第2話 出会い その1
文字数 3,791文字
「起きてください」
「起きてください、健永 様」
誰かが俺の名前を呼びながら体を揺さぶっている。
アラームが鳴った記憶がないので、まだ睡眠していていい時間だろう。というか、俺は昨日残業でヘロヘロになりながら家に帰って、睡眠という至福のひと時を今堪能しているところなんだ。邪魔などさせるか。
そんなわけで目覚めかけた頭をもう一度スリープモードにしようとした……のだが。揺さぶりがどんどん激しくなってくる。
「健永様…健永様…早く、早く起きてください」
体と頭がまるで激しい地震が起きたときのように揺れる。流石にこんな状況では俺も目が覚める。そこまで神経が図太くはないのだ。
激しい揺さぶりの中、目を開けると、メイド服を着た女性が見えた。髪は透き通るような銀色で、暗い室内でも分かるほど色が白く、身長は一般的な女性と同じくらいだろうか。ただ、出るところは出て……訂正。視界がブレいていてそう見えるだけで、実際はシャイなのか出るところが出ていなかった。
「健永様、早く起きてください」
俺が目を開けているにもかかわらず、揺さぶりはどんどん激しくなる一方だ。
「お、おい……ちょっと……」
「健永様…早く起きてください」
「いや、だから……」
「健永様……健永様……!」
「いや、だ・か・ら! もう俺、起きてるでしょ!? 俺と目がばっちり合ってるしさ!? 俺の口が開くところも見てたよな!? というか途中から新しいおもちゃでも見つけたみたいな顔しながら俺の体を揺さぶってなかった!?」
耐えきれずに早口でツッコミを入れてしまった。そんな様子を見た謎の女性は、コホンと小さく咳払いをして自分の顔と衣服を整えた。
「健永様、おはようございます」
「……いや、無理があるだろ。なにお澄まし顔してんだよ。こちとら疲れてんのに起こされてんだぞ? というかさ、俺、デ○ヘルなんて今日は頼んでないんだけど。お前、どこの誰だ? ただの侵入者なら吹っ飛ばすぞ」
俺の口の悪さを見て、目の前の女性はゴミを見るような目で俺を見てきた。おっと、そんなんじゃ俺の心は折れないぞ。
「はぁー……こんな人が私のご主人様だったとは……世も末ですね。まあいいでしょう。私は橘 リードと申します」
本物のメイドのように綺麗なお辞儀をしてきた。ふむ悪くない。これは悪くない。それに俺のことをご主人様と言ってきた。このシチュエーションも悪くない。というか、向こうの手違いでデ○ヘルが間違って来たのか? そういうことなら眠たいが遠慮しないでヤっちまおう。
「まあ、いいや。じゃあ、まずはお口でしてもらえるかな? 疲れと寝起きということでビンビンなんだわ」
彼女にシテもらうためにパジャマのズボンを脱ぎ、パンツに手をかける。 顔は正直言って俺のタイプだ。いやー、今日は運が良かったな、うん。
しかし、ウキウキ気分の俺とは正反対に、彼女は無表情だ。こんな表情で気持ちいいことをされても萎えちゃうのでパンツを脱ぐ作業を一旦中止する。
「おいおいどうした? 今から致す女の表情じゃないぞ」
「いや、こちらからしてみれば急にズボンを脱ぎ、パンツまで脱ごうとしている健永様がどうしました? という感じなのですが。というか、私はそういうことをするためにここに来たのではありませんので。いいからズボンを履いてください」
おぞましいものを見る目で俺を見てくるが、そういうわけにもいかない。それに、こういうシチュエーションも悪くない。嫌がるメイドに無理やりヤル、というのも一興だろう。
「いやいや、俺はヤルぞ! 俺はヤってやるぞ!」
ズボンを履かず、パンツを履いたままいきりたったものを彼女の前で左右に揺らす。パンツを履いていても、俺の息子は主張が激しいのだ。
「ほら、ほらほら! 俺の息子は出撃準備が完了しているぞ! いつでもイケる!」
しかし、彼女の顔色はひとつも変わらない。それどころか彼女の顔から表情が消えた。俺の息子から『緊急退避を!』という伝令が伝わってくる。腰抜けが! 俺は、一度ヤルと決めたことは最後まで貫き通す主義なんだ!
てなわけで、生物としての危険察知能力に逆らってずっと息子を左右に振り続けていると、ゆっくりと彼女が立ち上がってきた。ようやくその気になったらしい。
「お? まずはキスしながらの手○キか? まあ、注文とは違うがそれでもいいから……」
「……歯を食いしばってくださいね?」
え? なんで歯を食いしばるんだ?
彼女に質問しようとしたがそれは叶わなかった。
「この者に罰を与えよ! 《黒炎 》!」
彼女が突き出した右手から黒い炎が飛んできた。とてもじゃないが避けられる速度ではなかったので逃げることもできずにその炎を受けてしまう。しかし、俺の体には何も起こらない。
何がしたかったんだ? ていうか、なんで手から炎みたいのが出てきたんだ? 俺は見たことも聞いたこともないぞ。
いろいろなことに困惑している俺だったが、急に俺の息子から悲鳴が聞こえてきた。つまりは何故か分からないが激痛が俺の立派な主砲を襲っていた。
「痛い痛い! ちょ、これは洒落にならない痛さだって! 何がどうなってんだよ! 訳がわかんねえよ!」
あまりの痛さに、先ほどまで46cm三連装砲だった俺の主砲は、ただの機銃まで成り下がってしまった。というか、マジで痛い。金玉を打った時とは違って、神経に直に来る痛さだ。
悶え苦しんでいる俺を見て楽しんでいるのか、彼女からは楽しそうな声が聞こえる。
「男性は、やはりそこが弱点なのですね。ひとつ賢くなりました。あ、そのお礼と言うわけではありませんが、さきほどの魔術を解説しましょう」
いや、俺それどころじゃないんですけど。あそこが千切れそうなくらい痛いんですけど。
しかし、そんな俺の心の声など聞こえるはずなく、彼女は解説を始める。
「健永様は初めて見るでしょう。あれが魔術です。ただ、先ほどのは威力を控えめにしていますし、強い痛みが出るくらいでしょう」
魔術ってなんだよ!? そんなもんフィクションの中のやつじゃねえのかよ!
というか、『強い痛みが出るくらい』じゃねえよ。それが急所から発せられるんだからたまったもんじゃねえぞ!
「あ、ちなみに痛みが出る箇所は指定できます。今回は私の目の前にあったおぞましいものに痛みが出るようにしました」
笑顔で彼女は種明かしをする。いや、初めて笑顔を見たけど、こんな状況で見たくはなかった。彼女を睨み付けるが、どこ吹く風といった感じだ。ひどい。
「惨めな姿ですね。まあ、もうそろそろ痛みも引くでしょうからそんなに怒らないでください」
いや、まだ激痛が俺の股間から……って本当だ。急に痛みが引いていった。良かった……俺の息子もこの地獄から抜け出せたことを喜んでいるぞ。
しばらく後、これ以上彼女の機嫌を損ねないようにお茶を出して一服する。
あんな痛み、二度とごめんだわ。次やられたら息子と死別しかねない。というか、結局この橘とか言った女性はなんなんだ?
疑問の目を向けていると、彼女も話すべき内容があるのか話を切り出してきた。
「さて、茶番はここまでにして本題に入りましょう」
「いや、別に茶番をしていたわけではないと思うのだが」
俺は本気でヤろうとしていたのだから、それを茶番と言われるのは心外だ。まあ、ギロリと睨まれたので口には出さないが。
「私がここに来た理由の1つは、健永様が魔王候補に選ばれたことを伝えるためです」
「なんだよ、魔王候補って」
「読んで字の如く、魔王候補です」
話になんねえよ。オウム返しみたいにそんなこと言われても訳わかんねえ。
「さも当然のことのように言われてもこちとら一般人なの。物わかりが良いわけでもないし、もうちょっと説明してくれよ」
「うるさいですね……アルファ、健永様に説明していただけますか?」
そう言うと、彼女の胸元から箱が飛び出してきて、その箱が急に光ったと思ったら全裸の女の子が俺の目の前に立っていた。夢ではない、現実だ。
てか、胸元に箱を隠し持つとか……それが許されるのは巨乳だけであって、貧乳に近い普乳ごときがそんなことをしちゃいかんだろ。
「健永様、何か失礼なことを考えていませんか?」
「おやおや、君はテレパシーか何か使えるのかね?」
「……あとで覚えておいてくださいね」
小馬鹿にした口調が気に食わなかったようだ。死刑宣告を受けてしまった。
まあ、それは置いておいて。今は目の前に立っている全裸の女の子だ。見た目は中学生くらいだろうか。燃えるような赤い髪だが、彼女が先ほどの『アルファ』なのだろうか。
「お主が妾のご主人様かの? 妾はアルファである! 魔王の鍵の中で1番強いのだぞ!」
全裸で、まな板のような胸を張って目の前の少女が自己紹介をしてきた。
「起きてください、
誰かが俺の名前を呼びながら体を揺さぶっている。
アラームが鳴った記憶がないので、まだ睡眠していていい時間だろう。というか、俺は昨日残業でヘロヘロになりながら家に帰って、睡眠という至福のひと時を今堪能しているところなんだ。邪魔などさせるか。
そんなわけで目覚めかけた頭をもう一度スリープモードにしようとした……のだが。揺さぶりがどんどん激しくなってくる。
「健永様…健永様…早く、早く起きてください」
体と頭がまるで激しい地震が起きたときのように揺れる。流石にこんな状況では俺も目が覚める。そこまで神経が図太くはないのだ。
激しい揺さぶりの中、目を開けると、メイド服を着た女性が見えた。髪は透き通るような銀色で、暗い室内でも分かるほど色が白く、身長は一般的な女性と同じくらいだろうか。ただ、出るところは出て……訂正。視界がブレいていてそう見えるだけで、実際はシャイなのか出るところが出ていなかった。
「健永様、早く起きてください」
俺が目を開けているにもかかわらず、揺さぶりはどんどん激しくなる一方だ。
「お、おい……ちょっと……」
「健永様…早く起きてください」
「いや、だから……」
「健永様……健永様……!」
「いや、だ・か・ら! もう俺、起きてるでしょ!? 俺と目がばっちり合ってるしさ!? 俺の口が開くところも見てたよな!? というか途中から新しいおもちゃでも見つけたみたいな顔しながら俺の体を揺さぶってなかった!?」
耐えきれずに早口でツッコミを入れてしまった。そんな様子を見た謎の女性は、コホンと小さく咳払いをして自分の顔と衣服を整えた。
「健永様、おはようございます」
「……いや、無理があるだろ。なにお澄まし顔してんだよ。こちとら疲れてんのに起こされてんだぞ? というかさ、俺、デ○ヘルなんて今日は頼んでないんだけど。お前、どこの誰だ? ただの侵入者なら吹っ飛ばすぞ」
俺の口の悪さを見て、目の前の女性はゴミを見るような目で俺を見てきた。おっと、そんなんじゃ俺の心は折れないぞ。
「はぁー……こんな人が私のご主人様だったとは……世も末ですね。まあいいでしょう。私は
本物のメイドのように綺麗なお辞儀をしてきた。ふむ悪くない。これは悪くない。それに俺のことをご主人様と言ってきた。このシチュエーションも悪くない。というか、向こうの手違いでデ○ヘルが間違って来たのか? そういうことなら眠たいが遠慮しないでヤっちまおう。
「まあ、いいや。じゃあ、まずはお口でしてもらえるかな? 疲れと寝起きということでビンビンなんだわ」
彼女にシテもらうためにパジャマのズボンを脱ぎ、パンツに手をかける。 顔は正直言って俺のタイプだ。いやー、今日は運が良かったな、うん。
しかし、ウキウキ気分の俺とは正反対に、彼女は無表情だ。こんな表情で気持ちいいことをされても萎えちゃうのでパンツを脱ぐ作業を一旦中止する。
「おいおいどうした? 今から致す女の表情じゃないぞ」
「いや、こちらからしてみれば急にズボンを脱ぎ、パンツまで脱ごうとしている健永様がどうしました? という感じなのですが。というか、私はそういうことをするためにここに来たのではありませんので。いいからズボンを履いてください」
おぞましいものを見る目で俺を見てくるが、そういうわけにもいかない。それに、こういうシチュエーションも悪くない。嫌がるメイドに無理やりヤル、というのも一興だろう。
「いやいや、俺はヤルぞ! 俺はヤってやるぞ!」
ズボンを履かず、パンツを履いたままいきりたったものを彼女の前で左右に揺らす。パンツを履いていても、俺の息子は主張が激しいのだ。
「ほら、ほらほら! 俺の息子は出撃準備が完了しているぞ! いつでもイケる!」
しかし、彼女の顔色はひとつも変わらない。それどころか彼女の顔から表情が消えた。俺の息子から『緊急退避を!』という伝令が伝わってくる。腰抜けが! 俺は、一度ヤルと決めたことは最後まで貫き通す主義なんだ!
てなわけで、生物としての危険察知能力に逆らってずっと息子を左右に振り続けていると、ゆっくりと彼女が立ち上がってきた。ようやくその気になったらしい。
「お? まずはキスしながらの手○キか? まあ、注文とは違うがそれでもいいから……」
「……歯を食いしばってくださいね?」
え? なんで歯を食いしばるんだ?
彼女に質問しようとしたがそれは叶わなかった。
「この者に罰を与えよ! 《
彼女が突き出した右手から黒い炎が飛んできた。とてもじゃないが避けられる速度ではなかったので逃げることもできずにその炎を受けてしまう。しかし、俺の体には何も起こらない。
何がしたかったんだ? ていうか、なんで手から炎みたいのが出てきたんだ? 俺は見たことも聞いたこともないぞ。
いろいろなことに困惑している俺だったが、急に俺の息子から悲鳴が聞こえてきた。つまりは何故か分からないが激痛が俺の立派な主砲を襲っていた。
「痛い痛い! ちょ、これは洒落にならない痛さだって! 何がどうなってんだよ! 訳がわかんねえよ!」
あまりの痛さに、先ほどまで46cm三連装砲だった俺の主砲は、ただの機銃まで成り下がってしまった。というか、マジで痛い。金玉を打った時とは違って、神経に直に来る痛さだ。
悶え苦しんでいる俺を見て楽しんでいるのか、彼女からは楽しそうな声が聞こえる。
「男性は、やはりそこが弱点なのですね。ひとつ賢くなりました。あ、そのお礼と言うわけではありませんが、さきほどの魔術を解説しましょう」
いや、俺それどころじゃないんですけど。あそこが千切れそうなくらい痛いんですけど。
しかし、そんな俺の心の声など聞こえるはずなく、彼女は解説を始める。
「健永様は初めて見るでしょう。あれが魔術です。ただ、先ほどのは威力を控えめにしていますし、強い痛みが出るくらいでしょう」
魔術ってなんだよ!? そんなもんフィクションの中のやつじゃねえのかよ!
というか、『強い痛みが出るくらい』じゃねえよ。それが急所から発せられるんだからたまったもんじゃねえぞ!
「あ、ちなみに痛みが出る箇所は指定できます。今回は私の目の前にあったおぞましいものに痛みが出るようにしました」
笑顔で彼女は種明かしをする。いや、初めて笑顔を見たけど、こんな状況で見たくはなかった。彼女を睨み付けるが、どこ吹く風といった感じだ。ひどい。
「惨めな姿ですね。まあ、もうそろそろ痛みも引くでしょうからそんなに怒らないでください」
いや、まだ激痛が俺の股間から……って本当だ。急に痛みが引いていった。良かった……俺の息子もこの地獄から抜け出せたことを喜んでいるぞ。
しばらく後、これ以上彼女の機嫌を損ねないようにお茶を出して一服する。
あんな痛み、二度とごめんだわ。次やられたら息子と死別しかねない。というか、結局この橘とか言った女性はなんなんだ?
疑問の目を向けていると、彼女も話すべき内容があるのか話を切り出してきた。
「さて、茶番はここまでにして本題に入りましょう」
「いや、別に茶番をしていたわけではないと思うのだが」
俺は本気でヤろうとしていたのだから、それを茶番と言われるのは心外だ。まあ、ギロリと睨まれたので口には出さないが。
「私がここに来た理由の1つは、健永様が魔王候補に選ばれたことを伝えるためです」
「なんだよ、魔王候補って」
「読んで字の如く、魔王候補です」
話になんねえよ。オウム返しみたいにそんなこと言われても訳わかんねえ。
「さも当然のことのように言われてもこちとら一般人なの。物わかりが良いわけでもないし、もうちょっと説明してくれよ」
「うるさいですね……アルファ、健永様に説明していただけますか?」
そう言うと、彼女の胸元から箱が飛び出してきて、その箱が急に光ったと思ったら全裸の女の子が俺の目の前に立っていた。夢ではない、現実だ。
てか、胸元に箱を隠し持つとか……それが許されるのは巨乳だけであって、貧乳に近い普乳ごときがそんなことをしちゃいかんだろ。
「健永様、何か失礼なことを考えていませんか?」
「おやおや、君はテレパシーか何か使えるのかね?」
「……あとで覚えておいてくださいね」
小馬鹿にした口調が気に食わなかったようだ。死刑宣告を受けてしまった。
まあ、それは置いておいて。今は目の前に立っている全裸の女の子だ。見た目は中学生くらいだろうか。燃えるような赤い髪だが、彼女が先ほどの『アルファ』なのだろうか。
「お主が妾のご主人様かの? 妾はアルファである! 魔王の鍵の中で1番強いのだぞ!」
全裸で、まな板のような胸を張って目の前の少女が自己紹介をしてきた。