第15話 魔王戦 準備編 その2
文字数 2,760文字
「え!? 拳銃を手に入れられない!?」
朝、学校に行った足で1人で職員室に向かい、先生に拳銃が欲しいと言ったところ、『それは無理だ』という返答を貰ったのだ。
「播磨君、ここは魔界だぞ? ここでは拳銃とかいう人間の武器を使っている人なんていやしない。だから誰も売りたがらない。私達にとってはおもちゃみたいなものなんだからな」
「おもちゃなのであれば、おもちゃ売り場とかに売っていないんですか?」
「……言葉の綾(あや)だ」
ボケたつもりだったのだが、先生には通じなかったらしい。
しかし、困った。てっきり魔術学院に売っているものかと思っていたが、そもそも魔界に売っていないとは……
しかし、と先生はあることを教えてくれる。
「私ではどうしようもないが、『ラジア』の子たちならなんとかしてくれるかもしれない。こういうときのための彼女たちなのだから、朝のホームルームの時に試しに言ってみるのもいいかもしれないぞ?」
なるほど。確かに後方支援部隊としての役目を担っている彼女たちであれば、拳銃を調達できるかも知れない。先生に相談して正解だったな。
「ありがとうございます。では、朝の朝礼でお願いしてみます」
朝のホームルームにて。
「というわけで、みなさんも昨日の一斉メールでご承知の通り魔王戦を執り行うことになりました。ついては、戦力強化のために『拳銃』という武器が欲しいのですが、この中で誰か調達できそうな人はいますか?」
まあ、この中には俺が欲しい武器の名前を初めて聞いてという人もいるだろうし……ダメ元で聞いてみたのだが……
「私なら調達できるわ」
1人、手を上げてくれた人がいた。
おおー! まじか! 幸先がいいな!
「えーっと、じゃあ昼休みに話を伺いたいので、あなたの席まで行きますね」
というわけで、一歩前進!
昼休み。リードたちには後から話をするから、と言って約束通り1人で彼女の席まで行く。大人数で行っても意味がないし、同じクラスとは言えほぼ初対面に近いのだから一対一がいいだろうと思ったのだ。
「……それであなたはどの銃が欲しいの?」
彼女の元へ行くなりいきなり質問をされる。
おっと、まずは自己紹介からと思っていたのだが……まあいっか。
彼女の名前は、白雪(しらゆき)まとい。この魔界では珍しく、日本人の名前だ。というか、ここって魔界だよな? リードもそうだが、日本人の名前が交じっているのには理由があるのだろうか?
まあ、今はその事は重要ではないな。話を戻そう。彼女は魔界で有名な大手流通系企業の社長令嬢らしい。リードからその話を聞いたのだが、彼女だったら拳銃も手に入れてくれるかも知れない。
「うーん、色々調べたんだけど、いまいちぱっとしなかったんだよね。そもそも銃に関して詳しくないし……」
すると、白雪さんが銃のカタログと思われるものを出してくる。
え? なんでそんなものが?
「銃を持ったことがないのであれば……ベレッタ92FS、コルトM1911ガバメント、H&K VP9とかこのあたりかしら。威力重視で行くならデザートイーグル.50AE、プファイファー・ツェリスカとかかしらね」
彼女がカタログで該当する箇所を指で指しながら名前を挙げてくれた。
ベレッタ92FSやH&K VP9は、いずれも9mmパラベラム弾を使用しており、自動拳銃の中でも日本人が使いやすいと言われているものらしい。
コルトM1911ガバメントに関しては、前述した銃よりは使いづらいらしいのだが、一世紀以上使われ続けている傑作銃器だと書かれている。
それで、威力重視と言われていた銃だが、デザートイーグルに関しては銃に疎い俺でも知っていた。50口径マグナム弾を使用し、『一発でノックアウト能力の高い火器』というコンセプトをもっていたこともあるあらしい。
プファイファー・ツェリスカは……これは候補から除外だ。載っていた写真を見たが、論外なレベルで大きい。あんなもの戦闘中に持ち運んでたら一瞬で体力が無くなってしまう。
うーん、ここは扱いやすく、比較的新しい H&K VP9か……? いや、しかし魔族相手なら多少無理してもデザートイーグルを選ぶべきなのか……? 分からん! 分からんぞ!
「ちなみにだけど、メインとサブの二丁持ちをオススメするわ。大した重りにもならないし、扱いやすいものと威力重視のものを持っていた場合、状況によって使い分けられるし」
……その考え方もありか。となると、デザートイーグルは決定だとして……もう片方は H&K VP9にするか。自衛隊も導入予定らしいし、装弾数もベレッタよりも多い。よし、そうしよう!
「じゃあ、 H&K VP9とデザートイーグル.50AEの二丁をお願いするよ」
「分かったわ」
……え? お会計は?
白雪さんは、もう用事は済んだかのようにスマホを取り出し、何やらメールで連絡を取り始めた。たぶん、発注をしてくれているんだろうけど……
「料金の支払いは現金の方がいい?」
何も行ってこないので、俺が話を切り出すしか無い。まあ、彼女も遠慮して何も言ってこなかったのかも知れないし。
「いえ、これはあなたが勝つための必要経費だからお金はいらないわ」
「いや、でも結構高いだろうし1銭も払わないのは……」
「じゃあ、この魔王戦に勝って頂戴。お金よりそっちのほうが嬉しいわ。『ラジア』は……私達はこれ以上負けることは許されないのだし……」
白雪さんはなにか思いつめたような顔をする。
たしかに、敗北続きの『ラジア』。課せられた敗者としてのペナルティはかなり重いものだっただろう。彼女やクラスメイト達も何かしら抱えているものがあるのかも知れない。
となると、俺がすることはやはりひとつ。
まずは目前の魔王戦に勝つことだ! まあ、現段階では勝ち目は無いが……それでも自動拳銃を手に入れることで何かが変わるはず!
「おう! 俺に任せておけ!」
出来る限りの笑顔で、彼女の言葉に答える。
その後。白雪さんが、『明日の朝に拳銃と弾薬があなたが住んでいることろに届くと思うわ』とメールで連絡をよこしてくれた。
はやっ! 早くても明後日とか、最悪魔王戦当日も覚悟していたのに。というか、なんで俺のメルアド知っているんだ? 彼女に教えてはいないはずなんだが……
ま、いっか。考えると怖いし。知らぬが仏ってやつですよ。
朝、学校に行った足で1人で職員室に向かい、先生に拳銃が欲しいと言ったところ、『それは無理だ』という返答を貰ったのだ。
「播磨君、ここは魔界だぞ? ここでは拳銃とかいう人間の武器を使っている人なんていやしない。だから誰も売りたがらない。私達にとってはおもちゃみたいなものなんだからな」
「おもちゃなのであれば、おもちゃ売り場とかに売っていないんですか?」
「……言葉の綾(あや)だ」
ボケたつもりだったのだが、先生には通じなかったらしい。
しかし、困った。てっきり魔術学院に売っているものかと思っていたが、そもそも魔界に売っていないとは……
しかし、と先生はあることを教えてくれる。
「私ではどうしようもないが、『ラジア』の子たちならなんとかしてくれるかもしれない。こういうときのための彼女たちなのだから、朝のホームルームの時に試しに言ってみるのもいいかもしれないぞ?」
なるほど。確かに後方支援部隊としての役目を担っている彼女たちであれば、拳銃を調達できるかも知れない。先生に相談して正解だったな。
「ありがとうございます。では、朝の朝礼でお願いしてみます」
朝のホームルームにて。
「というわけで、みなさんも昨日の一斉メールでご承知の通り魔王戦を執り行うことになりました。ついては、戦力強化のために『拳銃』という武器が欲しいのですが、この中で誰か調達できそうな人はいますか?」
まあ、この中には俺が欲しい武器の名前を初めて聞いてという人もいるだろうし……ダメ元で聞いてみたのだが……
「私なら調達できるわ」
1人、手を上げてくれた人がいた。
おおー! まじか! 幸先がいいな!
「えーっと、じゃあ昼休みに話を伺いたいので、あなたの席まで行きますね」
というわけで、一歩前進!
昼休み。リードたちには後から話をするから、と言って約束通り1人で彼女の席まで行く。大人数で行っても意味がないし、同じクラスとは言えほぼ初対面に近いのだから一対一がいいだろうと思ったのだ。
「……それであなたはどの銃が欲しいの?」
彼女の元へ行くなりいきなり質問をされる。
おっと、まずは自己紹介からと思っていたのだが……まあいっか。
彼女の名前は、白雪(しらゆき)まとい。この魔界では珍しく、日本人の名前だ。というか、ここって魔界だよな? リードもそうだが、日本人の名前が交じっているのには理由があるのだろうか?
まあ、今はその事は重要ではないな。話を戻そう。彼女は魔界で有名な大手流通系企業の社長令嬢らしい。リードからその話を聞いたのだが、彼女だったら拳銃も手に入れてくれるかも知れない。
「うーん、色々調べたんだけど、いまいちぱっとしなかったんだよね。そもそも銃に関して詳しくないし……」
すると、白雪さんが銃のカタログと思われるものを出してくる。
え? なんでそんなものが?
「銃を持ったことがないのであれば……ベレッタ92FS、コルトM1911ガバメント、H&K VP9とかこのあたりかしら。威力重視で行くならデザートイーグル.50AE、プファイファー・ツェリスカとかかしらね」
彼女がカタログで該当する箇所を指で指しながら名前を挙げてくれた。
ベレッタ92FSやH&K VP9は、いずれも9mmパラベラム弾を使用しており、自動拳銃の中でも日本人が使いやすいと言われているものらしい。
コルトM1911ガバメントに関しては、前述した銃よりは使いづらいらしいのだが、一世紀以上使われ続けている傑作銃器だと書かれている。
それで、威力重視と言われていた銃だが、デザートイーグルに関しては銃に疎い俺でも知っていた。50口径マグナム弾を使用し、『一発でノックアウト能力の高い火器』というコンセプトをもっていたこともあるあらしい。
プファイファー・ツェリスカは……これは候補から除外だ。載っていた写真を見たが、論外なレベルで大きい。あんなもの戦闘中に持ち運んでたら一瞬で体力が無くなってしまう。
うーん、ここは扱いやすく、比較的新しい H&K VP9か……? いや、しかし魔族相手なら多少無理してもデザートイーグルを選ぶべきなのか……? 分からん! 分からんぞ!
「ちなみにだけど、メインとサブの二丁持ちをオススメするわ。大した重りにもならないし、扱いやすいものと威力重視のものを持っていた場合、状況によって使い分けられるし」
……その考え方もありか。となると、デザートイーグルは決定だとして……もう片方は H&K VP9にするか。自衛隊も導入予定らしいし、装弾数もベレッタよりも多い。よし、そうしよう!
「じゃあ、 H&K VP9とデザートイーグル.50AEの二丁をお願いするよ」
「分かったわ」
……え? お会計は?
白雪さんは、もう用事は済んだかのようにスマホを取り出し、何やらメールで連絡を取り始めた。たぶん、発注をしてくれているんだろうけど……
「料金の支払いは現金の方がいい?」
何も行ってこないので、俺が話を切り出すしか無い。まあ、彼女も遠慮して何も言ってこなかったのかも知れないし。
「いえ、これはあなたが勝つための必要経費だからお金はいらないわ」
「いや、でも結構高いだろうし1銭も払わないのは……」
「じゃあ、この魔王戦に勝って頂戴。お金よりそっちのほうが嬉しいわ。『ラジア』は……私達はこれ以上負けることは許されないのだし……」
白雪さんはなにか思いつめたような顔をする。
たしかに、敗北続きの『ラジア』。課せられた敗者としてのペナルティはかなり重いものだっただろう。彼女やクラスメイト達も何かしら抱えているものがあるのかも知れない。
となると、俺がすることはやはりひとつ。
まずは目前の魔王戦に勝つことだ! まあ、現段階では勝ち目は無いが……それでも自動拳銃を手に入れることで何かが変わるはず!
「おう! 俺に任せておけ!」
出来る限りの笑顔で、彼女の言葉に答える。
その後。白雪さんが、『明日の朝に拳銃と弾薬があなたが住んでいることろに届くと思うわ』とメールで連絡をよこしてくれた。
はやっ! 早くても明後日とか、最悪魔王戦当日も覚悟していたのに。というか、なんで俺のメルアド知っているんだ? 彼女に教えてはいないはずなんだが……
ま、いっか。考えると怖いし。知らぬが仏ってやつですよ。