第13話 いざ学院へ! その6

文字数 2,005文字

『さようならー』

 今日もなんとか学校の授業を終えることが出来た。懸念材料であった板書に関してはリードが俺の分のノートを書いてくれるということになり、俺はコッソリスマホで授業を録音しつつ、先生の言葉をノートにせっせと書き写していく、というような感じでひとまずは落ち着いた。
 いずれは俺も魔族の文字を読めるようにしないと。

「健人さん。今日は、中等部の方に寄っていきませんか? 3人目の眷属を紹介しておきたくて。ちなみに、今日からリードの屋敷に引っ越してきますよ」
「おおー、いいねー! 行こう、今すぐに行こう!」
「……私は何も聞いていないのですが」

 して、若干嫌がるリードを引き連れて中等部の校舎へと向かう。
 高等部の校舎とは500メートルほど離れており、校舎の大きさも若干小さい。しかし、去年建て替えられたらしく、めちゃくちゃ綺麗だった。

「これを見たら、高等部の校舎がボロく見えるな。いや、正直言ってあの建物はボロいと思うけど」
「隣の芝生は青く見えるものです。気にしては負けですよ」

 まあ、そうなんだけど……
 校舎内ですれ違う学生などをオヤジ臭い目で見ながら歩くこと数分。フィンがある教室の目の前で足を止めた。 
 この学校、目的の場所に着くのに数分かかることがザラにあって困る。大学みたいに自転車で移動できるようにしてくれないかな……
 若干息を切らしている俺を他所にフィンが

「ミネー! 迎えに来ましたよー!」

 と手を振り、数人の友達の話ながら机に座っていた少女に声をかける。
 少女は『じゃあまたね!』と挨拶を済ました後、俺たちのところにやってきた。
 おぉー! 3人目の子もかわいいなぁー! なんというか、小動物的な感じがするし。

「はじめまして! 私はミネ・クレートフっていいます! お気軽にミネとお呼びくださいね、健人さん!」

 礼儀正しくお辞儀までしてきて……なんていい子なんだ!
 気がつけば俺はその子の頭を優しく撫でていた。ミネは目を細めるだけで抵抗はしてこない。
 あぁー、この感覚。昔飼っていた犬のことを思い出すわー。荒んでいた心に潤いが……潤いが……

「健人様。出会って早々デ◯ヘル扱いされたときもそうでしたが、今回はそれを超えるキモさです。あなたの眷属をやめます、いままでありがとうございました」
「健人さん、ミネがかわいいのは分かりますが、出会って3秒で頭を撫でるのはどうかと思います」

 2人共容赦のない事を言うもんだ。せっかく癒やされていたのになんてことをしてくれる。

「キモいとかいうな。事実陳列罪で訴えるぞ。あと、リード。あとから眷属契約し直しておけよ。今ので切れたと思うからな。ったく、2人とも嫉妬せずともあとからかわいがってーー」
『死んでください』

 2人揃って同じことを言いながら俺に肘鉄を入れてきた。
 ……仲が良くなって……なにより……です……


 しばらくして。改めて俺の方もミネに自己紹介をすることにする。

「さっきはごめん。なんというか撫でたくなって……。それはそうと、はじめまして。俺は播磨健人だ。よろしく!」

 手を差し出すと、ミネは優しく俺の手を握ってきてくれた。
 あぁー、癒やされるぅー

「これ以上同じ空間に居ると、私達まで犯罪者と見られてしまいそうです。フィン、急いで帰りましょう」
「そうですね。流石に私達まで警察に捕まったら大変なことになりますし」
「2人共、健人さんはそんな人じゃないですよ!」
「そうだそうだ! って、ちょっと待って!? 俺帰り道分かんないから! 身体強化を使って行かないで!」

 結局、リードとフィンの2人は校門前で待ってくれていたので、4人でリードの屋敷まで帰った。 徒歩で。



「疲れたー」

 夕食とお風呂を済ませた俺は現在ベッドで横になっている。
 え? 今日習ったところの復習とかしないのかって? あー、それは明日からやるから。今日は体を休めて、明日から頑張るから。よろしくっ、明日の俺!

 「しかし、俺の思い描いていた学生生活と若干違うが、これはこれで悪くない気がする。他の魔王候補生が気になるところではあるが、そんなすぐに勝負を挑んで来ないだろうし、もうちょっと落ち着いてからでも良いでしょ。というわけで、ゲームで遊ぼっと」

 フラグのようなことをいいながら俺はスマホのゲームで遊び、夜は更けていった。

 次の日。学院長室にて。

「播磨くん! 君に勝負のお誘いが来ているよ! お相手は、今回の魔王候補生の中で1番魔王に近いとされているリッキー・ジョー・ウィックス君からだ!」

 うそーん。これが言霊ってやつですか?
 早速王手をかけられてしまった。
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