第6話
文字数 849文字
「アンタ… なんか活き活きとしてない? なんかいい事でもあったのかい?」
『居酒屋 しまだ』のカウンターでカウンターメジャーを色々考えていると光子が話しかけてくる。忘年会シーズン真っ只中で今夜も店は満席だ。
「別に。ちょっと仕事のことで、な」
「そか。ま、あんま無理すんなよ。歳なんだからよ」
柔らかな笑顔。今までこんな表情はあまり見た事がない。そう言えば最近コイツは少し丸くなってきた感じがするのは俺だけであろうか。
「あんまりお前に言われたか無いわ」
「へん。ま、ゆっくりしてけや」
と言い、すぐに厨房に入っていく。その後ろ姿に見惚れながらジョッキを口に持っていく。揚げ出し豆腐をつまむ。そして再び、今後の三ツ矢部長対策を色々考える。
のだが、今日の客は中学の同級だった者が多く、やたらあちこちから声をかけられ、やれ足は良くなったのか、やれ今度の同級での団体旅行は何処だの、気がつくと遅くまで彼らと楽しく時を過ごしてしまう。
そんな彼らも帰って行き、残りの客は俺一人になる。時計を見上げると十二時過ぎである。あー疲れたと言いながら光子が酎ハイを片手に俺の隣に座り、iQOSを咥える。春までは普通の紙巻きタバコを吸っていたが、タバコの匂いが嫌いな俺に合わせてこの電子タバコに変えたのだ。まあ、臭いは臭いのだがその心意気や良し、である。
「なんかすっかりこの店は西中の溜まり場になってきたな」
「そうだなー でもよ、もっと先輩とか後輩とかも来ねえかなー」
それ全員不良仲間だよな、とは言わずに、
「欲張りになってきたな。近くに支店でも出すか?」
「ムリムリー ここで十分だわ。この狭さでじゅーぶん…」
そう言うと俺の瞳をじっと見つめる。俺も見つめ返す。瞳と瞳の距離が徐々に近づいてくる。鼻と鼻が触れそうにn―
その時、入り口の扉が遠慮がちに開かれる。ほぼ片付けを終えた忍が迷惑そうな顔でもう閉店なんですよー と言い放った時。
「今晩は」
低く渋い男の声がした。
光子のiQOSが指から転げ落ちる
「うそ… チアキさん…」
『居酒屋 しまだ』のカウンターでカウンターメジャーを色々考えていると光子が話しかけてくる。忘年会シーズン真っ只中で今夜も店は満席だ。
「別に。ちょっと仕事のことで、な」
「そか。ま、あんま無理すんなよ。歳なんだからよ」
柔らかな笑顔。今までこんな表情はあまり見た事がない。そう言えば最近コイツは少し丸くなってきた感じがするのは俺だけであろうか。
「あんまりお前に言われたか無いわ」
「へん。ま、ゆっくりしてけや」
と言い、すぐに厨房に入っていく。その後ろ姿に見惚れながらジョッキを口に持っていく。揚げ出し豆腐をつまむ。そして再び、今後の三ツ矢部長対策を色々考える。
のだが、今日の客は中学の同級だった者が多く、やたらあちこちから声をかけられ、やれ足は良くなったのか、やれ今度の同級での団体旅行は何処だの、気がつくと遅くまで彼らと楽しく時を過ごしてしまう。
そんな彼らも帰って行き、残りの客は俺一人になる。時計を見上げると十二時過ぎである。あー疲れたと言いながら光子が酎ハイを片手に俺の隣に座り、iQOSを咥える。春までは普通の紙巻きタバコを吸っていたが、タバコの匂いが嫌いな俺に合わせてこの電子タバコに変えたのだ。まあ、臭いは臭いのだがその心意気や良し、である。
「なんかすっかりこの店は西中の溜まり場になってきたな」
「そうだなー でもよ、もっと先輩とか後輩とかも来ねえかなー」
それ全員不良仲間だよな、とは言わずに、
「欲張りになってきたな。近くに支店でも出すか?」
「ムリムリー ここで十分だわ。この狭さでじゅーぶん…」
そう言うと俺の瞳をじっと見つめる。俺も見つめ返す。瞳と瞳の距離が徐々に近づいてくる。鼻と鼻が触れそうにn―
その時、入り口の扉が遠慮がちに開かれる。ほぼ片付けを終えた忍が迷惑そうな顔でもう閉店なんですよー と言い放った時。
「今晩は」
低く渋い男の声がした。
光子のiQOSが指から転げ落ちる
「うそ… チアキさん…」