対抗戦

文字数 1,625文字

 「ここが技科高か!? きれいな校舎だな!」
 
 「最近できたほぼ新設高ですからね! 理系教育に力を入れているらしいですね」

 ハヤテと夕霧が校門から入ると、日曜日に関わらずグランドでは大きな声を出しながらサッカー部が練習をしていた。対抗戦の会場を事前にパソコンでホームページを確認していた。しかし、実際に校内を歩くと教室や部室の配置がわかりにくく、会場に到着するまでに時間がかかった。

 「初めまして。皆南高校ゲーム部の秋月です。こちらは部員の頼光です。今日は対抗戦で会場を準備頂きありがとうございます」

 「こちらこそ初めまして。私は技科高校ゲーム部長の進藤です。それと今日の参加者の倉田と森山とです」

 対抗戦の参加者は互いに一礼をした。技科高のメンバーは部長と倉田が男子で森山が女子だ。参加者の他にも15人くらいがその場にいた。

 「皆南高校のメンバーが一人足りないようですね… 一応確認ですが、ゲーム開始時にメンバーがいないと不戦敗ということでいいですよね」

 進藤部長が有無を言わさぬように夕霧に確認を申し入れた。

 「はい、それで構いません。その前にどちらかが二勝していれば、その学校が勝ちで良いですか」

 「もちろんです。それと一度出場したメンバーは二度は出場できないという点もよいですか」

 「その点にも異論はありません」

 「ゲームの進め方について司会から説明します」

 「では、司会を勤めさせて頂きます古屋から説明させて頂きます。今回は1対1の対戦で、予選でグリッドを決めて周回数20周で決着をつけます。その他の審議事項が生じた場合は両校で審議のうえ決定します」

 司会が両校からの参加者リストを受け取り第1ゲームの参加者を呼び出す。

 「皆南高 秋月さん 技科高 倉田君 両者席に着いてください」

 夕霧と倉田の予選の結果、ポールポジションは倉田、セカンドポジションは夕霧となった。倉田は先行逃げ切りの構えで最初から飛ばしまくる。一方夕霧はコース状況を確かめるように序盤はスピードを上げず徐々にペースアップしていった。
 残り10周を切ったあたりで夕霧は倉田の真後ろに着くが追い抜きはしない。倉田はペースアップを図るが夕霧を突き放すまではいかない。夕霧はさらにペースアップして何度がタイトコーナーで倉田を追い抜く素振りを見せた。
 残り2周で夕霧は倉田の真後ろについて何度か追い抜きを試みたコーナーで同じように抜きにかかり倉田は必死にイン側をブロック。その次の瞬間、夕霧はマシンを逆側に振ってがら空きになったアウト側から見事にオーバーテイクした。そのままラスト1周を倉田との距離をさらに開いて1着でゴールした。
 夕霧が勝った時、ハヤテは立ち上がってジャンプする夕霧のところへ行きハグをした。


 司会が両校からの参加者リストを受け取り第2ゲームの参加者を呼び出す。

 「皆南高 頼光さん 技科高 森山さん 両者席に着いてください」

 ハヤテと森山の予選の結果、ポールポジションはハヤテ、セカンドポジションは森山となった。ハヤテはスタート直後、意図して森山を先に行かせた。森山の技能とライン取りの情報収集と分析のためらしい。6周目で目的を達したハヤテだったが、予想以上に森山が速く、森山に追いつくどころか少しずつ距離が開いて行く。それから8周ほどして急に雨が降ってきた。森山はすぐにピットに入りタイヤをレイン用に交換した。一方のハヤテは雨が晴れるものと予想しタイヤ交換を先延ばしして、雨天の中でもドライタイヤを使い続けた。3周しても雨は止まず、レインタイヤに交換した森山にハヤテは1周遅れにされそうな状況となったところで、焦りから痛恨のスピンアウト! 1着は森山、ハヤテはリタイヤとなってしまった。その場でうなだれるハヤテを夕霧は背中をさすりなぐさめた。

 そのころ、ハヤテのスマホに小春からチャットアプリメールが届いていたが、試合中のためハヤテはそれを読んでいなかった。
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